2 たんぱく質を自由に楽しむ
あなたに必要なたんぱく質の量は?

たんぱく質の正しいとり方

「1日にどれくらいのたんぱく質をとったらよいのか?」という目安は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の126ページで確認できます。厚生労働省によると、性別・年齢別のたんぱく質の推奨量は、男性18歳~64歳が65g/日、女性18歳~64歳が50g/日。けれども、これはあくまでたんぱく質の欠乏で病気にならない目安量に過ぎません。健康状態を維持するためには、さらに多くのたんぱく質量が必要になります。

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たんぱく質の推奨量

年齢 男性 女性
1~2(歳) 20 20
3~5(歳) 25 25
6~7(歳) 30 30
8~9(歳) 40 40
10~11(歳) 45 50
12~14(歳) 60 55
15~17(歳) 65 55
18~29(歳) 65 50
年齢 男性 女性
30~49(歳) 65 50
50~64(歳) 65 50
65~74(歳) 60 50
75以上(歳) 60 50
妊婦(初期)の付加量 0
妊婦(中期)の付加量 5
妊婦(後期)の付加量 25
授乳婦の付加量 20

※厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)、P.126をもとに作成

健康状態を維持するために必要なたんぱく質量は、対象者の身体の大きさや身体活動のレベルによって異なりますが、基本的には「体重×身体活動レベルに応じた数値」で算出することが可能です。運動習慣がない人は「体重×0.95g」、週1回以上の運動習慣がある人は「体重×1.62g」、65歳以上の高齢者は「体重×1.0g」が目安です。この計算式を使って、ご自身に必要なたんぱく質の量を見直してみましょう。

自分に必要なたんぱく質の量を知ろう。

体重を入力する際は半角数字で入力してください。

運動習慣がない場合

Kg × 0.95 g
000.0
g

週1回以上の運動習慣がある場合

Kg × 1.62 g
000.0
g

65歳以上の高齢者の場合

Kg × 1.0 g
000.0
g

※活動量によって1日に必要なたんぱく質量に10gから22gの幅があります。

たんぱく質は、1日3食バランス良く

これまで、たんぱく質は「1日の総摂取量」が重視されていました。「朝食・昼食でたんぱく質を摂取していなくても、夕食で60g摂取すればよい(1日の推奨量が60gの人の場合)」という考え方です。しかし最新の研究では、「1回の食事につき20g以上のたんぱく質を摂取する」ことが大切だとわかってきました。その背景には、たんぱく質と非常に関係の深い筋肉をつくるためのメカニズムが関係しています。

筋肉の分解と合成

合成(アナボリック)分解(カタボリック)

私たちの筋肉は、分解(カタボリック)と合成(アナボリック)を絶えず繰り返しています。分解(カタボリック)とは、身体を動かす「エネルギー」を作るために、もともとあった筋肉をエネルギーに変換すること。合成(アナボリック)とは、分解(カタボリック)で失われた筋肉を補うために、食事から補給したたんぱく質を筋肉として再合成することです。
まず、人間の体は一定期間内に食事から充分なエネルギーやたんぱく質を摂取できていないと、筋肉の分解(カタボリック)が進んでしまい、筋肉量が減少してしまいます。

では逆に、筋肉の合成(アナボリック)を促すにはどうすればいいのでしょうか。ポイントは、「筋肉を合成するためのスイッチ」を強く押すことです。筋合成のスイッチを入れるには、①「1度の食事でたんぱく質を20gほどまとめてとること」、そして②「消化吸収の速い、動物性のたんぱく質をとること」が大切だといわれています。

① 1度の食事で20gのたんぱく質をとろう

筋合成のスイッチを押すには、「1食につき20g以上のたんぱく質を摂取する」必要があります。朝食・昼食・夕食で各20gほどのたんぱく質を摂取できるようにしましょう。
たんぱく質を摂取する上で、特に注意したいのが「朝食」です。夕食から次の朝食までには10時間以上の絶食状態が続くため、筋肉の分解(カタボリック)が進行します。朝食では、失った分の筋肉を合成(アナボリック)するために、意識的にたんぱく質を摂取する必要があります。

筋肉の合成・分解モードと食事の関係

合成(アナボリック)モード:食事をするとアミノ酸が筋肉に運ばれ、筋肉を合成する。分解(カタボリック)モード:たんぱく質が分解・燃焼されてエネルギーに返還される。朝食、昼食、夕食を境にして、合成モードと分解モードが繰り返される。夕食から次の朝食まで食事を取らないと筋肉は分解モードに。

図:藤田聡教授による

② 消化吸収の早い、動物性のたんぱく質をとろう

食事から摂取したたんぱく質は、体内でアミノ酸に分解されたあと、血液中から全身へと行き渡ります。その際、血中のアミノ酸濃度が上昇し、もう1つの筋合成のスイッチとなります。肉や魚、卵や乳製品に含まれる「動物性たんぱく質」は、大豆や穀物に含まれる「植物性たんぱく質」に比べて消化吸収のスピードが早いといわれています。血中のアミノ酸濃度は消化吸収のスピードに応じて上昇するため、「消化吸収の早いたんぱく質ほど、効率的に筋合成のスイッチを押せる」というわけです。
また筋合成のスイッチが入りやすい理由として、動物性たんぱく質に「必須アミノ酸」がより多く含まれている点も重要です。なかでも、乳製品などに含まれる「ロイシン」が重要な役割を果たすといわれています。

朝昼晩の食事で20g以上とるコツは?

1回の食事で20g以上のたんぱく質を摂取するのは大変です。1食20g以上食べるコツは、「朝は卵料理」「昼は魚料理」「夜は肉料理」など、毎食のメインをたんぱく質のおかずにすること。「今日の食事はたんぱく質が少なそうだな」という時は、納豆や冷奴などの小鉢、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、肉や魚を素材としたプラスの1品を組み合わせる「+1たんぱく質」を意識してみましょう。
また、以下のリンクにはたんぱく質が取れるメニューもご紹介しています。ぜひ普段の献立づくりにお役立てください。

「+1たんぱく質」におすすめの商品

たんぱく質 12.7g(100gあたり)
たんぱく質 9.0g(1パック)
たんぱく質 8.0g(80g/1個あたり)

たんぱく質はどんな食品に含まれている?

効率良くたんぱく質を摂取するために、「よく食べている食品に含まれるたんぱく質の量」を知りましょう。例えば、卵は12.3g、鶏肉(ささみ)は23.9g、豚肉(ヒレ)は22.2g、牛肉(モモ)は19.2g、マグロの赤身は26.4gのたんぱく質量があります(それぞれg/100g)。

主な食材のたんぱく質の量

主な肉、魚 100gあたりのたんぱく質量。お肉や魚の分量は片手の手のひらにのるくらいの大きさでおよそ100gです。鶏肉:ささみ23.9g、むね(皮なし)23.3g、もも(皮なし)19.0g。豚肉:ヒレ22.2g、もも20.5g、レバー20.4g。牛肉:もも19.2g、ヒレ19.1g、ひき肉17.1g。魚:鮭26.4g、マグロ赤身26.4g、かつお(春獲り)26.4g。植物性たんぱく質:ゆで枝豆1皿あたり約11.5g、ゆでブロッコリー1皿あたり約5.4g、豆腐1パックあたり約8.0g、納豆1パックあたり約8.4g。乳・卵たんぱく質:ゆで卵1個あたり約6~8g、プロセスチーズ1缶あたり約3.4g、ヨーグルト1カップあたり約2.7g。加工食品:ロースハム2枚で約7.2g、ツナ缶(ノンオイル)1缶あたり約12.8g、かに風味かまぼこ4本で約7.2g、ウインナー3本で約7.2g、さば缶(水煮)1缶あたり約7.2g。

※文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補(2023年)を元に作成

お肉とお魚は、手のひらをはかりの代わりにする「手ばかり」が便利です。カット済み・調理済みのお肉やお魚は、手のひらと同じサイズで大体100g。お肉やお魚には、100gあたり20g程度のたんぱく質が含まれていることが多いので、「手のひらサイズのお肉やお魚のたんぱく質量=20g」と覚えておくとよいでしょう。

たんぱく質はどれだけ食べても大丈夫?

ここまで読んできて、「たんぱく質はとればとるほど身体に良いの?」と思った方もいるのではないでしょうか。たんぱく質は成長や日々の健康維持に欠かせない栄養素ではありますが、とりすぎもおすすめできません。日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、たんぱく質の目標量の上限は、「1日のエネルギー摂取量の20%」ということです

たんぱく質を過剰摂取することで、どんなリスクがあるのでしょうか。1つは「肥満」の原因になること。たんぱく質が多い食品は、その分脂質も豊富。食べ過ぎた分だけ、脂肪も増えてしまいます。2つ目は、「腸内環境の悪化」。たんぱく質の摂取が増えてビタミンやミネラルが不足すると、腸内環境が崩れて、便秘になったり、免疫力が低下してしまったりする可能性があります。

1歳以上の全年齢区分において。

「朝のたんぱく質」で、心を健康に

朝食のたんぱく質不足は、メンタル面にも影響を及ぼします。たんぱく質が不足していると、やる気を促す「ドーパミン」や、精神の安定を促す「セロトニン」の分泌量が減少し、集中力が途切れやすくなったり、作業効率が下がったりといった弊害が出てきます。
欧州の研究で、「高炭水化物・低たんぱく質の朝食をとっている人」と「低炭水化物・高たんぱく質の朝食をとっている人」を比較したところ、高炭水化物・低たんぱく質の朝食をとっている人ほど「イライラしやすく攻撃性が高い」という結果が出たそうです。忙しい朝こそ朝食をとって、心身ともに元気なスタートを切りましょう。

Proc Natl Aced Sci USA.:114.25,6510-6514.Jun 20,2017

女性の心身をサポートするたんぱく質

たんぱく質と聞いて、男性やアスリートを連想する人も多いと思います。けれど、たんぱく質は女性にとっても大切な栄養素。むしろ女性こそ、たんぱく質をとって筋肉量を維持する必要があるんです。そもそも女性は男性よりも筋肉量が少ないため、基礎代謝が低い傾向にあります。基礎代謝が低いと血液の循環が悪くなり、冷えやむくみ、肩こりや腰痛の原因になってしまいます。

特に注意してほしいのが、妊娠中の女性。妊娠中の女性は、そうでない女性に比べてたんぱく質を多めにとることが推奨されています。妊娠中の女性のたんぱく質が不足していると、お腹の赤ちゃんが「低栄養」の状態になってしまい、2500g以下の低出生体重児として生まれるなどのリスクが高まるからです。
また、母乳には、赤ちゃんの成長に必要なたんぱく質である「ホエイ」と「カゼイン」が豊富に含まれています。授乳中のお母さんに必要な栄養素といえば「葉酸」や「鉄」が有名ですが、たんぱく質も大切な栄養素なのです。

「女性のカラダと栄養基礎講座」. 日経ヘルス 2019年8月号, P.86-P.87
監修

立命館大学 スポーツ健康科学部・研究科 藤田聡(ふじた・さとし)教授

2002年南カリフォルニア大学大学院博士号修了。博士(運動生理学)。2006年テキサス大学医学部内科講師、2007年東京大学大学院新領域創成科学研究科特任助教を経て、2009年より立命館大学。米国生理学会(APS)や米国栄養学会(ASN)より学会賞を受賞。監修本に『間違いだらけのたんぱく質の摂り方』、共著に『体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学』など。2021年に長年の研究に基づき企業の健康経営をサポートする(株)OnMotionを設立。

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