ニュースリリース 2010年

食品中のカビ毒を迅速・簡便に分析できる検査キット
「MycoJudgeトータルアフラトキシン」10月19日発売開始

2010年10月15日
日本ハム株式会社

日本ハム株式会社 中央研究所(つくば市)では、香川大学農学部川村理教授との共同研究により、カビ毒トータルアフラトキシンを簡易迅速に検出するELISAキットを開発し、10月19日より「MycoJudgeトータルアフラトキシン」として販売を開始いたします。

トータルアフラトキシンは、Aspergillus flavusなどのカビによって産生されるカビ毒アフラトキシンB1, B2, G1, G2の総称で、動物やヒトに対して強い毒性を有し、特にB1は天然物質の中で最強の発癌性物質と言われています。アフラトキシンによる食品の汚染は、ピーナッツをはじめとするナッツ類、豆類、トウモロコシなどの穀類、および香辛料などで報告されています。
日本では、アフラトキシンB1のみを食品衛生法により規制していますが、国際的にはEUやコーデックス委員会などでトータルアフラトキシン(B1, B2, G1, G2の合算値)としての規制値を定めており、そうした動きを受けて、日本でも本年5月にはトータルアフラトキシンとしての規制が審議されました。
中央研究所では、検査量の増加に伴う検査の効率化、コスト削減が求められる現状を踏まえ、簡易かつ迅速に多検体の検査を可能とする測定キットを開発しました。本キットは、抗原抗体反応を利用したELISAキットで、短時間・低コストで安定した精度の検査結果が得られます。食品中のアフラトキシン検査法として厚生労働省から通知されているHPLC法との相関性が高く(参考資料:図1)、食品中のトータルアフラトキシンを検査する際のスクリーニング法として有効な分析法です。

【キットの特徴】

●食品中のトータルアフラトキシン(B1, B2, G1, G2)を高感度(2.5ppb※1以上)に測定可能。
●試料抽出後に希釈等の煩雑な操作を必要とせず、迅速(およそ30分)かつ正確に測定可能。

【キットの性能】

●測定範囲:2.5ppb~20ppb
●検出限界:1.25ppb
※1 ppb :単位(10億分の1)

【学会発表】

●本研究の成果は、9月16(木)~17日(金)に熊本県立大学で開催された、日本食品衛生学会第100回  学術講演会にて発表いたしました。

参考資料

<試験方法>

トウモロコシを試料としたトータルアフラトキシン(B1, B2, G1, G2)の添加回収試験を行った。
1名の試験者が本ELISAキットを用いてトータルアフラトキシン添加試料を同日に7回測定し、これを3日間繰り返して、回収率および相対標準偏差を確認した。
さらに、同試料を用いてHPLC法での測定を行い、ELISA キットとの相関性を確認した。

<結果>

本ELISA キットは、添加回収試験において、全ての添加濃度で80%以上の回収率※2を示した。また、併行相対標準偏差(RSDr)※3、日間相対標準偏差(RSDR)※4ともに20%以内であった。さらに、HPLC 法との高い相関性が認められた。
このことから、本キットは、食品中のトータルアフラトキシンを迅速簡便にスクリーニングするための有効な分析法であることが示唆された。

※2:回収率:添加量に対する測定濃度の割合。70~120%の範囲で良好。
※3:併行相対標準偏差(RSDr):7回繰り返し測定した測定濃度のばらつきの尺度。30%以内で良好。
※4:日間相対標準偏差(RSDR):3日間繰り返し測定した測定濃度のばらつきの尺度。30%以内で良好。

表1:添加回収試験結果

 

1日目
測定濃度
(ppb※1)

2日目
測定濃度
(ppb)

3日目
測定濃度
(ppb)

平均 測定濃度
(ppb)

回収率
※2 (%)

併行相対 標準偏差 RSDr※3

日間相対 標準偏差 RSDR※4

非汚染試料

0.737

0.745

0.635

0.706

-

-

-

2ppb 添加試料

2.011

1.797

1.939

1.916

95.8%

18.6%

18.1%

5ppb 添加試料

4.046

4.006

4.087

4.046

80.9%

7.3%

6.8%

10ppb 添加試料

8.471

8.829

9.114

8.805

88.1%

5.6%

6.4%

※1  ppb :単位(10億分の1)

※ニュースリリース掲載時点の情報となります。今後、変更となる場合もありますのでご了承ください。