日本ハム株式会社

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Episode Story 想いを持ち続け、考え続けたからできた新しい主力商品。

Episode Story 想いを持ち続け、考え続けたからできた新しい主力商品。

ニッポンハムグループの中にあって、鍋料理や焼き肉用の食肉製品およびバーべキューソースなどのタレ・調味料の製造・販売を行っている日本ピュアフード。青森プラントでは、揚げる前のトンカツやポーション(トンカツの中身や焼き肉用の肉など定量スライスされた肉のこと)を製造し、コンビニエンスストアや、外食チェーン店に提供している。
日本ピュアフードでは、毎年「新商品開発プロジェクト」を実施している。文字通り、新しい商品の開発を行うものだが、若手・中堅メンバーにマーケティングを学ばせる教育的目的も大きい。コンビニエンスストアや外食向け商品を開発している井川は、2014年、このプロジェクトに参加することになった。

尊敬する先輩が他部署へ異動したばかり。

プロジェクトメンバーに任命されたとき、私は、入社以来ずっと一緒だった先輩が他のプラントへ異動したばかりという状況でした。この先輩には鍛えられました。商品開発としてはもちろん、「社会人たるものは」みたいなことや、仕事に対する姿勢なども教わりました。職人気質で「背中を見て覚えろ」という人でしたが、熱意をもって接してもらったので、「この人についていきたい」と慕っていました。そんな矢先の異動です。やっていけるのかすごく不安でしたね。いきなり実務をメインで担当することになり、開発メンバー2名を引っ張っていく立場にもなりましたからプロジェクトに任命されても、喜びだけではありませんでした。「自分一人でうまくやれるだろうか」という気持ちが強かったです。
でも、プロジェクトの最初のミーティングで集まったメンバーを見て、「気合い入れなきゃ」と思い直しました。各部署から一人ずつ、私のような商品開発担当だけでなく、営業担当もいれば、年次が上の人もいます。みんな自分の部署を代表してきていて、やる気は十分。そんな姿を見て、青森プラントが優秀というところを見てもらいたい気持ちになりました。異動した先輩にも「他のプラント・工場には負けるな」と教わってきましたので、そのマインドを私は踏襲していたんです。

新商品としてミルフィーユカツが浮上。

プロジェクトは、マーケティングを学ぶことから始まりました。会社の強みや弱みを分析するなど初めてのことばかり。すごく面白かったですね。工場内にいると、どうしても作り手目線での発想になりがちです。マーケティングを学んだことで、お客様のニーズに応えるという観点から今まで学んだ知識を棚卸しすることができました。新商品の具体的なイメージも沸くようになりましたね。
何度か話し合う中で、ミルフィーユカツの開発が検討されるようになりました。衣付け商品(カツ)はピュアフードにとって、また青森プラントにとっても主力商品のひとつです。そして、この年の新商品プロジェクトのテーマが「付加価値の追求」でした。この二つのキーワードやマーケティングの結果などの分析から「ミルフィーユカツ」の開発に着手することになりました。

「先輩ができなかった」を成し遂げるチャンスだ。

個人的にも、ミルフィーユカツには強い想いがありました。異動した先輩が3回ぐらい開発にチャレンジしたのですが、メインの商品には育たなかった。自分もそのあとチャレンジしたのですが上手くいきません。そのため、いつかミルフィーユカツを主力商品に、という想いをずっと持っていたんです。
ミルフィーユカツ開発が議題に上がったときは、全員を巻き込んでチャレンジできるチャンスと思いました。先輩ができなかった事を成し遂げられるかもしれません。だから、自分でコンセプトを立案し、一生懸命プロジェクトメンバーにプレゼンテーションしました。
開発が決まったときは、すごくうれしかったですね。ただ、同時に「これから大変だ」とも思いました。製法も具体的に思い浮かんでいなかったし、ずっと失敗していたので不安もありました。

目標は専門店。ヒントは身近なところに。

いよいよ開発スタートです。
まずは目標を明確にしました。従来の業務用商品ではなく、専門店のクオリティを目指す。そう、高い目標です。肉は数十の層になっていながら、ふっくら柔らかい。スライスの厚みにもこだわる。私たちが以前開発したものとは、明らかにものが違います。当時の製法、製造設備では無理だと直感しました。コストをかけて製造量も抑えればできたでしょうが、それでは無意味。目標は、あくまで「当社の主力商品」ですから、継続してある程度の量を製造できなければなりません。
最大の問題は製法です。肉を重ねるのは、時間もかかるし、ずれる心配もある。きちんと重ねようとすれば、人もコストもかかります。
製法のアイデアは突然生まれました。具体的な内容は言えませんが、プライベートのふとした瞬間に閃いたのです。まさに電流が走ったよう。でも、先輩に言われていたんです。「商品を突き詰めて考えたかったから、仕事以外でも頭の片隅に商品を置いておけ。ずっとそうしていると、何かの拍子にアイデアが閃く」と。その教えを守っていたから、生まれたんだと思います。

サンプルを揚げ続けた3週間。

早速サンプルをつくったら、すごく上手くいきました。プロジェクトの営業メンバーにも大好評です。ニッポンハムグループの展示会の、ピュアフード業務商品ブースにも並べてもらったのですが、反響は大きかった。お客様から依頼が入り続け、おかげで3週間ずっとミルフィーユカツを揚げ続けることになりました。営業もどんどん受注を取ってきます。
「やった」と思う半面、大変なことになったと思いました。サンプルとして一つや二つならつくれるのですが、製造ラインで量産することは難しい。ベテランの製造課長に相談した時に、課長には量産体制のイメージがあるみたいでしたが、教えてくれないんです。私も、聞いたら自分のためにならないからと、現場に行って自分で考えました。
あれこれ考え、自分なりの考えを課長にぶつけてみましたが「違う」。何度も試行錯誤して、これだと思って言いに行っても「違う」。そういうやり取りが何回続いたでしょうか。やっと課長が考えを教えてくれました。でも、私は「?」です。すごく原始的な方法だったので、そんなことで出来るのかなって思いました。

青森プラントが「チーム」になった。

そのころ、青森プラント全体でもプロジェクトを推進していて、プロジェクトリーダーでもある製造課長が議題の一つにミルフィーユカツを挙げてくれました。 課長が考えた製法を、全員で実現していくための取り組みが始まりました。現場のメンバーはもちろん、管理事務のメンバーもアイデアを出していきました。「この人たち、すごいな」と思いましたね。製造を知らない管理事務のメンバーも、製造を知らないがゆえのシンプルなアイデアを出す。それが現場の気付きとなり、さらにそれをブラッシュアップ。青森プラントが一つのチームとなることで、製法はどんどん改善されていきました。
機械を入れ替えたり、ラインを長くして人を増やしたりと、1、2カ月間は検討したでしょうか。次第に製造量を増やすことが出来る様になり、やっと「当社の主力商品」と自信をもって言えるようになりました。
一番うれしかったのは、目標としていた得意先からも依頼が入ったときです。「オレ、やるな」と思いましたね。このジャンルに関しては、異動した先輩を越えたと思いました。先輩にも言ったんです。「先輩ができなかったこと、オレ、やりましたよ」って。「うるさい」って言われましたけどね。

アタマにもハートにも持ち続けることが大事。

生産数量確保や利益など、数字面でもいろいろな成果を挙げました。そういう事ももちろんうれしかったけれど、青森プラントが一つのチームになって成功させたこと自体が、何よりうれしかったですね。
個人的には、いろいろな気付きが得られました。やりたいことは、アタマの片隅にもハートにもずっと持ち続けることが大事、だからこそ、達成したときの充実度も大きいということ。これは、異動した先輩に教えてもらったことです。
また、自分がやりたいことは、やっていける環境を自分から引き寄せるべきで、引き寄せたら全力で取り組むことが大事だということ。あるいは、一人ではアイデアも限界があり、みんなを巻き込むことが大事ということ。これは、新商品開発プロジェクトの、そして、製造課長や製造プロジェクトのメンバーから学んだことです。――もしかしたら、私にこのことを気付かせたくて、課長は現場のプロジェクトの議題にしてくれたのかもしれません。
ミルフィーユカツでは異動した先輩を越えたって思ったけれど、まだまだかないません。製造課長もスゴイなって思います。二人のことはすごく尊敬しています。何より、二人とも熱い。二人に限らず、ニッポンハムグループには熱い先輩が多いですね。ぶつかれば、みんなきちんと受け止めてくれます。

今の目標は「次の主力商品をつくる」。

今回のプロジェクトで、ミルフィーユカツをうちの柱に育てることができました。でも、もう1年たっています。次なる主力商品を考え、育てていくのが今の課題。自分でつくった壁は高いですが、商品開発は現状に満足していたらダメです。
将来の目標は、もっとこの会社を有名にすること。当社の商品を使うとお客様の最終製品がおいしくなる、よりエンドユーザーにサプライズを提供できる、付加価値が上がる――そう思われるように、これからも食べて美味しく、食べて楽しく、そして強い商品をつくっていきたいですね。

日本ピュアフード株式会社
生産本部 青森プラント 開発課 主任
2010年入社

井川 悟史※仮名 ※取材当時