Project Story 01 本マグロを通じて、「食べる喜び」を、アジアへ。 「宇和丸 本まぐろ」アジア進出への挑戦

「日本ハム」というグループ名からは、最も想像できない取り組みかも知れない。主役はマリンフーズ。国内およびイギリス・カナダ・シンガポール・タイなど世界12カ国約30拠点の協力会社を通じて水産原料を調達・加工し、冷凍・生鮮水産物や水産加工品を国内外に提供している企業だ。2008年からは、愛媛県宇和島市での本マグロ養殖にも取り組み、「宇和丸 本まぐろ」のブランド名で販売している。この「宇和丸 本まぐろ」をシンガポールに売り込むため、2013年5月、マリンフーズは日系デパートのフェアに参画した。担当したのは、当時入社2年目の中村である。

アジアで販売実績がなかった理由。

潮の速い愛媛県宇和海で養殖され、生のイカなどを餌としているため、筋肉質で優れた身質を持つ「宇和丸 本まぐろ」。だが、地理的にも輸送が比較的容易なアジアでも、これまで海外での販売実績はほとんどなかった。原因の一つは、アジアの市場ニーズだ。「日本食は定着していますが、アジアで刺身というと、サーモンが主流です」。
また、インドネシアなど近海から直接空輸されるキハダやメバチマグロもあり、日本から出荷する養殖本マグロは現地では割高と捉えられてしまうからだ。

アジアへ売り込むチャンス到来。

シンガポールで水産物販売を行っている顧客を、中村が担当することになったのは、入社1年目の2012年冬のこと。「『宇和丸 本まぐろ』を提案し始めたのは、翌年3月ごろでしょうか」。
実はその顧客とは、過去に一度「宇和丸 本まぐろ」の取引があった。しかしその後、価格面で折り合いがつかず取引が続かなかった。
今回、その顧客は、シンガポールにある日系デパートの四国フェアに参加、集客のため解体ショーをしたいというのだ。「『宇和丸 本まぐろ』をアジアへ売り込む絶好のチャンスです」。中村の提案も熱を帯びる。

気持ちが一つになったと思った矢先…

とはいえ、中村自身、鮮魚を空輸する流れの全体がつかめず、値段を決めるのに時間がかかった。ようやく提示した価格も、顧客の返事は「NO」。あきらめず交渉を重ねる中で、顧客から「売って終わりにしてほしくない。こちらは仕入れてからが勝負。フェアに来たお客様に売ることも一緒にやってほしい」と言われた。中村も、販促物の提供や初日3日間の販売応援などを通じて、一緒に四国フェアを成功させたいと想いを伝えた。
気持ちが一つになってきたと思った矢先――「お客様から『3月、4月のフェアでもマグロを出展したため、四国フェアでの出展は見送りたい』というお話が」。突然の話に落ち込む暇もなかった。

一転、解体ショー開催決定!

だが、5月上旬になって顧客から再度連絡が入る。四国フェア参加企業がキャンセルをしたため、急遽、「宇和丸 本まぐろ」解体ショーの実施が決まったというのだ。「偶然ひとり残っていたオフィスで、その電話を受けました。信じられませんでしたね」。大喜びしたのも束の間、中村は我に返る。フェア開催は5月下旬だ、時間がない!
次の日から中村は、上司や先輩に教わりながら、顧客からの要望を一つひとつクリアにしていった。梱包にはマグロが傷つかないように段ボールで巻いたドライアイスを入れた。フェアの日から逆算して、顧客の引き取り時間、フライト時間、空港への納品時間、などを調整。「準備が全て終わったのは、出張前日でした」。

「司会、やってみる?」

フェアが始まった。解体ショーの開催は3回の予定である。「初日のショーは、売り子をしながら観客に混じって見ていました」。
フェア初日が終わったときに、現地スタッフが一言。「明日の解体ショーの司会、やってみる?」人前で話すことは苦手だが、中村は引き受けた。「性格ですかね?あえて挑戦して、自分を変えようと思う方なんです」。その日の夜、早速話す内容を考えた。しかし、練習はほとんどできないまま、本番を迎えることになった。

激しく落ち込んだ最初の司会。

2日目の解体ショーが始まった。用意した言葉は一瞬で言い終わった。頭が真っ白のまま、言えたのは価格と部位のみ。しかも、価格表を見ながらなので観客の顔も見られない。「激しく落ち込みました」。
終了後、現地スタッフからアドバイスをたくさんもらった。価格は絶対覚えて前を見て話そう。何より、メーカーなら伝えたいことがあるでしょう?……一言一言が身に染みる。業務終了後、再度準備に取りかかった。出張準備と2日間の販売業務でうとうとしながらも、今までの知識をフル回転して台本を練った。

3日目の解体ショー。そして学んだこと。

3日目の解体ショーがスタート。「観客に向かって、話せることをとにかく話しました」。宇和海が日本有数の漁場であること、餌にこだわりをもっていること。「現地スタッフからは、『昨日より良かったよ』なんて励まされたけれど、もっと知っていたら、もっとアピールできたと後悔が残りました」。しかし、数量限定のカマ、頭、骨は完売、「宇和丸 本まぐろ」販売は好調のうちに終わった。
「この経験を通じて、商品のことをもっとよく知ろうと思いました」。中村は、「宇和丸 本まぐろ」について、養殖、鮮魚について深く勉強するようになった。「販売の現場を体験できたのも貴重な経験でした。一柵を買ってもらうのがどんなに大変かを、身を以って知りました」。商品が店頭で売れるようにするには、メーカーはどうすべきかを、より真剣に考えるようになった。

アジア進出のきっかけに。

ここでアピールできたことは、マリンフーズとしても大きい。本マグロを提供する企業と、マリンフーズが認知されれば、アジア進出の強力な足がかりとなる。そのきっかけを、入社2年目の中村はつくったのだ。
「次回は、新しい日系デパートでも『宇和丸 本まぐろ』を扱ってもらえるよう案内中です」。「宇和丸 本まぐろ」を通じて、中村は「食べる喜び」を世界に提供し続ける。

Profile : マリンフーズ株式会社 原料本部 市場開発部 海外市場課 2012年入社 中村 佳子
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