ROTARY 2023年新春号
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―――姿勢が悪いと、健康にも支障が出てきそうなイメージがありますが、実際はどうなのでしょう。まず、サッカーにおいて、姿勢の良しあしがプレーに与える影響はあるのか、教えてください。 アカデミーには高校1~3年生の選手が所属しています。当然、一般の人よりも運動神経が優れている子たちですが、昔より立ち姿勢の悪い子が増えているように感じます。悪い姿勢、とくに背中を丸くした猫背の状態で、長時間スマートフォンを見ていると、実はきちんとした呼吸が行えないことになります。それは腹圧が入りにくい、ということになり、結果真っすぐ立てなくなります。首には張りが出るし、猫背は悪影響しかありません。 そして、猫背の原因の一つに、柔軟性不足があります。体がかたいと、本来動かないといけない箇所が動かないので、それをどこかでかばうことになります。けがというものは、大抵がそういう時に起きるものなので、体がやわらかい選手に比べてけがをするリスクは高くなります。さらに、体の使い方が悪くなるので、力がうまく伝えられずパフォーマンスも落ちてしまいます。長い目で見ても、選手の運動能力の成長幅が狭められてしまうと思います。 選手たちを見ていると、特に上半身のかたい選手が多いです。上半身の柔軟性は、仰向けになって深呼吸をした時に、肋骨が動いているかどうかでチェックします。呼吸する時は、肋骨の下が左右に動き、肋骨の上は上下に動くのが正常です。しかし、大抵の選手は肋骨が動きません。そのため、練習前に胸郭(胸椎・肋骨および胸骨で囲われた部分)のストレッチを重点的に行います。上半身をやわらかくすることで、体に負担なく体幹が働くようになります。―――具体的に、体幹を強くするためのトレーニングはあるのでしょうか。  「強くする」というよりも「働かせる」といった方が、しっくりくるかもしれません。「体幹が働く」というのは、「腹圧が高い状態をつくれているか」ということです。呼吸をすると、横隔膜が上下に動きます。この時、横隔膜の下にある骨盤底筋群がその圧を受け止めます。しかし、腰が反っていると肋骨が前を向く感じになるので、下にうまアカデミーの選手に肋骨まわりのストレッチを指導。―――姿勢が悪いと、健康にも支障が出てきそうなイメージがありますが、実際はどうなのでしょう。まず、サッカーにおいて、姿勢の良しあしがプレーに与える影響はあるのか、教えてください。 アカデミーには高校1~3年生の選手が所属しています。当然、一般の人よりも運動神経が優れている子たちですが、昔より立ち姿勢の悪い子が増えているように感じます。悪い姿勢、とくに背中を丸くした猫背の状態で、長時間スマートフォンを見ていると、実はきちんとした呼吸が行えないことになります。それは腹圧が入りにくい、ということになり、結果真っすぐ立てなくなります。首には張りが出るし、猫背は悪影響しかありません。 そして、猫背の原因の一つに、柔軟性不足があります。体がかたいと、本来動かないといけない箇所が動かないので、それをどこかでかばうことになります。けがというものは、大抵がそういう時に起きるものなので、体がやわらかい選手に比べてけがをするリスクは高くなります。さらに、体の使い方が悪くなるので、力がうまく伝えられずパフォーマンスも落ちてしまいます。長い目で見ても、選手の運動能力の成長幅が狭められてしまうと思います。 選手たちを見ていると、特に上半身のかたい選手が多いです。上半身の柔軟性は、仰向けになって深呼吸をした時に、肋骨が動いているかどうかでチェックします。呼吸する時は、肋骨の下が左右に動き、肋骨の上は上下に動くのが正常です。しかし、大抵の選手は肋骨が動きません。そのため、練習前に胸郭(胸椎・肋骨および胸骨で囲われた部分)のストレッチを重点的に行います。上半身をやわらかくすることで、体に負担なく体幹が働くようになります。―――具体的に、体幹を強くするためのトレーニングはあるのでしょうか。  「強くする」というよりも「働かせる」といった方が、しっくりくるかもしれません。「体幹が働く」というのは、「腹圧が高い状態をつくれているか」ということです。呼吸をすると、横隔膜が上下に動きます。この時、横隔膜の下にある骨盤底筋群がその圧を受け止めます。しかし、腰が反っていると肋骨が前を向く感じになるので、下にうまく圧がいきません。横隔膜と骨盤底筋群を平行に保ち、呼吸時に腹圧が正常にかかることで、インナーマッスルが働き、自然と体幹が働くようになります。 つまり、腹圧が高い状態=体幹を働かせるためには、正しい姿勢をとる必要があります。そこで、まず上半身の柔軟性を高めなくてはいけないのです。選手たちには、特別な体幹トレーニングはさせていません。まずは正しい姿勢や呼吸ができるようになることが大事だと思っています。私たちビジネスパーソンにとって気になる健康課題に対し、スポーツ選手たちへの指導のエピソードを交えて、アドバイスをお伝えするシリーズ。今回は、セレッソ大阪アカデミーで高校生に指導するトレーナー、湯山諒平さんと、セレッソ大阪のフィジオセラピスト*である北浦敦士さんに、姿勢と体幹についてお聞きしました。アカデミーの選手に肋骨まわりのストレッチを指導。2022年より「セレッソ大阪アカデミー」で、選手たちのけがの応急処置やリハビリに加えて、練習前の身体をつくる運動やけが予防のトレーニング、パフォーマンス向上のためのトレーニングも担当している。湯山 諒平 セレッソ大阪アカデミー トレーナー* 理学療法士。医学的な知識を持って施術する。22

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