1 作る・届ける
たんぱく質の安定供給を支える「影の主役」物流システム①

進化した物流システムの現在、そして未来

ニッポンハムグループでは、安全で安定した品質の食肉や加工品をお客様のもとへお届けするために、独自の物流システムを構築・展開しています。この物流システムは、たんぱく質の安定供給を支える「影の主役」と言える大切な存在なのです。今回はグループの物流の今を3回にわたってレポート。第1回でニッポンハムグループの物流の概要と物流の業界全体が抱える課題の解決の取り組みについて解説します。

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日本人のたんぱく質摂取量の約6%を供給し、食肉販売量は日本国内の約20%を占めるニッポンハムグループ。多くの商品を安定した品質で安全に、そしてスピーディに提供するため、独自の製造・供給システムを展開しているのが特徴です。それが、生産・飼育から製造・販売まで自社グループで一貫して行い、さらには全国の店舗まで配送するという「バーティカル・インテグレーション・システム」と呼ばれる体制です。

日本ハムグループの「バーティカル・インテグレーション・システム」

この体制のもとで、商品をお客様の元に届ける物流の仕組みがどのように構築・運営されているのでしょうか。また、トラックドライバーの労働規制を発端に「モノを運ぶ人がいなくなる」と危惧された2024年問題の解決にどのような取り組みがなされているのでしょうか。ニッポンハムグループの物流の現状とこれからの取り組みについて紹介します。

日本ハムの取り扱い重量データおよび外部データをもとに同社にて推計

モノの流れは大きく2つ

一口に「ニッポンハムグループの物流」と言っても、実際には2つの独立した物流システムが展開されています。その理由は、“冷凍”と“パーシャル”、“冷蔵”の3つの温度帯があるからです。
「日本ハムは社名からもハム・ソーセージの会社を想起しがちですが、実は『食肉事業』と『加工事業』とに大きく分かれています」と日本ハム グループ戦略事業部 グループ戦略推進室の森洋介マネージャー。食肉事業では、鮮度の求められる生肉商品を“パーシャル温度帯”、品質を長期間保持するための冷凍商品を“冷凍温度帯”で保管・輸送する必要があります。一方、加工事業では「シャウエッセンⓇ」に代表されるソーセージや、チルドピザの「石窯工房Ⓡ」などを“冷蔵”した状態で運びます。また、輸送する商品の保存温度帯や管理方法の違いだけでなく、商品をお届けする顧客の要望にお応えする中で、流通方法自体が全く異なるそれぞれの事業ごとに最適な流通網を整備する必要がありました。

それでは具体的に、食肉事業と加工品事業における物流の仕組みはそれぞれどのようになっているのでしょうか?それを記したのが、下の2つの図です。

食肉事業の物流の仕組み

まず食肉事業を見てみましょう。国内のグループ農場で生産、処理・加工された牛・豚・鶏肉、また海外のグループ会社等から輸入された食肉などは、主に東日本エリアの川崎市、西日本エリアの西宮市、大阪市の3つの拠点にある「日本物流センター」に集約して保管されます。
中でも川崎センターは「単体として日本で最大の食肉保管量を誇る巨大な冷凍・冷蔵庫」となっており、この倉庫を中心として西日本エリア2拠点のセンターと共に多種多様な食肉などを一括管理しています。さらに集まった食肉商品を1箱単位でバーコード管理できるようにすることで、顧客からの要望に応じて、どの商品を、いつまでに、どのようなルートでお届けするかを輸送会社に明確に指示できるようシステム化しています。いわば食肉商品を全国に届けるための司令塔の役割を担い、日本のたんぱく質供給が滞りなく行えるような体制を構築しています。
そして、それら食肉商品を輸送するのが、同じくニッポンハムグループ企業である「日本チルド物流」です。同社は全国7つの事業所を中心として、国内の生産、処理・加工の現場や日本物流センターの倉庫から、全国120か所に営業拠点のある日本フードグループ(東日本フード、関東日本フード、中日本フード、西日本フード)等の事業所や顧客への直送を担い、安全・安心な食肉商品を全国の食卓までお届けする重要な業務の一端を担っています。

全国の店舗まで安定的に「加工品」を配送

一方、加工品の物流を担うのは、同じくニッポンハムグループの倉庫会社「日本デイリーネット」と運送会社「日本ルートサービス」の2社です。

加工食品事業の物流の仕組み

工場で製造された加工品は、全国に13ある日本デイリーネットの物流倉庫に搬入され保管・管理されます。倉庫で仕分けが行われた加工品を配送するのは、日本ルートサービスの役目。物流センターから本州を中心に日本各地のスーパーや量販店など小売販売店へ加工品を届ける「支線配送」を主に手がけます。
賞味期限が比較的短く、多品種の商品を扱う加工品の物流の場合、商品を保管して運ぶ機能のほかにある2つの機能が重要になります。1つは、無駄な在庫を減らし、商品の回転をスムーズにするための在庫調整機能。ニッポンハムグループの営業担当者から集約された小売店からの注文情報を集約して、13ある各倉庫の在庫を調整したり、その需要情報を製造側に伝えて生産量の調整を行うといった、グループ全体で販売情報を共有する機能です。
そしてもう1つは「複数の商品を店舗ごとに1つの箱に詰め替えて発送するなど、小売店の多様な要望に合わせた “仕分け”作業」です。これら仕分け作業は、一部は機械化されているものの、小売店からの要求が多岐にわたるため、基本的には人の手で行うことになります。10℃以下で温度管理された巨大な低温倉庫の中で行われる大変な作業となるのです。

低温倉庫の中で商品の仕分けやラベル貼りなどの作業が行われる

鮮度が求められ、商品の特性別に2種類の保存温度帯が求められる食肉の保管。かたやスピーディーに在庫を回転させつつ、顧客ごとにきめ細やかな配送形態に対応しなければならない加工品の保管。実際にこの2つの保管方法を比べてみると、その機能の違いがよく分かります。
国内の食肉消費量に対応すべく、通路を最小限にして隙間なく天井付近にまで箱が積み上げられているのが、食肉の倉庫。商品の取り出しやすさを優先して通路が広く、冷蔵庫内でさまざまな仕分け作業が行えるように、広い作業用の空間が確保されているのが、加工品の倉庫です。

左の食肉の倉庫は保管が主な機能になるため、通路が狭く隙間なく荷物が納められている。
右の加工食品の倉庫は、商品の取り出しやすさが重要になるため空間がゆったりとしている

課題解決のため物流の環境改善に挑む

以上のような食肉・加工品の2つの物流システムにより、日本ハムでは品質の高い安全な商品を安定的かつスピーディに提供してきました。しかし今、日本ハムを含む業界全体の物流が深刻な課題に直面し、大きな転換期を迎えています。
2024年4月1日から働き方改革関連法がトラックのドライバーについても施行され、時間外・休日労働時間の上限が年間960時間とされました。また、ドライバーの年間の拘束時間も、最大3516時間から原則3300時間(最大3400時間)に削減されました。何も手を打たなければ大幅な輸送力不足が危惧される、いわゆる「2024年問題」です。

ドライバーを積み付け作業から解放

この問題の解決に向け、食肉事業や加工品事業それぞれで、ニッポンハムグループとしてさまざまな改革を続けています。
例えば食肉事業の物流に携わるドライバーの仕事は、単にトラックを運転するだけではありません。兼ねてからの商習慣では、商品の受け取り先で荷物を1ケースずつ手作業で積み込み、輸送した後に、届け先で1ケースごとに手卸しする作業もドライバーが担います。仮に10t車であれば、時間にして積込み2~3時間、荷卸し2~3時間、合計4~6時間もの時間が掛かる大作業となります。これら運転業務以外の作業は「附帯業務」と呼ばれますが、この附帯業務を削減できれば、作業に携わる時間を短縮でき、結果として先々で不足が心配される輸送能力への改善として「ドライバーが運転業務に専念する時間を増やす」ことができます。
そのような附帯業務を削減する取り組みの1つが「トラックへの積卸作業の見直し」です。トラックに荷物を積み込む際、これまでの様なドライバーではなく、出荷する冷蔵庫側で事前に届け先ごとに仕分けした状態でパレットと呼ばれる土台に商品を積み上げて梱包し、そのパレットごと一括してトラックへの積卸作業を行うことで、積卸時間を合計4~6時間から1時間程度にまで短縮でき、ドライバーの作業負担を大幅に削減することができます。
勿論、ニッポンハムグループの食肉事業でも、あらかじめ日本物流センターで配送先ごとに商品をパレットに積み付け、必要に応じて配送先に車両情報を伝達し、到着予定時刻に迅速に商品を受け取って貰えるようにすることで、ドライバーが配送業務に集中できるようなオペレーションに切り替えを行いました。

食肉商品の箱をパレットに積み込み、崩れないようにラップを巻き付けて梱包作業(左)。これまでトラックドライバーが行っていた積卸作業を、現在は倉庫のスタッフが行う。
行き先ごとに仕分けされ、パレットに積みつけられた荷物を倉庫のスタッフがトラックの荷台まで運ぶ(中)
ドライバーはパレットごとに運ばれた荷物を荷台の奥にしまい込むだけで積み込みが完了する(右)

日本ハム 食肉事業本部 食肉営業統括事業部 物流管理室の増田俊介マネージャー

パレットへの積み込みを倉庫側が行う。たったこれだけの作業のように見えますが、これまでの業界独自の商習慣を変えるのは決して簡単ではありませんでした。パレットへの荷物の積み込み方や、荷物を積み上げる順番、さらにはパレットから荷物がどれだけはみ出して大丈夫なのかなど、これまでドライバーが持っていた細かいノウハウを日本物流センター側に移管するために、日本チルド物流と綿密なコミュニケーションが欠かせなかったからです。
では、なぜその連携が今回はスピーディに実現できたのでしょうか。それは「運送の『日本チルド物流』も倉庫の『日本物流センター』も共にグループ会社だから」であり、「両社の責任者と現場担当者、さらにはニッポンハムグループの関係各所が一体となって取り組み、トライ&エラーを重ねながら尽力」することで実現できたのです。ニッポンハムグループとしてのこの取り組みは、物流業界にも話が広がり、「最近では様々な物流協力会社から『日本ハムグループの物流を担ってみたい』という言葉もいただいています」と増田マネージャーは言います。

商品を店頭に並べる附帯作業を辞める

加工品事業でも、同様にドライバーの附帯業務をなくす動きを進めてきました。働き方改革関連法案が施行される4カ月前の2023年12月1日、日本ハム、伊藤ハム米久ホールディングス、プリマハム、丸大食品のハムソーセージメーカー4社は「SDGsへの貢献と持続可能な物流のための食肉加工業界取組宣言」を発表しました。

2023年12月1日、「SDGsへの貢献と持続可能な物流のための食肉加工業界取組宣言」の発表会で並ぶ4社の代表者

取組宣言の中では、小売店など得意先での附帯業務を見直して配送ドライバーの負荷を軽減し、業界内外での物流の共同配送を推進するなどの目標が掲げられました。加工品の物流でも、古くからの商習慣で続けられてきたドライバーの附帯業務とはどのようなものだったのでしょうか。日本ハム 加工事業本部 営業統括事業部 物流管理室の小野理室長によれば「加工品の商品を店舗配送する際、昔からの商習慣で、ドライバーがお店の売り場に商品を持って行って並べていた」のだそう。

日本ハム 加工事業本部 営業統括事業部 物流管理室の小野理室長

ひと昔前までは、配送するドライバーが営業を兼ね「ルートセールス」という形で小売店などを回り、商品を置かせてもらっていました。そのような経緯もあり、ドライバーは運んできた商品を自らの手で店頭の陳列台に置く附帯作業をこなしてきたのです。「この作業は配る側と受け取る側の合意の上で行っていたのですが、今は時代が変わりました」(小野室長)。2023年12月、4社共同で「ドライバーは店舗の売り場に商品を並べるのを辞め、輸送に専念する」と宣言し、交渉を続けた結果、2024年3月31日までに店頭への商品の陳列作業をほぼ廃止することができました。「日本ハムだけで全国1000店以上の販売店と交渉し、文書も作成して受け入れてもらえたのは、共同宣言の中でも明確な成果だと思っています」(小野室長)。

業界全体で物流現場の環境改善に挑む

トラック・ドライバーに関する「2024年問題」は、物流業界に大きな課題を突きつけました。日本ハムは2023年の4社共同宣言だけでなく、チルド食品を取り扱う伊藤ハム米久ホールディングス、日清食品チルド、日清ヨーク、プリマハム、丸大食品、明治、森永乳業、雪印メグミルクの8社と共に、2024年10月7日、持続可能なチルド食品物流の実現を目指す「チルド物流研究会」を発足させました(2025年9月末時点で江崎グリコ㈱が参画し計10社で運営)。

2024年10月7日に「チルド物流研究会」発足の記者発表会

こうして2024年問題が直面する課題の解決に積極的に取り組んできたニッポンハムグループですが、2024年を乗り越えたからと言って物流の問題が解決されたわけではありません。2030年には輸送能力が34%不足すると言われており、さらなる流通の改革が欠かせません。そうした中でグループ一丸となって物流におけるルールやシステム、労働環境の改善を進めたニッポンハムグループの物流は、今、時代に合わせた進化を続けています。ここで紹介したほかにも、ニッポンハムグループの物流では、さまざまな物流の課題に対する取り組みがなされており、その具体的な事例は次回以降で紹介します。
第2回の記事では、ニッポンハムグループの物流の最前線である「物流センターの現場」を訪れ、冷凍・冷蔵された食肉の商品がいかにして倉庫で保管・管理され、日々大量の商品が集荷・出荷されているのか、現場でのレポートをお届けします。

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