物流での「品質」維持導入後の変化現場に去年から関わった喜久山光日本チルド物流東京事業所で配車の実務を担当し、ドライバーと接することも多い佐々木南美。パレタイズ化により配送可能な距離を延ばすことができ、配車の可能性が広がったと言う。 「例えば、以前の方法では川崎から青森行きは拘束時間の上限を超えるため、運べなくなるはずでした。それが、パレタイズにより時間短縮でき、お客様の元へ以前と変わらず商品を運べることになりました」(佐々木)最初は、長年の慣習と異なる仕事のやり方に戸惑うドライバーもいたが、徐々に歓迎されているのを感じるという。「体感ですが、パレタイズされているのなら(配送の仕事に)入りたい、という協力会社も出てきました。それまでは、配車の依頼をしても、慣れない商品は積み方が分からなくて大変、と敬遠されました。今は、ドライバーの負担が減り、未経験でも協力してもらいやすくなったように2〜思います」(佐々木)一筋縄ではいかない。だが、トラックドライバーの平均年齢が2022年時点で大型トラック50・2歳、中小型トラック47・8歳と、全産業平均の就業者平均年齢43・7歳※と比べても早くに高齢化を迎えている。※ 参考文献:地域の経済2023〜第1章 地域における人手不足問題の現状と課題〜 何十年も続いた慣習を変えるのは「この時事問題に関心を持つ従業員ることは、長年の慣習で運送業務に付随する作業だった。だが本来、これらの作業はドライバーの仕事に含まれていない。慣習で行われてきた「見えない作業」を「パレタイズ化」するようになってしばらくは、ドライバーたちも落ち着かなかった、と日本物流センターの山田菜々未は言う。「最初の頃は、責任感の強いドライバーもいて、お任せしていいのだろうか、 とそわそわされていました。積み込む量が多かったり、商品が重かったりと体に負担がかかる作業です。この負担を少しでも軽減できればと思います」(山田)3 は、知識と経験が日々、増えていくのを実感している。「ドライバーからは、積み方のコツや商品の種類、箱の強度などさまざまな知識を共有していただき、パレタイズ作業の品質向上ができていると思います」(喜久山)センターでパレタイズした商品をそのまま積み、卸し先に車両の情報を伝達し、到着時刻に商品を受け取り配送が完了する。発地から目的地まで運ぶという、本来の運送業の業務にドライバーが専念できるようになります。ドライバーの負担が減り、働き手の幅が大きく広がります」(石橋)物流2024年問題は地域における人手不足問題とも密接に関係しており、2019年から時間外労働の上限規制が順次施行されている。対策を講じない場合、2023年度と比べて、2030年度は輸送能力が働力の減少を補う知恵のひとつとしてパレタイズ化が進められている。日本物流センターの古川は、物流2024年問題について倉庫で働く人たちに理解してもらうことに腐心した。は少なかったと思います。そこでまずは問題の理解をしてもらい、日本物流センターが解決できることを具体的に説明し、今後のビジョンを共有していきました。それからは、当事者意識を持つ人が増え、仕事を進めてもらえるようになったと思います」(古川)どんな仕事でも仕組みや内容が変わると、製品に影響が出やすい。だが、それでは「品質」が保たれているとは言えない。「日本物流センターの現場にとっての『品質保持』とは、お客様から預かった商品を、同じ状態のままお渡しすることです」(古川)協力会社も含め、大勢の人たちが関わる業務の質を一定に保つためには、どんな工夫がなされているのか。「作業マニュアルがあり、入職時に作業手順および安全面、作業時の注意点の説明を行っています。それでも現場で作業を行っていると一定数不測の事態は起きてしまいます。これを放置せず、その都度チームで話し合いを行い、再発防止策を講じています」(古川)受け取る側にとって、保管や運送の仕組みが変わったから品質が下がる、という理論は当然存在しない。物流2024年問題が生じているにもかかわらず、私たちが食品を購入できているのは、物流に携わる人たちの努力と工夫の積み重ねの成果である。運送を担うドライバーにとって、商品を仕分けし積み込みと荷卸しす日本チルド物流(株)の佐々木(上)と日本物流センター(株)の山田(右)と喜久山(左)。1634%不足する※との見通しがある。労
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