2 たんぱく質を自由に楽しむ
知って食べると、こんなに変わる! あなたの人生を豊かにする栄養素③

たんぱく質に関する、身近な疑問にお答えします

「たんぱく質はどんな風に摂取したらいいの?」「たんぱく質は筋トレやダイエットにも有用?」「たんぱく質で仕事や勉強が捗る?」など、たんぱく質に関係した身近な疑問をQ&A方式で紹介します。

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たんぱく質 キホンのキ

たんぱく質は1回の食事でまとめて摂取するのではなく、1日数回に分けて摂取するのがおすすめです。たんぱく質は身体に蓄えられないため、「毎食均等に20g以上摂取する」のが良いでしょう。特に重要なのが、「朝食」にたんぱく質をしっかりとること。睡眠中はたんぱく質を摂取することができないため、その分のたんぱく質を朝食で補う必要があるのです。
朝食にしっかりたんぱく質をとることは、その後の心身のパフォーマンスにも影響するという複数の研究が報告されています。例えば海外の研究では、高炭水化物・低たんぱく質の朝食をとった人は、低炭水化物・高たんぱく質の朝食をとった人よリ攻撃性が高まるとの結果*1が出ています。また、朝食に糖質中心の飲料と、たんぱく質も含む飲料をとった場合を比較した日本の研究*2では、たんぱく質群で集中力が高まり、作業効率が上がったとの報告があります。
1日のスタートを良いものにするために、しっかりと朝食でたんぱく質をとることを心がけましょう。
*1 Proc Natl Acad Sci Usa. ; 114,25,6510-6514. jun 20, 2017
*2 Nutrients.; 10,5,May8,2018 pil:E574. doi:10.3390/nu10050574)

食べ物から摂取するたんぱく質は、肉や魚、卵や乳製品に含まれる「動物性たんぱく質」と、豆や大豆製品、穀物などに含まれる「植物性たんぱく質」の2種類に分けることができます。2013年に国連食糧農業機関(FAO)が提唱した、必須アミノ酸の消化吸収率と利用効率まで総合的に判断できる指標「DIAAS」によれば、動物性たんぱく質植物性たんぱく質に比べて消化・利用効率が高いことが分かっています。ただし、動物性たんぱくを含む多くの食品は脂質が多くカロリーが高い傾向があるとされています。反対に、植物性たんぱく質動物性たんぱく質に比べて消化・利用効率が低い傾向にありますが、植物性たんぱくを含む食品の多くは脂質が少なくカロリーが低いヘルシーな食材といえます。どちらもメリット・デメリットがあるので、適度な分量をバランス良く摂取することが大切です。

CHECK

動物性たんぱく質
肉、魚、卵、牛乳、乳製品など
植物性たんぱく質
豆、大豆製品、穀物、きのこなど
メリット
  • 必須アミノ酸が豊富でバランスが良い
  • 体内で合成できない「必須アミノ酸」が多い
  • 体内の吸収率が高い(下の図参照)
  • 筋肉の合成を促す「ロイシン」も豊富
  • 脂質が少なくカロリーが低い傾向
  • 食物繊維などの栄養素が豊富
デメリット
  • 脂質が多くカロリーが高い傾向
  • アミノ酸スコアが低い傾向
  • 体内の吸収率が低い(下の図参照)
植物性および動物性タンパク質各種食材のDIAAS値
植物性たんぱく質 小麦 40.2
大麦 47.2
とうもろこし 42.4
大豆 99.6
動物性たんぱく質 牛乳 115.9
牛肉 111.6
豚肉 113.9
鶏肉 108.2
鶏卵 116.4

出典:Ertl P et al. Animal.2016; 10(11):1883–1889.
*はErtl, P. et al.Die Bodenkultur: Journal of Land Management, Food and Environment, 67(2): 91–103(2016).

均整のとれたスタイルを手に入れたい、毎日を元気に過ごす体力をつけたい、加齢に負けない体作りをしたいなど、たんぱく質を積極的にとりたい理由はさまざまかと思います。その基本となる筋力をつけるならば、まずは筋肉の合成を促進してくれる栄養素を摂取すると良いでしょう。たんぱく質は筋肉の主材料ですが、たんぱく質だけを摂取していても、筋肉量を維持したり、増やしたりすることはできません。例えば、筋肉量の維持に不可欠なのが「糖質」です。最近はダイエットのために糖質制限をする方もいますが、糖質を制限するとエネルギー不足になって、不足分のエネルギーを補うために筋肉が分解されてしまいます。ほかにも、筋肉の合成や活性化を促してくれる「ビタミンD」や、筋肉疲労を軽くしてくれる「ビタミンB群」などに注目しましょう。

CHECK

糖質 エネルギー不足を防ぎ、筋肉の分解を防ぐ 小麦粉、ゆであずき(加糖)など
ビタミンD 筋肉の活性化と合成を促す 鮭、いわし、きのこ類など
ビタミンC たんぱく質の合成とホルモンの代謝を促す ブロッコリー、キウイ、パプリカなど
ビタミンB群 たんぱく質の分解を助ける にんにく、マグロ、サバ、豚肉など
カルシウム 筋肉をスムーズに動かす 牛乳、海藻類、小魚など
筋肉の維持と成長に関わる レバー、卵(黄身)など
亜鉛 細胞のエネルギーとコラーゲンの生成に関わる レバーなど

出典: 藤田聡.カラダに効く!タンパク質まるわかりBOOK.学研プラス、2021年、P.76、P.98-P.99
藤田聡.眠れなくなるほど面白い 図解 たんぱく質の話.日本文芸社、2019年、P.70-P.71

筋肉量が減少して、「基礎代謝」が低下してしまいます。基礎代謝が低下すると「やせにくく、太りやすい体質になる」「身体が冷えやすくなり、免疫力が落ちる」などのデメリットがあります。
「代謝」とは、身体の中で行われている熱を発散させるプロセスのこと。私たちの身体は、古い細胞を新しい細胞に置き換えていくことで健康を維持しています。代謝を促すための「酵素」や「ホルモン」も、たんぱく質からつくられています。

たんぱく質の過剰摂取によって引き起こされるリスクを2つ紹介します。1つは「肥満」。たんぱく質が豊富な食品は脂質も多い傾向があるため、食べすぎた分だけ脂肪も増えてしまいます。もう1つは「腸内環境の悪化」。たんぱく質に偏った食事をしていると、そのほかの栄養分が不足して、腸内環境が乱れてしまうおそれがあります。たんぱく質は、さまざまな食品からバランス良く摂取するのが理想的です。

たんぱく質×食事

食品のたんぱく質保有量はパッケージ裏に記載されている栄養成分表示で確認できますので、それを目安にしてください。また、文部科学省が運営している「食品成分データベース」を利用するのもおすすめです。

プロテインは、毎日の食事で充分なたんぱく質量を摂取できない人にも有用です。とはいえ3食を全てプロテインに置き換えてしまうと、たんぱく質以外の栄養素が不足してしまうおそれがあります。プロテインはあくまで食事の「補助」として考え、基本的な栄養素は食事から摂取するのが良いでしょう。ちなみに、体内で使い切れなかったたんぱく質は尿として排出されるか、脂肪に変わって体内に蓄積されます。そのため、毎日の食事で充分なたんぱく質量を摂取できている人は、プロテインを飲む必要はないでしょう。

たんぱく質×筋トレ・ダイエット

筋トレで筋肉を維持しつつ、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動で脂肪を減らすのがおすすめです。一般的に、筋肉をつけたいときはバーベルを使った筋トレなどの無酸素運動、脂肪を減らしたいときは有酸素運動が有用といわれていますが、ダイエットなどで摂取エネルギーを制限していると、多少ですが筋肉量も減少してしまいます。それを防ぐために、筋トレ×たんぱく質摂取の合わせ技が効果的というわけです。

「BCAA」とは、必須アミノ酸の「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の総称。BCAAは筋肉を構成するアミノ酸の35%程度を占めていて、筋肉の合成をサポートしたり、筋肉の分解を抑えたりする機能があります。中でも重要なのが、鶏むね肉や鮭などに含まれるロイシンです。ロイシンには、細胞内のシグナル伝達に関わる「エムトール」という物質を活性化させ、筋合成のスイッチを入れる役割があります。

CHECK

バリン 筋肉を強化し、血液中の窒素量を調整する レバー、マグロの赤身
イソロイシン 筋肉を強化し、神経の働きを助ける 鶏むね肉、鮭、ブリなど
ロイシン 筋肉を強化し、肝臓の働きを高める 高野豆腐、ホッケ、鶏むね肉など

出典:カラダに効く!タンパク質まるわかりBOOK.学研プラス、2021年、P.44-P.45

ポイントは、「高たんぱく質」「低脂質」の食材を選ぶこと。たんぱく質を摂取する際は、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質のバランスを考えることが重要です。しかし動物性たんぱく質を豊富に含む食品は、その分脂質が多くカロリーが高い傾向があり、食べすぎるとカロリーオーバーするおそれがあります。高たんぱく質・低脂質の食品を選ぶことで、効率良く筋肉をつくっていきましょう。

CHECK

鶏ささみ
たんぱく質23.9g
脂質0.8g
マグロ赤身
たんぱく質26.4g
脂質1.4g
鶏むね肉(皮なし)
たんぱく質23.3g
脂質1.9g
たら
たんぱく質17.6g
脂質0.2g
豚ヒレ肉
たんぱく質22.2g
脂質3.7g
ツナ缶
(ノンオイル)
たんぱく質16.0g
脂質0.7g

※全て/100g

出典:「食品成分データベース」文部科学省、https://fooddb.mext.go.jp/freeword/fword_top.pl

おすすめは、「高たんぱく質」「低脂肪」「低糖質」の食品です。たんぱく質は糖質と比べて腹持ちが良く、空腹を抑える効果もあります。この3点がそろった食品を食べることで、余計なカロリー消費を防ぐことができるでしょう。

高たんぱく質、低脂肪、低糖質の食品例

ゆで卵、ヨーグルト、プロセスチーズ

注意!
高たんぱく質をうたっている食品の中でも、脂質や糖質を多く含むものがあります。パッケージの栄養成分表を確認しましょう。

たんぱく質×こころ

本当です。やる気や元気のもととなる「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」は、必須アミノ酸の「フェニルアラニン」や、非必須アミノ酸の「チロシン」から合成されています。やる気や集中力を強化したいときは、これらのホルモンを含む食品を食べるといいでしょう。

CHECK

フェニルアラニン ドーパミンやノルアドレナリンなどの材料になる マグロ、鶏むね肉など
チロシン ドーパミンやノルアドレナリンの材料になる チーズや納豆など

出典:藤田聡.カラダに効く!タンパク質まるわかりBOOK.学研プラス、2021年、P.14-P.15

本当です。幸せホルモンともよばれている「セロトニン」は、必須アミノ酸の「トリプトファン」からつくられています。また、トリプトファンは睡眠ホルモン「メラトニン」の材料でもあり、睡眠の質を改善する効果があります。もちろん、メンタルや睡眠の質を改善するには規則正しい生活や適度な運動も必要です。

CHECK

トリプトファン セロトニンやメラトニンなどの材料になる 納豆、チーズなど
グリシン すみやかに深い睡眠をもたらす カジキマグロ、エビ、ホタテなど

出典:藤田聡.カラダに効く!タンパク質まるわかりBOOK.学研プラス、2021年、P.13、P.34-P.35

監修

立命館大学 スポーツ健康科学部・研究科 藤田聡(ふじた・さとし)教授

2002年南カリフォルニア大学大学院博士号修了。博士(運動生理学)。2006年テキサス大学医学部内科講師、2007年東京大学大学院新領域創成科学研究科特任助教を経て、2009年より立命館大学。米国生理学会(APS)や米国栄養学会(ASN)より学会賞を受賞。監修本に『間違いだらけのたんぱく質の摂り方』、共著に『体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学』など。2021年に長年の研究に基づき企業の健康経営をサポートする(株)OnMotionを設立。

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