5 作る責任
「JA全農×日本ハム共創プロジェクト」がスタート

共に実現する「日本の食の未来」

国内畜産業が抱える様々な社会的課題を解決するため、2024年7月に包括的な事業連携を発表した日本ハムとJA全農。まずは日本ハムの井川伸久代表取締役社長と全国農業協同組合連合会(JA全農)の齊藤良樹代表理事専務が、共創を通じて実現したい「日本の食の未来」について語り合います。後半では、日本ハムとJA全農双方から6名の若手社員が参加。井川社長と齊藤専務からの問いかけに答え、未来の理想の食卓とその実現に向けた取り組みについて、意見を交わしました。

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PART1:対談 日本ハム・井川伸久代表取締役社長×JA全農・齊藤良樹代表理事専務

「国内畜産業の持続的発展」を共に目指して

——「JA全農×日本ハム共創プロジェクト」がスタートして1年。事業連携を進めた背景について教えてください。

井川伸久社長(以下、井川):人類が必要とするたんぱく質の量が生産量を上回る「たんぱく質クライシス」や、温室効果ガス(GHG)排出による気候変動、人手不足に伴う物流問題など、私たちの「食」を取り巻く社会的課題は多岐にわたります。こうした課題の解決に連携して取り組み、たんぱく質の新たな価値をステークホルダーと「共創」する試みとして、プロジェクトを始動しました。

JA全農は、生産資材の供給から農畜産物の販売に至る、まさに「川上から川下まで」を網羅されています。当社も食肉の加工や販売を手がけるメーカーであると同時に、牛・豚・鶏の自社農場を持つ生産者でもあります。こうした双方の経営資源やノウハウを最大限に活用し、共に日本の第一次産業を支えていきたいと考えています。「国内畜産業の持続可能性の追求」が、今回の共創プロジェクトのテーマの一つ。ほかにも、「次世代畜産業モデルの確立」「畜産たんぱく質の安定供給」「両者事業の共創」と全部で4つの目標を掲げ、項目ごとに分科会を設けて議論を進めています。

齊藤良樹専務(以下、齊藤):国内食肉加工業界のトップ企業である日本ハムと、日本の農畜産業を支えるJA全農がタッグを組み、それぞれの知識や経験を共有することで、さまざまな課題に対応できるのではないかと思います。事業連携することで、4つの目標に「より早く、より遠く」まで、到達できると期待しています。JA全農は、バリューチェーン全体の中でも、産地や原料素材等の「生産者側」に強みを持ち、日本ハムは商品開発力やマーケティング力など、「消費者側」に強みがあると認識しています。両者の強みを掛け合わせることで、新たな食の方向性を打ち出し、国産農畜産物の国内需要喚起や輸出拡大などにより大きな力を発揮できるのではないでしょうか。

2024年7月9日、全国農業協同組合連合会(JA全農)と持続可能な国内畜産業の追求を目的に事業連携に関する協定書を締結
(左から、前田文男取締役専務執行役員、井川伸久社長、桑田義文JA全農代表理事専務、齊藤良樹JA全農常務理事)*当時

人手不足や物流問題の解決にAIなどの最新技術を活用

——畜産の現場が直面する課題について、どのように見ていますか。

齊藤:養牛、養豚、養鶏のすべてに共通する課題は、生産コストの上昇と人手不足です。さらに畜産業は、猛暑などの異常気象による生産性の低下や、家畜疾病のリスクにもさらされています。

井川:農業従事者が年々減少し、高齢化が進んでいることも問題です。現場の労働環境改善や生産性向上といった課題に対し、当社では人工知能(AI)を活用した養豚支援システム「PIG LABO®(ピッグラボ)」を開発しました。作業員にとって負担の大きい豚の体重測定や、経験が必要とされる豚の発情検知などにAIを活用することで、効率的な飼育サポートに加えて、アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮することができます。

齊藤:JA全農の研究所でも、PIG LABO®の実証試験が始まりました。流通面では、食肉センターの老朽化、建設コストの上昇、物流など、インフラの維持や更新が大きな課題です。すでにJA全農グループの工場を活用した日本ハム製品の製造を実施しています。今後は、共同配送などの試験的な導入に向けて協議を進めてまいります。

井川:畜産業界が抱える様々な課題を解決するには、もはや一企業の「自前主義」だけでは成り立たない時代です。「持続可能な国内畜産業」を目指し、業界全体の課題解決とたんぱく質の安定供給に、連携して取り組んでいきたいと思っています。

日本の未来に届けたい 豊かな食卓と「食べる喜び」

——「日本の食の未来」はこれからどのように変わっていくのでしょう。

齊藤:これまで、私たちの食卓は本当に恵まれていたことを実感しています。一方で、この状態が5年後、10年後も続くのかは不透明だと言わざるを得ません。今、まさに「日本の豊かな食卓」が守られるかどうかの岐路に立っていると感じています。コストにも配慮しつつ、国産農畜産物の価値を高め、安心・安全・納得を消費者の皆さまに届けていくために共創プロジェクトを推進していきたいと思っています。四季折々の旬を味わえる豊かな食卓を未来へつないでいく——それが私たちの使命だと考えています。

井川:日本ハムは創業以来、「食べる喜び」を企業理念としてきました。戦後の食料不足から高度経済成長を経て、私たちは美味しさや食の豊かさを追求する喜びを知り、「食べる喜び」の意味も時代と共に変化してきました。生活スタイルや食のシーン、消費者のニーズが多様化する中、家族や仲間と食卓を楽しく囲む、コミュニケーションとしての「食べる喜び」を大切にしている人も多いのではないでしょうか。様々な形の「食べる喜び」を皆さまにお届けし、日本の食の未来がサステナブルであるよう取り組むことが私たちの役割だと思っています。

PART2:座談会 日本ハム・井川伸久氏×JA全農・齊藤良樹氏×若手社員6名

左から、
〇日本ハム 井川伸久代表取締役社長
●日本ハム 加工事業本部 営業統括事業部 量販開発営業部 広域量販二課 リーダー 伯井里帆(はくい・りほ)さん/入社7年目
●日本ハム 食肉事業本部 国内食肉第一事業部 国内ポーク部 国内ポーク課 岩崎佑紀(いわさき・ゆうき)さん/入社4年目
●日本ハム 中央研究所 大久保一実(おおくぼ・ひとみ)さん/入社2年目

左から
●JA全農 畜産総合対策部 畜産販売課 藤井理香子(ふじい・りかこ)さん/入会7年目
●JA全農 耕種資材部 包装資材課 包装設計・環境対策室 古屋拓真(ふるや・たくま)さん/入会7年目
●JA全農 法務・リスク管理統括部 松井文香(まつい・あやか)さん/入会4年目
〇JA全農 齊藤良樹代表理事専務

5年後、10年後に思い描く「理想の食卓」

——ここからは次世代を担う日本ハムとJA全農の若手社員6名の声も交えて、聞いていきます。皆さんが今、思い描く「5年後・10年後の理想の食卓」とはどのようなものでしょう。

伯井里帆さん(以下、伯井):「食」を通して、人と人、そして人と地域がつながることができる、そんな食卓が理想です。最近は食事にも「コスパ」や「タイパ」を重視するという声をよく聞きます。そうしたニーズに応えることももちろん必要だと思うのですが、個人的には食事には社会的・情緒的な価値も大切にしたいと思っています。

岩崎佑紀さん(以下、岩崎):私は食物アレルギーを持っているため、普段から食生活には気をつけていますが、負担に感じることもあります。誰もがアレルギーを気にせずに好きなものを食べられる未来になればうれしいですね。

大久保一実さん(以下、大久保):私は、「食べたいものがいつでも食べられる」環境が未来でも続いてほしいと思います。近ごろの物価の高騰などを見ていると、「普段毎日食べている食材が当たり前のように手に入る」ことが、難しくなりつつあることを実感しています。

松井文香さん(以下、松井):私が思い描くのは、国産食材や地元の食材を使用した料理が並ぶ食卓です。子どものころから、地元の食材を使った料理をよく食べてきました。その経験から、地域の食材を日常の食卓に取り入れることは地方の活性化にもつながると思います。「国消国産」や「地産地消」がもっと当たり前になってほしいですね。

古屋拓真さん(以下、古屋):5年後、10年後も安心・安全な国産の農畜産物が食べられる食卓が理想です。日本の食べ物は味も品質も世界トップクラスで、生産者のこだわりが詰まっています。クオリティーの高い国産農畜産物の恵みを次の世代にもつなげていきたいと思っています。

藤井理香子さん(以下、藤井):食べることが大好きで、皆で会話をしながら囲む食事の時間を大切にしています。生産者が丹精込めて育てた国産農畜産物を、家族や友人と一緒に「いただきます」と感謝しながら味わう、そんなあたたかい食卓の風景がこれからも続いてほしいと思います。

未来の「食べる喜び」はどう変わる?

井川:日々、「食」の現場の最前線で活躍されている皆さんですが、未来の「食べる喜び」はどのようになっていると思いますか?

伯井:自分だけでなく、一緒に食卓を囲む家族や仲間の「食べる喜び」も大事にしたいと常日ごろから感じています。これからはみんなで「共に食べる喜び」を分かち合える空間づくりも重要になってくるのではないかと思います。

岩崎:確かに、家族や仲間と共に囲む食卓の楽しさは、これからも変わらず続いてほしいですね。食物アレルギーへの対応など、健康に不安や悩みを持つ人でも安心して食べられる食品の開発にも期待しています。

大久保:アレルゲンを取り除いた食品は、世界的にも研究開発が進められています。おいしいものは人を自然に笑顔にしたり、元気にしたりする力があると思うので、将来はさらに研究が進んで、「食べると幸福感が増す、リラックスできる」といった付加価値のある「未来の食」が実現するといいなと思います。

「理想の食卓」の実現にどう取り組むか

齊藤:皆さんが考える、5年後、10年後の「理想の食卓」を実現するためには、これからどんなことに取り組んでいきたいですか?

古屋:生産年齢人口の減少などを背景に、農業に携わる人の数が年々少なくなっています。第一次産業の担い手を増やすには、収入や労働環境を改善する必要があると考えています。私は、生産資材の部署に所属していて、資材コストが上がっても、農畜産物の販売価格に反映することが難しい状況を目にします。価格転嫁の仕組みづくりや、コスト上昇をきちんと反映できる市場環境を整えることが重要だと感じています。

大久保:古屋さんと同じく、農畜産業で働く人が減っていることに危機感を持っています。私は養豚支援システム「PIG LABO®」の開発を担当していますが、今後はAIや、モノ同士をネットでつなぐIoTなどの技術を活用して、生産の効率化や省資源化に対するサポートをしていきたいです。また、気候変動の原因のひとつとされる畜産飼料の生産や牛が出すメタンガスといった環境課題にも、中央研究所のメンバーとして取り組みたいと思っています。

藤井:私は、国産の農畜産物の素晴らしさを、消費者に伝えていくことにもっと力を注いでいきたいです。例えば、日本の宝ともいえる「和牛」ですが、物価高の影響で節約志向が広がり、最近は消費が伸び悩んでいます。そこで、消費拡大キャンペーンを積極的に展開して、改めて和牛の美味しさに目を向けてもらうよう取り組んでいます。今年は8月29日の「焼き肉の日」に、エスコンフィールドHOKKAIDOにて、「JA全農×日本ハムプレゼンツ 一球牛魂!和牛ナイター(以下、「和牛ナイター」)というイベントを開催しました。これからも皆さんに楽しんでもらえるよう工夫しながら、和牛の魅力を発信していきます。

2025年8月29日の「焼き肉の日」にエスコンフィールドHOKKAIDOで開催した和牛ナイター。球場でJA全農の取り組みを展示した

「未来の食」に求められるもの

齊藤:「食に求められるもの」はこれからどのように変わっていくと思いますか?

大久保:私は「楽しみとしての食」と「効率を求める食」の二極化が進んでいくのはないかと考えています。例えば、旅先で出合う地方の美味しいものや特産物、記念日などの特別な日の食事が「楽しみとしての食」です。一方で、一食で必要な栄養素がすべて摂れる完全栄養食品や、個人の健康状態や好みに合わせたパーソナライズフードなど、「効率的に栄養を摂れる食」の市場も拡大していくのではないかと予測しています。

伯井:学生時代を振り返ると、当時流行していた「映えグルメ」を楽しんでいました。でも社会人になってからは、見た目や美味しさだけではなく、栄養バランスや食事の摂り方も意識するようになりました。必要なたんぱく質の量や効果的な摂り方への消費者の関心は年々高まっていると感じます。

藤井:普段の生活にプロテインなどを摂り入れて、足りないたんぱく質を補っている人も増えていますよね。私自身も必要な栄養素はより効率的に摂りたい派です。

古屋:皆さんが指摘する健康や栄養面に加えて、企業の「環境への取り組み」に対する注目度も高まっていると感じます。環境に配慮した包装資材を使って付加価値を付けるといった工夫もこれからは大事になってくると思います。

岩崎:「環境への取り組みが商品の付加価値を上げる」という意見に同感です。私は豚肉の営業をしているのですが、最近ではアニマルウェルフェアへの対応について聞かれることが増えました。日本ハムでは、飼育する豚のストレスを減らすため、「PIG LABO®」を開発したり、妊娠中の母豚の動きを制限する“妊娠ストール”を廃止したりといった取り組みを進めています。動物、人、そして環境に配慮した様々な取り組みが、これからますます消費者から求められるのではないでしょうか。

「食」を通して社会とつながる

齊藤:日本では単独世帯、いわゆる一人暮らし世帯の割合が増えていて、2050年には44.3%と全世帯の半数近くになると予測されています。孤食化が進む中で、「誰かと一緒に食卓を囲む」機会をどう増やせばいいのか。なにかいいアイデアはありますか?

大久保:物理的に遠く離れていても、同じ時間を過ごせるような技術が取り入れられるといいなと思っています。将来は、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を活用した食のシーンが生まれてくるのではないでしょうか。日本だけでなく、例えば海外の方とつながって一緒に食を楽しめるようになるかもしれません。

伯井:海外といえば、最近アメリカに旅行した際にスポーツ観戦をしたのですが、観客の皆さんがすごく盛り上がっていて、スタジアムで食事も大いに楽しんでいたのが印象的でした。スポーツ観戦やライブなど、イベントの場でのエキサイティングな食体験がもっと増やせるといいですよね。

井川:皆で盛り上がれる「食×スポーツ」も、日本ハムの大きなテーマの一つです。どのように展開すればもっと楽しんでもらえるか、若い世代を代表して意見を聞かせてもらえますか。

松井:先日、職場のメンバーで野球観戦に行ったのですが、普段あまり業務で関わることのない先輩や同僚とも話が弾みました。球場という非日常の空間の力も相まって、仲間と一緒に食べるフードがすごく美味しく感じました。

古屋:イベントの場で誰かと食を共にした体験は記憶に残りますよね。8月29日に開催された「和牛ナイター」に私も参加したのですが、観客の熱気を直に感じながらいただく和牛は一層おいしかったです。例えば、選手とファンが同じものを食べられるようなイベントがあったら、かなり心に残る食体験になるのではと思います。

「食べる喜び」を感じる瞬間は?

松井:井川社長と齊藤専務はどのようなシーンで「食べる喜び」を感じられますか。

井川:商談を無事締結した後の会食はすごく喜びに満ちていますね(笑)。私は今単身赴任中なので、家族全員が集まって食事をするときに一番「食べる喜び」を感じているかもしれません。他にも、地方で「その土地ならでは」の美味しいものに出合ったときの驚きや喜びも格別です。食事は、誰と食べるのか、どんな雰囲気の中で食べるのかという要素も重要だと思います。

齊藤:やはり、一人で食べるよりも皆でワイワイと会話しながら食べたほうが美味しく感じられますよね。一緒にテーブルを囲むだけで、皆と心がつながります。今日は、未来を担う若手社員の皆さんと意見交換ができて本当にうれしく思いました。

生産資材の高騰をはじめ、酷暑や水不足、集中豪雨などの異常気象の影響もあり、日本の農畜産物の生産コストは高止まりの状況が続いています。先行きに不安を抱える生産者の方も少なくありません。農畜産業を取り巻く課題は山積みですが、日本ハムとJA全農が共創をさらに進化させることで、日本の食の未来をしっかり描けるよう、共に頑張っていきたいと思います。

井川:今日は、若い世代の皆さんの意見を聞いて、食のシーンで皆さんが大切にしていることは、我々の世代と変わらないのだなと感じました。それと同時に、食に携わる企業や組織の一員としての展望や仕事への熱意をうかがえて、非常に頼もしく感じました。JA全農と事業連携をスタートして1年。日本の第一次産業を支えるパートナーとして共に歩みを進め、これからもお客様によりよい商品を提供していきたいと思います。

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