国内食肉販売量の約5分の1を占める「食肉」物流の現場から
ニッポンハムグループは、豚肉、鶏肉を自社生産し、国内外から牛肉や羊肉などを調達し、皆様の食卓にお届けしています。その量は、日本国内の食肉流通量の約20%。特に国内では、生産飼育から製造販売まで自社グループで一貫して行う「バーティカル・インテグレーション・システム」によって、品質の高い安全な食肉を全国の販売店に提供しています。消費者のお手元にお肉が届くまで、現場ではどのような作業が行われ、食肉の安全と品質が守られているのでしょうか?その物流の要となる川崎市の物流センターを、今回はレポートします。
食肉保管量日本一の冷凍冷蔵倉庫の物流センター
神奈川県川崎市の日本物流センター
ニッポンハムグループの「日本物流センター」が神奈川県川崎市に有する物流センターは、首都高速道路の浮島ジャンクションの近く、JR川崎駅からバスでおよそ30分の場所にあります。
物流センターの敷地面積は約5万3000㎡で、5階建ての倉庫棟の建物面積は8万6000㎡と食肉物流拠点の冷凍・冷蔵倉庫として国内最大級の規模を誇ります。0℃~2℃以下の冷蔵保管庫が1階に3室、-18℃以下の冷凍保管庫が1階に6室、2階から5階の各階に10室で合計46室あり、-35℃の温度まで対応可能です。公称保管トン数は112,700トンで、1棟当たりの冷凍冷蔵倉庫としては日本一の保管量です。
日本物流センターは川崎の物流センターのほかにも、兵庫県西宮市と大阪府大阪市に物流センターを持っており、この3つの拠点を中心として日本全国に独自の物流網を整備。日本に暮らすあらゆる人にたんぱく質を届ける体制を確立してきました。その流通量は日本の食肉全体のおよそ2割にものぼります。
日本ハムの「食肉」の物流
物流センターの中をご紹介する前に、まずはニッポンハムグループの食肉物流の全体の流れを解説します。
ニッポンハムグループでは、食肉を主に2つのルートから調達しています。1つは、国内グループ会社や契約している畜産農家が生産・飼育し、主にグループ工場で処理・加工・冷凍、冷蔵された豚肉や鶏肉を中心とした国産の食肉。もう1つは、海外から輸入する冷凍、パーシャルの食肉です。世界中から集まる大量の食肉を、港に近い日本物流センターの3カ所の巨大倉庫にまず集約。そこから全国各地に送り出します。
これら3カ所の倉庫を経由する大量の食肉を輸送する、いわゆる「幹線輸送」業務を担うのが、同じくニッポンハムグループの「日本チルド物流」です。国内の処理工場から日本物流センターの倉庫に食肉を届けたり、3カ所の倉庫間の在庫移動をしたり。さらに「日本フードグループ」と呼ばれる営業とラストワンマイル配送を担う販売会社に配送する役目を果たします。
日本フードグループは、全国各地に食肉を届けるための「中継役」となる営業倉庫を管理し、販売店に直接食肉を届ける役割を負っています。東日本フード、関東日本フード、中日本フード、西日本フードと呼ばれる4つの地域の販売会社があり、各会社が地元の物流企業と協力しながら全国津々浦々に食肉をお届けしています。
ではその食肉物流の要となる物流センターでは、どのような作業が行われているのでしょうか。
物流センターで行われる作業の大まかな流れとしては、トラックからの「積卸作業」、受け取った商品の「入荷・検品」、冷蔵庫や冷凍庫への「入庫」、適切な温度帯の倉庫内での「保管」、受注に合わせた「出庫」、配達先ごとにまとめる「仕分作業」、配送前の商品の「出荷検品」、トラックへの「積込作業」となっています。
それぞれの行程をより詳しく解説したのが、下の表です。
入庫まで
1階の荷捌き場。奥に見える白いバースはトラックが接車すると開かれる
【国産食肉の場合】
国内グループ会社や日本各地の契約農家が生産・飼育し、処理・加工された国内産の食肉は、ニッポンハムグループの「日本チルド物流」によって物流センターまで運ばれてきます。荷物の積み卸し専用スペース「バース」にトラックを接車し、食肉を荷台から物流センターの「荷捌き場」へと下ろします。バースの数は川崎の物流センターだけで、入庫・出庫合わせて60機。なお「荷捌き場」は荷物となる食肉の品質を損なわないよう0℃近くに保たれています。
物流センターの2階にある動物検疫所
【輸入食肉の場合】
日本ハムは、北米、南米、オーストラリア、ヨーロッパ、アジアを中心とした様々な国や地域から食肉を調達しています。輸入された食肉は、コンテナ専用トラックで港湾から運ばれ、日本物流センターの荷捌き場の中でも特別な「保税蔵置場*」に着荷されます。同場内の動物検疫所で検疫した後は、国内食肉と同様に保管スペースへ入庫されます。
保管
荷捌き場から上がってきた国内の食肉と、動検をパスした輸入の食肉は、荷物の土台となる「パレット」に乗せられ、そのパレットごとに倉庫内の位置情報が記録され、保管されます。荷物を移動させるたびに、荷物に付けられたバーコード情報を職員が読み取るため、どの荷物が今どこにあるのかという情報が事務所にいてもリアルタイムで分かるのだそう。
その後、食肉の荷物を載せたパレットはフォークリフトで扉の奥に広がるパーシャル庫と冷凍庫へと運ばれ、指定された棚に保管されます。
フォークリフトには荷物を管理するための端末が装備されている
作業員は庫内のどの棚に何を入庫し、どの棚から何を出庫するか端末を使って確認・管理する
荷捌き場と冷凍庫の間の扉
冷凍庫の中は常時-18℃以下に維持され、保管される商品が整然と並べられている
出庫
その商品グループの届け先がどこなのかが書かれた「看板」
出荷指示が入ると、パレットを保管庫から出庫し、パレットに配送先が書かれた「看板」と呼ばれる紙を貼り、1階の荷捌き場へ下ろす。
1階に下りて来た食肉は、看板の指示に従って、それぞれの届け先のトラックが発着するバースへと運ばれる。
日本物流センター 東京事務所 業務部 量販業務課の棚田誠課長
この倉庫の現場指揮を執る日本物流センター 東京事務所 業務部 量販業務課の棚田誠課長によれば、川崎の物流センターでは「食肉が1日およそ1000トン入荷され、1000トン出荷される」のだとか。そのうちの「3割から4割が国産、残りの6、7割が輸入の食肉」になるそうです。「食肉は数日から、長い時では2か月ほど管理されます」(棚田課長)
また近年、取引先から需要が増しているのが、届いたらすぐ調理できるよう「高周波解凍機」によって適温まで解凍するサービスです。「たとえば焼き鳥用の鶏肉はガチガチに冷凍されたままだとすぐには使えません。この倉庫にある解凍機なら30分ほど高周波をかけて中まで均質に解凍できます。小売店やレストランは商品が届いてすぐに調理が出来るようになりました」(棚田課長)。
冷凍食肉を調理しやすい状態にする高周波解凍機
輸送でも進む物流危機への対応
解凍サービスのような付加価値向上の取り組みとともに、ニッポンハムグループがここ数年にわたって力を入れてきたのが、いわゆる2024年問題を発端とする物流危機への対応でした。
前回紹介した、荷物をパレットに積み込む作業をドライバーから倉庫側に移管し、積み荷にかかる時間短縮とドライバーの作業負担を減らした試みもその1つ。同時に「ドライバーの法的な拘束時間と負担の低減のため、これまでの輸送ルートを抜本的に見直しました」と、配送を担当する日本チルド物流の東日本事業部 東京事務所の中純平所長は配車改革について説明します。「ドライバーへの負担を軽減しながらもスムーズな荷物の輸送を可能にする配車計画を模索しました」
日本チルド物流は、神奈川県川崎市の日本物流センターに併設された「東京事業所」、兵庫県西宮市の日本物流センターに併設された「関西事業所」のほか、北海道から九州まで計7か所の事業所を活用して、110台(2025年3月31日現在)の冷蔵冷凍車で、日本全国にニッポンハムグループの食肉を配送しています。
東日本事業部 東京事務所の中純平所長
まず見直したのが、拠点間での中継輸送の強化です。「例えば周辺地域に産地や加工場がある九州から東北に国内産の食肉を運ぶ場合、過去には九州から川崎のセンターまで輸送して、そこから東北に送っていました」。現在はドライバーの拘束時間が制限されたので、南九州事業所から関西事業所まで送り、そこからさらに東京事業所を経由して東北まで運ぶというように路線の細分化で対応しました。
さらには九州から関西までの中継輸送についても、これまでとは大きく考え方を変えた対応を取っています。「以前なら南九州事業所(宮崎県)から出発して関西事業所(兵庫県)まで運ぶ際、山口、広島、岡山の数カ所に運ぶ荷があれば、途中で各所に寄り、荷を卸していました。ただ途中立ち寄りの結果、ドライバーの拘束時間が大幅に伸びてしまうケースが出てきたのです。そこで、現在は途中で広島にあるパートナー会社の拠点に寄り、山口、広島、岡山で卸す荷を引き継いでもらい、関西に直行するよう配車計画を見直しています。
さらにこれまで陸路だけを使っていたところに連絡船での移動も取り入れるなど、ドライバーの実働時間をできる限り短縮するような工夫も行っています」(中所長)
このように拘束時間を守れる仕組みを作ることは、ドライバーの負担を減らすことにつながり、結果的にドライバーの維持継続や今後の確保にも有効になるそうです。
「47都道府県すべての地域にあまねく食肉を届けるには、外部のパートナー会社のちからが欠かせません。東京事業所だけでも70社、全事業所では150から200社弱のパートナー会社と協力体制を整えており、そのほとんどが冷蔵冷凍車はもちろん、低温倉庫も持っています」(中所長)。外部パートナーと連携した綿密な流通体制の整備が、私たちの食生活を支えているのです。
あらゆる人から「選ばれる」倉庫に
物流センターで働くスタッフがランチタイムに1品無料で食べられるレストラン
物流が直面する課題はドライバー不足だけではありません。近年では、物流センターで働く作業員の確保も困難になっています。棚田課長によれば「今の人たちは給料や作業内容よりも『便利な駅にどれくらい近いか』で仕事を選びます。倉庫の作業で募集をかけると、便利な駅に近い方の倉庫から埋まっていくのが現状です」。JR川崎駅から30分の日本物流センターにとって、こうした若い人たちの職場選びの変化の影響は大きいそう。そこで今取り組んでいるのが、作業員の福利厚生の強化です。「今年の春から、朝と夕方のピーク時を中心に、川崎駅との間で送迎の無料シャトルバスの運行を始めました」(棚田課長)。このほかにも昨年から、物流センターで働くスタッフにレストランのランチタイムに使えるカードを配布して、そのカードを券売機にかざせば昼食メニューが1品無料で食べられるサービスもスタート。選ばれやすい職場作りも、いまの物流業界にとっては大切な取り組みの1つになっています。
「私たちの仕事で大切なのは『選ばれる倉庫』であるということ。運送会社からでも、荷主さんからも、働く人からも『選ばれる倉庫』になるよう、これからも常に改善に向けた取り組みを進めていきます」と棚田課長。
2024年問題を契機として、輸送のプロセスにおいても物流センター内の環境面においても、ニッポンハムグループの「食肉」の現場ではさまざまな進化を遂げているのです。
では、日本ハムのもう1つの軸となる「加工品」の物流はどうでしょうか。
第3回ではニッポンハムグループの「加工品」を扱う物流センター「日本デイリーネット」と運送会社「日本ルートサービス」の現場を訪れ、実際の作業の紹介と新たな取り組みについてレポートします。

