ROTARY 2021年夏号
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7たマッシュポテトも、白いおかずとして重宝する。花が咲く時期には、菜花の黄色、パクチーやニラの白い花をポイントとしてあしらうと、一気に明るさ、かわいらしさが演出できる。お弁当の醍醐味は色合い、味わい、満足感〝chioben〞の豊かな色彩の中で代名詞ともいえる存在が「紫ボール」だ。マッシュした紫芋に生クリームなどを混ぜ、小さなボール状に丸めたもので、シックさと華やかさを感じさせるアクセントとなる。「ミニトマトはお弁当の差し色によく使われますが、1個入れるだけで一気に家庭っぽく、子どもっぽい印象になってしまいます。chiobenは働く人に食べてもらうお弁当ですから、意識的に使うのを避け、代わりに使ったのが紫ボールでした」(山本さん)紫ボールの効果的な使い方は、入れすぎないこと。「紫やピンクのおかずは、少しの面積でアクセントカラーとして使うのがコツです。それと、紫やピンクだけでは明るくならないので白、黄色と合わせて使います」(山本さん)ただし山本さんは、茶色いお弁当を否定する気はないのだという。「うちはNG食材やリクエストにも対応していますので、ご飯を玄米に替えてといわれることがあります。白いご飯の部分がすべて薄茶色になるので、どうしても茶色っぽいお弁当になるわけです。でも、不思議と食欲をそそる説得力がありますし、これが食べたいという人の気持ちが満たされることが大事なのではと思います」(山本さん)chiobenは撮影などの現場で食べられるロケ弁という性格上、お弁当を頼んでくる人は自分が食べるよりも、現場のスタッフに「これを食べさせたい!」という思いの人が多いという。「仕事の一環として頼んできてくれたわけですから、chiobenを選んでくれたことを私はその依頼者の〝手柄〞にしたいのです。そのためにも、その現場に最もふさわしいお弁当を作りたいと常に思いをめぐらせています。これまででいちばんうれしかったのは、依頼者から『私は時間がなくて食べられなかったけれど、スタッフのみなさんがすごく喜んでくれました!』というメッセージをいただいたことです。仕事の現場で見て気持ちが上がる彩りで、食べておいしく、満足できる食べごたえ。これらが揃った本当に喜ばれるお弁当を作り続けていきたいですね」(山本さん)●古来、育まれてきた日本の伝統、和食の彩り。働く人のための日常のお弁当。自由な感覚で若者を中心に広がる目新しい料理やスイーツの色彩。食の彩りの豊富さは日本の多様な食文化とともに、これからも私たちの食生活を豊かに彩ってくれるだろう。ゆで卵で明るさがアップ。野の花を摘んでそのままあしらったかのような花びらが小粋な印象。“働く人のためのお弁当”をコンセプトとするchioben。ふたを開けたらきっとうれしい歓声が上がることだろう。chiobenのお約束ともいえる「紫ボール」。小さいながら華やかなアクセントになっている。

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