人気商品の売れ行きを支える「加工品」の物流
「シャウエッセンⓇ」「中華名菜Ⓡ」「石窯工房Ⓡ」などカテゴリーでトップシェアのブランドや、「バニラヨーグルト」などのロングセラーも多いニッポンハムグループの加工品。そんな商品たちを安定的に、かつスピーディに提供するため、その物流では最新システムの導入が進められています。物流の要となる「日本デイリーネットの川崎市の物流センターを訪れて、どのような作業が行われ、どのような試みに取り組んでいるのか、現場を取材しました。
大きな強みとなる独自の在庫管理システム
日本デイリーネットの物流センター「川崎センター」
ニッポンハムグループの加工品の物流を担うのは、ニッポンハムグループの「日本デイリーネット」です。同社は北海道から九州まで全国に13の物流センターを展開していますが、今回はその中でも最大の拠点である「川崎センター」(神奈川県川崎市)を訪れました。東扇島の倉庫街の一角、JR川崎駅からバスでおよそ30分の場所にある巨大倉庫です。
川崎センターの敷地面積は約13,665.56m2。4階建ての倉庫棟の建物面積は11,606.65m2で、5℃~8℃以下の冷蔵保管庫が7室、-18℃以下の冷凍保管庫が2室あり、-25℃の温度まで対応可能。公称保管トン数は31,376.8トンです。冷凍冷蔵庫を持つ物流センターが商流の要となって、日本ハムの加工食品は全国各地に安全かつ安定的に提供されているのです。
日本ハムの「加工品」の物流(再掲)
まずは加工品の物流センターで行われる作業の大まかな流れを見てみましょう。
最初に行うのが、工場からやってきたシャウエッセンなどの加工品がトラックでセンターまで運ばれてそれを取り卸す「取卸し作業」。受け取った商品の品質や数量をチェックする「入荷・検品」がそれに続き、冷蔵庫や冷凍庫へ「入庫」されます。適切な温度帯の倉庫内で「保管」されたあとに受注に合わせ「出庫」されます。
出庫された商品は、倉庫内で配達先ごとにさまざまな商品を1つにまとめる「仕分け」がされ、配送前の商品の「出荷検品」、トラックへの「積み込み」が行われます。
トラックに積み込まれた商品は、スーパーや小売店などの配送センターや卸売り会社、あるいは一部は店舗へと直接運ばれていきます。
「加工品」の物流センターの作業の流れ
これらの物流センターの一連の作業に関して、日本デイリーネットには大きな強みがあるといいます。それが、2006年8月から導入された独自の在庫管理システムです。
このシステムでは、入荷時や在庫時、出荷時など倉庫業務の各プロセスに付帯する情報を、正確かつリアルタイムに一元管理するというもの。納品先の店舗や商品の賞味期限ごとに把握するきめ細かなトレーサビリティを実現し、適正な在庫量の把握と調整を行います。欠品防止や在庫過多による商品ロスの削減やリードタイムの短縮に貢献するシステムで、納品条件に応じた出荷指示が行えるため顧客の要望に合わせた柔軟なシステム運用も可能なのが特徴です。
このシステムについて「メーカー企業のグループに属する物流で、ここまで詳細な情報を一元管理するシステムを持つところは非常に少ないと思います」と日本デイリーネット 東日本事業部 川崎センターの上田泰史センター長。
日本デイリーネット 東日本事業部 川崎センターの上田泰史センター長(当時)
在庫管理システムによるトレーサビリティ
では、川崎センターの現場で実際の作業行程について見てみましょう。
予約システムでトラックの待機時間を大幅に削減
「川崎センターで扱っている加工品のアイテム数は800弱で、出荷が1日あたり3万から3万5000ケース。多い時は5万ケースにもなります」と上田センター長が説明するように、川崎センターでは膨大な量の加工品が入出荷されています。
入荷される商品は、加工品の製造工場や、ほかの物流センターからニッポンハムグループの「日本ルートサービス」、配送協力のトラックによって運ばれてやってきます。ドライバーは荷物の積み卸し専用スペース「バース」にトラックを接車し、入荷する加工品を荷台からセンター内1階の「仕分け作業場」へと卸します。
仕分け作業場の温度は6℃から7℃に設定されており、実際には8℃くらいを保っているそう。川崎センターには1から23まで番号の振られたバース(トラックが倉庫に接車して荷物の積み卸しを行うための専用スペース)がある。センター内の低温を保持するため、トラックが接車した際にバースとトラックの荷台との間に隙間ができないよう、トラックのサイズに合わせて10トン車や大型車両が接車するバースは大きく、4トン車や6トン車用のバースは小さくなっているなど、細やかな配慮がされています。
「昼間は出荷が主な時間帯なので、入荷で使うバースは1から3まで。あとは出荷用です。逆に夜間はほぼ入荷しかないので、ほとんどのバースが入荷に使われます」(上田センター長)。
取材は昼間だったため1から3以外のバースには出荷前の荷が並んでいた。夜になるとほとんどのバースが入荷用となり、工場から来た加工品の取り卸しに使用される
入荷と出荷に関しては、2024年問題への対応の一環として、2023年7月からバースの管理システム「MOVO(ムーヴォ)」が導入されています。
これはバースの管理のほか、トラックの手配に便利なオンライン求車、トラックの位置情報をリアルタイムで把握できる動態管理などの機能を持つ物流管理システム。倉庫に来たトラックの受付を行い、指定のバースに割り当てて指示を行うほか、バース全体の稼働状況の把握に加えて、入荷や出荷で来るどこのトラックがどんな車格(トン数など)で何時に到着するか、前もって予約を入れることができるように。そのためセンターの荷受け作業の効率は格段に向上したそうです。
「予約システムで到着時間を調整すれば、無駄な待機時間をなくせます。また『14時から15時にここが空いているから、新規の仕事はこのバースを使おう』というようにピンポイントに対応できます。トラックが到着してから出発するまでの情報もリアルタイムで取れるので、バースでの滞留が許される2時間の制限を超えたら、早急に原因究明と解決に取り組めます」(上田センター長)。
入荷した加工品は、1つひとつの商品及びパレットのバーコードをハンディターミナルで読み取って検品します。検品が終わった加工品は3機の「バーチ」とよばれる垂直搬送機または1機の搬送エレベーターで上階の冷凍庫へと上げられ、入庫のプロセスへと移ります。
通路を広く、取り出しやすく
冷凍庫の前の仕分け作業場では、冷凍庫への入庫前の商品を一時的に保管する場所も兼ねている。そのため、室温は6℃から7℃設定されており、実際には8℃に保たれているそうです。
冷凍庫の前の仕分け作業場
ここで入庫の検品・登録が済んだ商品は、扉で隔てられた冷凍庫の中へと運び込まれます。
冷凍庫の前の仕分け作業場
冷凍庫の中はマイナス25度設定で、常にマイナス22度から23度に維持されている。倉庫内は「ロケーション」という形で区切られ、そこに商品が整然と並べられています。
加工品の冷凍庫の内部の様子
「食肉と加工品とでは、冷凍庫の内部の様子が違っていると思います」と上田センター長。違いの理由は倉庫内での作業のタイプが異なるから。「加工品倉庫では、チルド商品が平均1.5から2日の保管日数で回っています。食肉は保管型で、加工品は流通型。入ってきたものはすぐに出るのが前提ですから、フォークリフトで頻繁に出し入れしやすいように通路を広く取り、ロケーションの棚も間隔を空けています」(上田センター長)。
フォークリフトで作業しやすいように作業スペースや通路が広めにとられている
冷凍庫に格納された商品は1品ごとに在庫管理システムに登録されます。取引先から受注のデータが来ると、川崎センターの在庫状況を見ている需給調整課から出荷指示がかかります。すると、在庫管理システムが受注情報に基づいたピッキングの帳票や仕分けラベルなどの情報を素早くセンター内の現場に伝達します。
需給調整課は営業担当社が立てた計画をもとに、製造工場への加工品の発注を調整することで、物流センターの在庫を適正に維持している。
「しかし、それでも実際の受注量が計画からズレた場合、以前なら『川崎センターは100ケース足りないから急いで追加製造を発注して』『仙台センターは100ケース余っているから発注を止めて』などと各センターが個別に生産側と調整を行っていたため非効率でした。今は全センターの在庫を包括的に見られるので『川崎センターの100ケースを仙台センターに移送しよう』というように、センター間で柔軟かつ効率的に調整しています」(上田センター長)。
冷凍食品をチルド商品へ。賞味期限を付けて出荷準備
出庫指示を受けた商品は冷凍庫から出されてバーコードなどの帳票が貼られ、「温度帯変更」のプロセスへ移行します。
店頭でチルド商品として売られる加工品のなかには、工場で製造された後にいったん-18度以下の冷凍状態で輸送・保管されるものがあります。その間は、冷凍食品と同じく3~4カ月ほど保存が可能です。
しかし、いったんそれを解凍して本来の「チルド商品」として10度以下の温度帯で扱われ始めると、その時点から冷凍状態ではなくなるため、賞味期限は商品によって異なりますが、およそ2週間前後と短くなるのです。これが「温度帯変更」です。
冷凍庫から出庫された商品は、正箱(工場から出荷された際のケース)を開けて、中の商品1つひとつに賞味期限と温度帯変更した川崎センターの住所が入ったシールを貼っていきます。
正箱の中の1つひとつの商品にチルド商品としての賞味期限と温度帯変更した場所(川崎センター)の書かれたシールを貼る
チルド商品としての賞味期限表示を貼り終えた商品は、正箱に戻し、テープでフタを閉じると同時に、新たな賞味期限を箱の横に印字する。これで温度帯変更の作業が完了し、次は出荷のプロセスへと移ります。
正箱のフタをテープで閉じ、チルド商品としての賞味期限を箱の横に印刷する機械
さまざまな納品形態に対応
ひと口に「商品を納品する」と言っても、加工品の場合、いろいろなパターンがあります。
代表的な例が、「取引先の量販チェーンやスーパーが運営しているセンターに納品」するケースと「それぞれの店舗に直接納品(店配)」するケースです。
また、取引先のセンターに納品する場合でも、「パレットにひとまとめに載せて納品(総量納品)」と「取引先のセンターから配られる店別に仕分けてカゴ車に載せた状態で納品(店別納品)」など、細かくルール付けがされているのです。
総量納品としてパレットに積まれた商品をハンディターミナルでチェック
店別納品の場合、パレットにまとめるのではなく、店舗ごとに「カゴ車」に積み分けた状態にしてトラックで運ぶ
さらに複雑なことに、店舗への直接配送と店別納品の場合は「正箱のまま納品」と「小分けして納品」に分かれます。
工場から川崎センターに出荷された正箱には、10個あるいは12個など、ある程度まとまった数の商品が入っている。しかし、店によっては「6個でいい」「5個しかいらない」「1個だけほしい」など、少ない数での納品が求められるケースが多いのだとか。
そこで、店ごとの受注データに従って、正箱から必要な数だけの商品を取り出してそれぞれに応じた箱に詰め替える「小分け」と呼ばれるサービスも提供されています。
小分け作業。正箱の中身を取り出し、指示された数を新たな別の箱に分けて入れる
「パレットにひとまとめにして納品する総量納品は作業時間が短く人手もかかりません。一方で小分けのある場合は、時間も人手も一番かかってしまいます。総量納品と店別小分け納品では、仕分けの作業時間が4倍ほど違いました」(上田センター長)。しかもその作業は、商品の品質を維持するため、冷蔵温度帯の空間で行わなければなりません。非常に過酷な作業なのです。
仕分けの終わった商品は、総量納品はパレット、店別・店配商品はカゴ車に積んで、指定されたバースの前に置かれ、ドライバーによってトラックの荷台に積み込まれます。
小分け作業。正箱の中身を取り出し、指示された数を新たな別の箱に分けて入れる
「午後1時、2時くらいから出荷が忙しくなり始めて、センター引き取りピークは17時から18時です」(上田センター長)
こうして加工品の商品が出荷され、川崎センターでの一連の作業が終了します。
では、次に出荷された商品がどのようにして納品先まで運ばれるのか、日本デイリーネットが配送業務を委託するグループ企業「日本ルートサービス」の配送業務を見てみましょう。
配送情報をリアルタイムでセンターと共有
日本ルートサービスは、日本デイリーネットの物流センターに併設された3つの事業所(中京、茨城、川崎)と、そのほかの7つの事業所(千葉、厚木、京阪、神戸、大阪、伊勢崎、大宮)、合わせて10の営業拠点を活用して、全国のスーパーや量販店のセンターへの配送と小売販売店への多頻度小口配送を行なっている。
日本ルートサービス 南関東物流部 川崎事業所の桑島英和所長
日本ルートサービスは、保有車両が約160台、そのうち川崎センターに併設された川崎事業所はトラック23台(2025年10月現在)を保有しています。
「積み込みと移動、引き取りや荷下ろしをして帰ってくるのが通常の配送のサイクルです」と日本ルートサービス 南関東物流部 川崎事業所の桑島英和所長。
「川崎センターでの積み込みに30分~60分ほどかかります。配送の片道所要時間は配送先や引き取り先の場所にもよりますが遠方では120分以上かかる場合もあります。納品先での指示にしたがい荷物を分ける『種まき』と呼ばれる作業があった場合には荷下ろしが2時間ほどかかる場合もあります。川崎センターに戻ってくる時間も合わせると、1つの配送にかかるのは計7.0時間かかる場合もあります。弊社ではドライバーの拘束時間は1日9時間としていますから、1人あたり配送は2回行えるかどうかという計算になります。効率の良い配送を行うため、合い積みや帰り便の活用など行うことが求められます。」(桑島所長)。
ただ、センターで待機時間などが発生する場合もあり、運行計画にズレが生じ予定される配送ができなくなる時があります。そのために重要になるのが、配送管理システムを整備して倉庫や取引先との連携する「予約管理システム」で弊社でも積極的に活用しています(桑島所長)。
配送管理システムによる業務の進歩は待機時間の削減だけでありません。「この車がどこを走っているのか、今何度の温度帯で商品を積んでいるのか、荷台の庫内の温度は適正かなどが、ドライバーはもちろん事業所でもリアルタイムでチェックできます。配送を終えて事業所に戻ると運転日報が自動で作成されて、配送中の庫内の温度推移の折れ線グラフや走行時間、車両状況まで出て、商品の品質チェックができるようになっています」。
運転席に装着したデジタルタコメーターで個々のトラックの出庫時間や休憩時間、走行時間などのデータを記録管理しています。
物流の未来を拓く共同配送
日本デイリーネットの配送管理システムの導入は、ドライバーの待機時間の削減など2024年問題への対応につながっただけでなく、新たなビジネスの可能性も広げました。「管理する企業にもその取引先にもメリットの大きい配送管理システムを強みとして、日本ハム以外の会社のチルド商品を川崎センターの冷凍庫で預かる仕事が伸びています」と上田センター長。
さらに配送先が同じ同業他社の商品を日本ハムの商品と一緒にトラックに載せて配送する『共同配送』も着実に増えているそう。「今まで2社がそれぞれ別のトラックで」1台1万5000円、計3万円の運賃で配送していたとすると、2社共同で1台で運ぶと運賃は折半で1社1万5000円ですみます。納品先も荷受け作業を2回から1回に減らせるので、共同配送は送り手と受け手の双方にメリットがあります」(上田センター長)。
共同配送のイメージ図
新たな取り組みは他社との共同配送だけではありません。同じグループの物流とはいえ、10度以下で扱われるチルド商品である加工品と、マイナス18度以下で輸送・保管・配送される食肉とでは維持すべき温度帯が異なるため、互いに接点がありませんでした。
しかし、昨今の「ドライバー不足」の問題を解決するために、ニッポンハムグループでは納品先が同じ冷凍商品の食肉とチルド商品の加工品を1台のトラックに載せて店舗まで運ぶ配送も積極的に進めています。「冷凍の温度帯のトラックでも冷気の当たらない場所にチルド商品を積み込んだり、商品が凍らない短時間の配送ルートのトラックを共有するなど、細かい工夫を積み重ねながら、配送トラックの共有化を積極的に進めています」(上田センター長)。
今回の3回に及ぶ連載記事で紹介したように、ニッポンハムグループの物流は、最新システムの導入や協力強化、他社との共同配送など、さまざまな取り組みを通じて2024年問題への対応を進めています。その根底にあるのは、安全で良質なたんぱく質を日本全国に安定的に提供したいという思いと、物流の現場を支える人々の労働環境を改善したいという切実な思いです。ニッポンハムグループは、これからも生産・加工・流通の全てのプロセスで責任を持ち、日本の食を支え続けていきます。

