ROTARY 2023年新春号
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 人間の心の仕組みはとても複雑で、心が不安定になる要因や、メカニズムはまだ解明されていません。ただ、脳内で情報の運搬役を担う「神経伝達物質」が深く関わっていることは確かです。神経伝達物質の代表的なものである、心を落ちつかせる働きのあるセロトニン、幸せな気持ちややる気をもたらすドーパミン、興奮を感じさせるノルアドレナリンが不足していることが要因の一つだといわれています。  神経伝達物質の合成には、たんぱく質摂取による20種類全てのアミノ酸摂取が必要です。なかでも、必須アミノ酸は体内でつくることができないため、必須アミノ酸を含むたんぱく質を食事で摂取しなければなりません。必須アミノ酸は肉、魚、卵、乳製品、豆類などに多く含まれています。こうした食品が不足すると神経伝達物質を十分に合成することができなくなり、心が不安定になる引き金のひとつとなります。 心の安定には、食事でたんぱく質を十分に摂り、併せて運動も行うと不安状態やうつ傾向の改善効果があることが研究によって認められています。これは運動によってセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌が促され、運動前よりも分泌量が増えるためです。 また、ストレスへの対処にも運動は役立ちます。過度なストレスがかかると、脳では、神経細胞が新たなネットワークを築く可かそ塑性という機能が働き、ストレスへの耐性を高めます。可かそ塑性の働きにはミトコンドリアという細胞が関与しています。ミトコンドリアの材料はたんぱく質であり、運動することで脳細胞のミトコンドリアが増えてストレスへの対処につながることもわかっています。 心のケアには、適切なたんぱく質摂取と運動の両面からのアプローチがベストな方法だと考えられます。心をととのえる材料のひとつはたんぱく質必須アミノ酸は食事から摂取を神経伝達物質はアミノ酸でつくられているたんぱく質を形成するアミノ酸は全部で20種類。そのうち11種類は体内でつくることができます。残りの9種類が必須アミノ酸で、体内でつくることができないため、食事から摂取しなければなりません。必須アミノ酸は肉、魚、卵、乳製品、豆類などに多く含まれています。セロトニン心を落ちつかせるドーパミン幸せな気持ちもたらすノルアドレナリン興奮を感じさせる心のうごきに関係する神経伝達物質の一例 人間の心の仕組みはとても複雑で、心が不安定になる要因や、メカニズムはまだ解明されていません。ただ、脳内で情報の運搬役を担う「神経伝達物質」が深く関わっていることは確かです。神経伝達物質の代表的なものである、心を落ちつかせる働きのあるセロトニン、幸せな気持ちややる気をもたらすドーパミン、興奮を感じさせるノルアドレナリンが不足していることが要因の一つだといわれています。  神経伝達物質の合成には、たんぱく質摂取による20種類全てのアミノ酸摂取が必要です。なかでも、必須アミノ酸は体内でつくることができないため、必須アミノ酸を含むたんぱく質を食事で摂取しなければなりません。必須アミノ酸は肉、魚、卵、乳製品、豆類などに多く含まれています。こうした食品が不足すると神経伝達物質を十分に合成することができなくなり、心が不安定になる引き金のひとつとなります。 心の安定には、食事でたんぱく質を十分に摂り、併せて運動も行うと不安状態やうつ傾向の改善効果があることが研究によって認められています。これは運動によってセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌が促され、運動前よりも分泌量が増えるためです。 また、ストレスへの対処にも運動は役立ちます。過度なストレスがかかると、脳では、神経細胞が新たなネットワークを築く可かそ塑性という機能が働き、ストレスへの耐性を高めます。可かそ塑性の働きにはミトコンドリアという細胞が関与しています。ミトコンドリアの材料はたんぱく質であり、運動することで脳細胞のミトコンドリアが増えてストレスへの対処につながることもわかっています。 心のケアには、適切なたんぱく質摂取と運動の両面からのアプローチがベストな方法だと考えられます。目で見て目で見てわかるわかるたんぱく質たんぱく質心とたんぱく質藤田 聡Satoshi Fujitaノースカロライナ州ファイファー大学スポーツ医学・マネジメント学部卒業。南カリフォルニア大学大学院博士課程修了。博士(運動生理学)。運動生理学を専門とし、老化とともに起こる筋量と筋機能の低下(サルコペニア)に焦点を当てた骨格筋たんぱく質代謝についての研究を行っている。立命館大学スポーツ健康科学部教授たんぱく質と心にはどんな関係があるの?運動後に心が軽いのは気のせいですか?心をととのえる材料のひとつはたんぱく質必須アミノ酸は食事から摂取を神経伝達物質はアミノ酸でつくられているたんぱく質を形成するアミノ酸は全部で20種類。そのうち11種類は体内でつくることができます。残りの9種類が必須アミノ酸で、体内でつくることができないため、食事から摂取しなければなりません。必須アミノ酸は肉、魚、卵、乳製品、豆類などに多く含まれています。最近メディアでも取り上げられることが多い「たんぱく質」。毎日の食生活に積極的に取り入れるように意識している方も多いはず。でも、そもそも「たんぱく質」って何モノなのでしょう? 今回は、心とたんぱく質の関係について、立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡先生にお話を伺いながら、解説していきます。20

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