ROTARY 2022年新春号
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024681012141618n5,21238522,6881,4769,4114,1505,670246身体活動(運動習慣)文化活動ボランティア地域活動○○○○○○○×××××××○○○○○×××××1.01.52.12.25.45.96.416.4*******P<0.001フレイルに対するリスク(年齢、性別で調整)運動習慣なし他の活動あり運動習慣あり他の活動なし24巣ごもり生活が続き、リモートワークが増える中、コロナ太りや足の弱りを懸念してウォーキングを始める人が多かったと思います。コロナ禍から2年、体と健康への影響にどんな変化があったのでしょうか。 コロナ禍の初期に懸念されたのは「コロナ太り」でしたし、代謝の低下が始まる中高年の方はコロナ太りをした人も多いでしょう。しかし今、高齢者で問題となっているのは「コロナやせ」です。コロナ禍の鎮静化に伴って調査をしたところ、筋肉量が平均1〜2㎏減っていることがわかりました。主に減っていたのは体幹部の筋肉で、意外なことに足の筋肉はほとんど減っていません。 実は「高齢者が2日ほど入院すると、1年分の筋力低下に匹敵する」といわれています。転倒による骨折は、寝たきりなどのきっかけになるのです。 転ばないようにこらえるのは足腰が重要です。特に大腿四頭筋(太ももの前の部分の筋肉)と体幹部のバランス感覚です。今後は、体幹部の筋力低下による高齢者の転倒が増えてくると予想されます。 ウォーキングは手軽にできる有酸素運動ですから、習慣化すればエネルギー消費などが期待できます。しかし、ウォーキングで鍛えられるのは主にふくらはぎであって、体のなかで最も大きな筋肉である大腿四頭筋は階段の昇り降りといった、上下運動でなければ鍛えられません。ミドル世代が、将来的にフレイルにならないためには、ウォーキングだけでは不十分なのです。ウォーキングだけではフレイルの予防にはならないのですね。では、何をしたらよいのでしょうか。 私がフレイル予防として提唱しているのは「栄養(食と口腔)」、「運動」、「社会参加」の3要素を継続的に行うことです。理想は3つを三位一体で行うことですが、無理ならばどれか2つでかまいません。 それを実証するデータが下のグラフです。3要素のうち、運動習慣だけの人がフレイルになるリスクが6倍なのに対し、運動習慣がなくても、積極的に社会参加と栄養バランスのよい食事という2要素を継続している方のリスクは2倍と、大幅にリスクが低くなることがわかります。この結果から、どの要素であっても、1つだけではフレイル予防に効果私たちを取り巻く健康についての課題を、各界の専門家に「たんぱく質」の役割を交えながらお話しいただくシリーズ。四回目は、高齢者の健康です。年をとり心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながり等)が低下した状態「フレイル」の防止や進行の抑制について、介護予防の大規模調査にかかわる高齢者医療の第一人者、飯島勝矢先生に、おたずねしました。構成・文/こいずみきなこ  イラストレーション/丹下京子心身の衰え防止は若いうちから04自立高齢者※に対する悉しっかい皆※※調査(49,238人)フレイルとは年をとって心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した状態を「フレイル」と言います。フレイルは「虚弱」を意味する英語「frailty」を語源としてつくられた言葉で、多くの人が健康な状態からこのフレイルの段階を経て、要介護状態に陥ると考えられています。※自立高齢者…介護の必要がなく、身の回りの最低限のことを自分で行える高齢者※※調査対象のすべてを調査すること(吉澤裕世、田中友規、飯島勝矢. 2019年日本公衆衛生雑誌)

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