豚の処理・加工工程は除骨の際、誤って刃が体を向いて起きる事故を防ぐ防具です」と教えてくれた。 除骨が終わった肉は脂の厚みなどを整える整形の工程へと進むが、2つの工程の間には、ブロック肉から表皮を取り除くスキンナーが設置されている。従来の工程では枝肉の時点で皮を取り除いておくのに対して、新工場では除骨後のタイミングで皮をむくことで空気に触れる時間が短縮され、衛生管理がより一層徹底できるのだ。 コンベア上で人の手で整形された肉は、ルーム内の最終工程となるラッピングへ進む。肉がアクリルボックスに送り込まれるとロボローダーがラップで包み、一瞬で次の工程である包装室へ送り出されていった。 ここまでの工程で、人間の技と高機能ロボットが協働して高品質の豚肉を供給する仕組みを確かめることができた。「私たちは 心をこめて 磨きます」という日本フードパッカーのスローガンを実地で感じ取れる。 ここで、工場長が改めて上級マイスター資格の詳細を説明してくれた。まず、上級マイスターの受験には一定の経験年数や工場長の推薦といった要件が設けられている。試験内容は筆記、実技、役員面接の3つで、実技では主要部位すべての除骨から整形までを1人でこなし、品質と歩方が違う。他のスタッフの動きを見比べてみると、松野はより少ない手数で素早く仕上げ、取り除いた骨に残った肉が少ない。つまり歩留まりがよく、肉へのダメージも少ない。「的確なポイントにナイフを入れることで、最小限の力で骨を取り除くことができます」(松野)。スタッフたちを見ていると、作業エプロンの下に金属片をつなぎ合わせた鎖かたびらのようなものが時折のぞく。「あれ留まりの値もクリアしなければならない。この難関に挑み、2025年1月に認定された上級マイスターはわずか4名。このうち道南工場の資格保有者が、堀と松野の2名だ。 上級マイスター試験の実技ではカット技術の全てを評価するため、肩とウデ、バラとロース、モモの3部位を扱う(カット室の大分割装置がカットした、脱骨前の状態)。枝肉には左右があるから部位は計6つ。合わせて豚一頭分の肉を時間にして40分以内、歩留まり率75・3%以内に仕上げなくてはならない。2人の技術力の一端を知るために、認定までの経験を振り返ってもらおう。 「得意な部位は肩の脱骨です」(堀)という彼が上級実技試験を受けたのは昨年11月。「数をこなすのが上達への近道」と言い、考えながら手を動かし続けてきた努力家だ。そこで身につけた感覚は、「鋭利なナイフを使いながらも、切るというより膜を剥がすという感覚。骨と筋肉の構造の理解を深めるほど、力に頼らず歩留まりの良いカッティングができる」(堀)。資格のために特別な準備はしなかったが、「技術は先達が受け継いできた技に自分の経験を重ね 除骨の工程では、松野がナイフで肋骨を取り除く。その合間にも、若いスタッフの隣に立って手元を見せながらアドバイスする姿が頼もしい。コンベアの両側に並んだ作業者たちの作業は、一定のリズムを保っているようでいて、よく見ると大小サイズが異なるブロックごとに刃の入れスピードは鮮度のために、手技は品質のために積み重ねた経験が裏付けるそれぞれの目と技術力❺枝肉を左右3等分する機械、大分割装置。 ❻道南工場のみに設置されているモモ用徐骨ロボット、ハムダス。大分割装置とハムダスは道南工場のみの設備。 ❼ウデ用徐骨ロボット、ワンダスミニ。 ❽自動袋詰め機械のロボローダー。❶豚肉のカット室。室内は常に清潔に保たれている。❷❸カット室へ入る前の徹底された最新の衛生管理設備。専用の家畜運搬車でダイレクト輸送と畜・解体生体検査枝肉・内臓検査枝肉計量格付け冷 却三分割除 骨整 形梱包・計量包 装異物検査器によるチェック冷 却出 荷❶❷❸❺❼❻❽17は除骨の際、誤って刃が体を向いて起きる事故を防ぐ防具です」と教えてくれた。 除骨が終わった肉は脂の厚みなどを整える整形の工程へと進むが、2つの工程の間には、ブロック肉から表皮を取り除くスキンナーが設置されている。従来の工程では枝肉の時点で皮を取り除いておくのに対して、新工場では除骨後のタイミングで皮をむくことで空気に触れる時間が短縮され、衛生管理がより一層徹底できるのだ。 コンベア上で人の手で整形された肉は、ルーム内の最終工程となるラッピングへ進む。肉がアクリルボックスに送り込まれるとロボローダーがラップで包み、一瞬で次の工程である包装室へ送り出されていった。 ここまでの工程で、人間の技と高機能ロボットが協働して高品質の豚肉を供給する仕組みを確かめることができた。「私たちは 心をこめて 磨きます」という日本フードパッカーのスローガンを実地で感じ取れる。 ここで、工場長が改めて上級マイスター資格の詳細を説明してくれた。まず、上級マイスターの受験には一定の経験年数や工場長の推薦といった要件が設けられている。試験内容は筆記、実技、役員面接の3つで、実技では主要部位すべての除骨から整形までを1人でこなし、品質と歩方が違う。他のスタッフの動きを見比べてみると、松野はより少ない手数で素早く仕上げ、取り除いた骨に残った肉が少ない。つまり歩留まりがよく、肉へのダメージも少ない。「的確なポイントにナイフを入れることで、最小限の力で骨を取り除くことができます」(松野)。スタッフたちを見ていると、作業エプロンの下に金属片をつなぎ合わせた鎖かたびらのようなものが時折のぞく。「あれ留まりの値もクリアしなければならない。この難関に挑み、2025年1月に認定された上級マイスターはわずか4名。このうち道南工場の資格保有者が、堀と松野の2名だ。 上級マイスター試験の実技ではカット技術の全てを評価するため、肩とウデ、バラとロース、モモの3部位を扱う(カット室の大分割装置がカットした、脱骨前の状態)。枝肉には左右があるから部位は計6つ。合わせて豚一頭分の肉を時間にして40分以内、歩留まり率75・3%以内に仕上げなくてはならない。2人の技術力の一端を知るために、認定までの経験を振り返ってもらおう。 「得意な部位は肩の脱骨です」(堀)という彼が上級実技試験を受けたのは昨年11月。「数をこなすのが上達への近道」と言い、考えながら手を動かし続けてきた努力家だ。そこで身につけた感覚は、「鋭利なナイフを使いながらも、切るというより膜を剥がすという感覚。骨と筋肉の構造の理解を深めるほど、力に頼らず歩留まりの良いカッティングができる」(堀)。資格のために特別な準備はしなかったが、「技術は先達が受け継いできた技に自分の経験を重ね 除骨の工程では、松野がナイフで肋骨を取り除く。その合間にも、若いスタッフの隣に立って手元を見せながらアドバイスする姿が頼もしい。コンベアの両側に並んだ作業者たちの作業は、一定のリズムを保っているようでいて、よく見ると大小サイズが異なるブロックごとに刃の入れスピードは鮮度のために、手技は品質のために積み重ねた経験が裏付けるそれぞれの目と技術力❺枝肉を左右3等分する機械、大分割装置。 ❻道南工場のみに設置されているモモ用徐骨ロボット、ハムダス。大分割装置とハムダスは道南工場のみの設備。 ❼ウデ用徐骨ロボット、ワンダスミニ。 ❽自動袋詰め機械のロボローダー。❶豚肉のカット室。室内は常に清潔に保たれている。❷❸カット室へ入る前の徹底された最新の衛生管理設備。❻❽
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