が戻りました。そんな中SNSを中心に話題になっているのが「ワンハンドフード」。片手で食べられる食べもののことで、おにぎりやお寿司など日本人にとっては昔からなじみのあるフードスタイルです。ド」。その名前の由来は18世紀にイギリスの紳士クラブで、サンドイッチ伯爵という方が、大好きなカードゲームを中断せずに食事をするため、肉などをパンの間に挟むように所望したため、彼の名がついたと言われています。 「ワンハンドフード」がブームになっている理由としては、まずその手軽さが挙げられます。カーが増え、買ったものを店内ではなく、アウトドアやオフィスで食べる機会が増えました。ワンハンドフードなら食べ歩きや仕事中の食事に便利で、さらに片手でスマホの操作がしやすく、写真も撮りやすい。も、よりカジュアルになっています。スで食事をせず、「前菜」を表す「アペリティフ」をよりカジュアルに称した「アペロ」というおつまみを楽しむ食事スタイルがブームになっています。星つきのレストランでも「手で持ってお召し上がりください」と一口サイズコロナ禍がおさまり、街に人々のにぎわいサンドイッチも代表的な「ワンハンドフーコロナ禍で持ち帰り可能な店舗やキッチン近年は、レストランでの食事や家庭の食卓その傾向は美食の国フランスでも。フルコーのお料理が登場する場面が増えてきました。定番のおにぎり、サンドイッチは不動の人気ですが、トルティーヤで具を巻いたラップサンドや、生春巻き、カラフルいなりなども楽しい「ワンハンドフード」です。日本ではまだなじみがないかもしれませんが、わたしの大好きな「ワンハンドフード」はトルコの屋台で売っている「ボレキ」。 「フィロ生地」といわれる、小麦粉を水で溶いてひたすらうすく伸ばし、向こうが透けて見えるくらいになった生地で、チーズとスパイスで味付けした肉をくるくると数回巻き包み、焼き色がつくまで焼いたパイ。見た目は春巻きのようですが、何層にも包んであるので、噛めばパリパリ、中からはとろりとチーズと肉汁が……。春巻きのように揚げてはいないので、見た目よりさっぱりです。もともとフィロ生地はトルコ発祥といわれ、有名なお菓子「バクラヴァ」などに使われていますが、今ではバルカン半島の国や、ギリシャなどでも「ワンハンドフード」に使われ、中身もいろいろなバリエーションが楽しめます。機会があったらぜひ召し上がってください。ところで前述のサンドイッチ伯爵、実は諸説あってカードゲームではなく、お仕事が忙しくてパンでローストビーフなどを挟んで、書類を見ながら召し上がっていたという話も。実はまじめな方だったのかもしれません。食べ歩きも、マナーを守って楽しみたいですね。Illustration/阿部真由美 江上料理学院院長。料理研究家。フードコンサルタント。実家は佐賀県有田焼の窯元「香蘭社」。青山学院大学英文科卒業。パリのル・コルドン・ブルー料理学校卒業。世界60カ国余りを訪ね、家庭料理の研鑽を重ねる。フランスチーズ鑑評騎士の会東京支部理事長を務めるなど諸外国との関わりも深く、2002年フランスの農事功労章シュバリエを受章。2017年同オフィシエを受章。2015年1月、米農務省の「米国農産物貿易の殿堂入り」を果たし、ケネディ大使の表彰を受けた。外食産業や食品会社の顧問としてフードビジネス全体に携わる。2024年「食品産業功労賞」受賞。テレビや講演、雑誌などで幅広く活躍中。03
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