ROTARY 2021年夏号
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4〝インスタ映え〞が生んだ新感覚の色彩 目が覚めるようなブルー、ピンク、はたまた黒、紫、赤…。かつては食べ物にすすんで使うことのなかった色合いの料理やスイーツを目にすることが多くなった。これらは〝インスタ映え〞が合言葉の現代において、人の目を引く格好の手法ともいえる。 ところで、目隠しをして食べ物を当てるクイズ番組を見たことはないだろうか。普段なら誰しも間違えることのない食べ物の味を、視覚が遮断されると急に混乱し、判断できなくなる様子に驚かされる。多少の演出はあるかもしれないが、これは味覚のメカニズム上、当然のことなのだ。 人間は食べ物の味を「舌」だけで判断せず、味覚に加え、視覚、嗅覚で得た情報が脳に伝わり、総合的に味を判断することがわかっている。視覚において色彩は非常に大きな情報となる。人間の脳は「いちご=赤」、「レモン=黄」といったように、食べ物と色を結びつけてインプットしている。これを「味覚色」とい心ときめく料理の色彩【特集】自然の素材を料理に取り入れ、四季の移ろいを器や盛りつけで表現する和食は「目で味わう」とよく言われる。しかしながら、目を楽しませてくれるのは、なにも和食だけに限らない。私たちの目が引きつけられ、これはおいしそうだと期待や好奇心が高まるのなら、たとえそれがSNS映えを狙った新しい色彩感覚によるものだとしても、目で楽しんだ、味わったと言えるだろう。そんな風に、今の私たちを魅了する料理の色彩について目を向けてみた。食卓でお重のふたを開けると、色別に盛り込まれたフレッシュ野菜が現れる(写真・右)。ゲストの目の前で混ぜ合わせてサーブ(写真・下)、ドレッシングをまとって混ざり合った野菜が美しく、ちょっとしたサプライズを演出できる。取材・文/こいずみ きなこ

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