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「美味なるものには音がある」は本当か?
シャウエッセン®の「パリッ!!」を音響学から分析してみた。

シャウエッセン®が誕生して40年。大ヒットのきっかけとなったのが翌年に放映された「美味なるものには音がある」のCMです。今ではすっかり定着した、皮が弾けるときのあの「パリッ!!」とした食感。実際にはどのような音で私たちの耳に聞こえているのでしょうか? そんな疑問を検証するため、音を科学的に分析する日本音響研究所の協力を得て、5種類のウインナーで比較実験を行いました。

日本音響研究所 鈴木創所長・吉田靖氏

日本音響研究所は音声・音響を幅広く解析する民間の専門研究機関。人の声の特徴を分析し、本人確認や声の違いを見分ける声紋鑑定を主とする一方、アーティストの音声・歌声の特徴解析のほか、さまざまな音に関わる製品分析、評価などを行う。

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「美味なるものには音がある」CM誕生のわけ

シャウエッセン®が誕生した当時、日本ではウインナーはフライパンで炒める調理が主流でした。本場ドイツのウインナーに負けないシャウエッセンのおいしさを伝えるために、ドイツでは一般的なボイル調理をテレビCMで伝えたのです。天然素材の羊腸を厳選して使っているシャウエッセンは、ほかのウインナーに比べてやわらかく弾力があるのが特徴。ボイルすると天然の羊腸が張りつめて、噛んだときに「パリッ!!」と音がします。テレビCMではこの音とともに「美味なるものには音がある!」というコピーが流れました。

以来40年間にわたって多くの方に親しまれ、シャウエッセンといえば「パリッ!!」というイメージが定着しました。ジューシーな食感を想起させるこの「パリッ!!」、ですが、実際にはどのような音として私たちに伝わっているのでしょうか。その音の大きさや特徴を確かめるため、日本音響研究所と共同で検証実験を行いました。

ウインナーの喫食音400サンプル大調査

音には基本的な属性として、音の高さと大きさがあります。今回の実験で使用したサウンドスペクトログラムは、声紋を調べるときにも使われるもの。縦軸に音の高さを示す周波数、横軸に時間、表示色で相対信号強度(音の大きさ)を示す3次元グラフによって、時間による音の変化を見ることができます。実は、私たちが食べ物を口にするときには、ひと口噛むだけでも破断が起きることによって、同時に5~6個の音が鳴っているのです。シャウエッセンの場合は、単位時間あたりにするとどのくらいの音が鳴っているのか、どの周波数帯が強く出ているのかを調べました。

実験に協力いただいたのは10代から60代以上までの男女計16人。試食したのは、日本ハムの製品A~C(A:シャウエッセン、B:コラーゲンでできた人工皮のウインナー、C:羊腸を使ったウインナー)、シャウエッセンに近い価格帯の他社製品Dと他社製品Eの5種類です。

実験は10代~60代以上までの男女16人を被験者とし、計400本分を収音

実験では5種類のウインナーが同じ条件になるよう、それぞれ袋に入れ分けて同時にボイル

被験者には5種類の順番を替えた5皿を提供し、喫食してもらった

実験で使用した収録機器

マイクには息のノイズが入らないようにするためのポップガードを設置し、約15cm離れた位置でウインナーを手に取り3分の1ほどを喫食してもらい収音した

実験会場はノイズが入らないよう録音スタジオを使用

実験で判明! シャウエッセンにはしっかり音があった

人間の耳に聞こえる音の範囲、可聴音は一般的に20Hzから2万Hzと言われています。例えば、1万7000Hz付近の音はモスキート音と言われる周波数の高い音で、若い人の聴力でしか聞き取ることができません。一方、誰もが聞き取りやすい周波数帯とされているのが2000Hzから5000Hzです。このためサッカーのホイッスルやアラーム音は、騒がしい場所でも耳に届くよう約3000Hzに設定されています。

実験した5種類の製品を食べたときに人の耳に聞こえる音がしているのかを比較したのが下図です。各80サンプルのうち可聴音の範囲(20Hz~2万Hz)にあり、かつ12デシベルを超えているものを有効データとしました。すると、聞こえる音がしたデータ数はA:シャウエッセンが67、B:コラーゲンでできた人工皮のウインナーが30、C:羊腸を使ったウインナーが41となり、他社製品Dが63、他社製品Eが55でした。
この結果から、シャウエッセンは最も個体差が少なく、安定してしっかりとした音がすることが分かりました。

噛んだ時に人の耳に聞こえる音が鳴ったサンプルの数(N=80)

シャウエッセンが、どの個体を噛んでも一番安定して音が鳴った

キレ、耳に届く音、
おいしさをイメージさせる音の全てで◎

有効だった収音データを可視化し、比較したのが下図です。縦軸に周波数、横軸に時間、表示色で相対信号強度(音の大きさ)を示し、それぞれの結果を3次元グラフで表示しています。

音の特徴をみるときには、3つの注目する周波数帯があります。
1つが1万Hz以上の「高周波数帯(青囲みの部分)」で、若い人ほど聞き取りやすい周波数帯です。「この高周波成分はいわばキレの良さに該当します。線の太さ(音の発生頻度)、色の分布(音の強度)のいずれを見てもシャウエッセンが一番存在感のある音になっています。この周波数帯が示すのは、瞬間的に破断する時の音。「シュパッ」「プチッ」といった破裂した感じがシャウエッセンは非常に伝わりやすいと言えます。なお、製品Eや、音の発生頻度は少ないですが人工皮の製品Bは比較的良好で歯切れの良さが見られます」(日本音響研究所・鈴木創所長)。

2つ目が、人間の耳に最も感度がいい周波数帯2000~5000Hz(白囲みの部分)です。この周波数成分が強く分布していれば、テレビを見たり音楽を聴いたりしながら物を食べていても、しっかりとその音を認識できるレベルとなります。ここでもシャウエッセンと製品Eが 強く分布しました。「特にシャウエッセンはバラつきがなく、表示色が出ていますので個体差が少ないと言えます。また、人工皮の製品Bや羊腸を使った製品Cは色が全体的に少なく、あまり成分が分布していないことが見て取れます。製品Dは、前半の被験者においては良好でしたが、後半においては音の分布が弱く、個体差が見られました」(鈴木所長)。

3つ目が、口腔内で共鳴する成分で、約1000Hz付近(黄色の囲み部分)の周波数帯です。「口を開閉する際の『ハフ』という音、シズル感やおいしさを想起させる音です。口の中で生まれる咀嚼音は、骨を通じた振動として感じ取ることができます。こうした「体の内側から聞こえる音」が脳に届くことで、より「食べている」という実感が強くなります」(鈴木所長)。しっかりした音が検出されたのは、シャウエッセン、製品D、製品Eの3つで、特にシャウエッセンと製品Eが突出していました。

骨を通じた振動

私たちは、空気の振動を鼓膜が受け止めて、それを“蝸牛(かぎゅう)”と呼ばれる聴覚器官を通じて音の信号を脳に伝えることで音を聞いています。これを気導と呼びます。
このほか、空気の振動以外に側頭骨や皮膚などが受け止めた振動を直接蝸牛に伝えて音を感じることもできます。これを“骨導(こつどう)”と言います。咀嚼音は骨を通して直接内耳に音が伝わるため、今回の計測値以上に大きく、はっきりと聞こえています。

強く、響きが良いのがシャウエッセン

各80本のデータをまとめたものに加えて、それぞれのウインナーのデータの中で最も強く音がした「チャンピオンデータ」を比較しました。すると、シャウエッセンの音の特徴がさらに際立つ結果となりました。

それが下の図です。シャウエッセンは、紫色で表される最も強い音が縦線上の全ての領域で色濃く出ていることが分かりました。「キレのある音、耳に届く音、おいしさをイメージさせる音、その全てでしっかり音が検出されています」(鈴木所長)。音が大きいだけではなく、残響、つまり音の響きも強く出る特徴があり、噛んだときの余韻を楽しむことができるのもシャウエッセンならではの特徴となっています。

それぞれのウインナーの音を聴く(AからEまでの音が順番に流れます)

各製品の音の特性

  高周波成分 口腔内共鳴 残響 音の特性
A:シャウエッセン 力強い迫力のある音
B:コラーゲンでできた
人工皮のウインナー
スカッと軽快な音
C:羊腸を使ったウインナー バランスのよいキレのある音
D:他社製品 厚みのある音
E:他社製品 しっかり鳴っている

実験・分析を終えて日本音響研究所・所長のコメント

「ひと口にウインナーと言っても、音がここまで違うことに我々もびっくりしました。シャウエッセンは「美味なるものには音がある」というだけあって、分析図を見てもわかる通り、被験者の年齢や性別に関わらず安定して良い音がしていました。「パリッ!!」という音が、皮の張力によって生まれるため、高齢の女性が食べても若い男性と同様に心地よい音が響いているのでしょう。さらに口腔内共鳴、聴覚感度の良い周波数帯、高周波成分という3つの要素が、噛んだ瞬間に凝縮されている点は、他では見られない特性です。また、人工皮の製品Bは音の発生頻度は少ないのですが歯切れの良さがあり、羊腸による製品Cは口腔内での「ハフ」といったシズル感のある音がしっかりとあり、それぞれの異なる個性が見られます」(鈴木所長)

実験方法詳細

実験方法は、日本ハムの製品A~C(A:シャウエッセン、B:コラーゲンでできた人工皮のウインナー、C:羊腸を使ったウインナー)、シャウエッセンに近い価格帯の他社製品のDとEの5種類のウインナーを被験者が5回ずつ口にし、かじったときの喫食音を収音。被験者は10代から60代以上の男女16人で、1種類につき80データ、計400本分のサンプルデータを取得しました。各ウインナーは温度、ボイル時間など全て同じ条件で調理したうえで、1皿目はABCDEの順、2皿目はBCDEAと、順番を変えて提供し、食べる順番や調理後の経過時間による偏りを防ぎました。実験結果は、縦軸に音の高さを示す周波数(単位:Hz)、横軸に時間(単位:秒)、表示色で相対信号強度(音の大きさ)を示す3次元グラフで表示しています。

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