ROTARY 2022年新春号
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26食から みえることエッセイ⑯江上料理学院・院長 江上栄子 寒ーいこの季節、人気があるのは食卓の鍋料理。作る人も、食べる人もほっとします。しょうゆやみそ、ポン酢などを用意しておけばある程度おまかせで。食べる側も苦手な材料は避けられて気楽なもの。最近は世界中のスパイス類や調味料が手に入り、それメキシコ風に、やれモロッコの味というふうに、遊べるのも楽しいものです。 諸外国にはおいしい煮込み料理がいろいろあるのですが、いわゆる鍋料理、つまり煮ながら作って食べる料理はあまり見ませんね。鴨や鶏の煮込みなどもしかり。魚介のブイヤベースもしかり。おいしく作ってレストランなどでもサービスしますが、煮ながら食べるわけではないのです。 そんな中、思い出深いのは、中国の「火鍋」とスイスの「フォンデュ」です。 火鍋にもいろいろあるのですが、驚くのは、上等な火鍋のために吟味された材料の数とその美しさです。新鮮な魚やエビ、カニ、アワビやホタテ貝など、色とりどりの海の幸、そしてアスパラガスやきのこ、薄く形がととのえられた山の幸の数々が華やかに、美しく、繊細に、あの光り輝く赤あかがね銅の火鍋にビシッと敷きつめられているのです。 澄んだ上シャンタン湯が静かに注がれ、火鍋は美しい色の調和と香りたつシンフォニーをかき鳴らし、期待感を高めます。その全ての材料の美しい色調と上品な味に感激しつつ、洗練された味を堪能した北京の夕べでした。 さあ、次はスイスのフォンデュ!  まず2〜3人分として、チーズはグリュイエールまたはスプリンツチーズ、エメンタール世界の鍋料理イラストレーション/阿部真由美

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