最近よく名前を聞くイミダゾールジペプチドって、何?
高い抗疲労効果が実証された食品成分「イミダゾールジペプチド」。抗酸化・緩衝・抗糖化の3つの作用を持つこの成分の基礎知識と注目の理由を、日本ハム 中央研究所の研究員が解説します。
【お話を聞いた人】
日本ハム株式会社 中央研究所 佐藤三佳子(さとう·みかこ)研究員/日本ハム株式会社中央研究所所属。同研究所は機能性素材や食物アレルギー、食肉の健康機能などを探究するニッポンハムグループの中核研究機関。1991年入社。2006年、イミダゾールジペプチドに関する研究で博士(学術)取得。同素材の新たな価値創出に取り組む。
「なんだか疲れが取れない」、「最近、体力が落ちた気がする…」、こう感じている方はいませんか?
実は日本人の約6割が日常生活の中で疲労を感じており、そのうち3分の1以上の人が、半年以上継続する慢性的な疲労に悩まされているという調査結果もあります*1。疲労は単なる不快感にとどまらず、仕事のパフォーマンスや日常生活の質を大きく左右します。高齢者にとっては筋力低下や認知機能低下のきっかけにもなりかねない深刻な問題です。
そうしたなかで今、科学的なエビデンスとともに注目を集めている食品成分が「イミダゾールジペプチド」です。疲労感の軽減、運動パフォーマンスの向上、さらには記憶力の維持まで——幅広い健康効果が研究で示されているこの成分の魅力を、全3回のシリーズでお届けします。本シリーズでは、日本ハム株式会社中央研究所の研究員に詳しくお話を伺いました。第1回となる本記事では、イミダゾールジペプチドの基礎知識と、なぜ今これほど注目されているのかを解説します。
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日本ハム 中央研究所・佐藤研究員に聞く、イミダゾールジペプチドの力② 仕事や勉強。日々の生活の質を上げるイミダゾールジペプチドの話
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日本ハム 中央研究所・佐藤研究員に聞く、イミダゾールジペプチドの力③ スポーツにイミダゾールジペプチドはどう働く?
筋肉と脳を守ると言われるイミダゾールジペプチド
イミダゾールジペプチドとは、「カルノシン」や「アンセリン」といったジペプチド(アミノ酸が2つつながったもの)の総称で、略して「イミダ」とも呼ばれます(以下、本記事ではイミダゾールジペプチドをイミダと称します)。「もともと人間の体内に存在しており、特に骨格筋と脳に高い濃度で含まれている成分です。筋肉と脳はいずれも活発に働く組織。イミダはそれらを守る働きを持つと考えられています。人間の体内に含まれるイミダの中でも主なものが「カルノシン」で、βアラニンとヒスチジンという2つのアミノ酸がつながってできたペプチドです」(佐藤研究員)。イミダは、日常的に摂取する食品のなかでは特に鶏むね肉に多く、カツオやマグロなどの魚肉にも含有されています*2。
「産官学プロジェクト」で顕著な抗疲労効果
イミダが大きな注目を集めるきっかけとなったのが、2003年から実施された「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」です。これは7つの大学と18の企業が参画した産官学連携による大規模な研究プロジェクトで、23種類の食品成分について、統一された方法で抗疲労効果が検証されました。背景には、日本人の多くが疲労に悩んでいるにもかかわらず、科学的に裏付けのある疲労対策食品がほとんど存在しなかったという問題意識がありました。
このプロジェクトにおいて、コエンザイムQ10やクエン酸、フルスルチアミンなど多くの候補成分の中で、最も顕著な抗疲労効果を示したのがイミダゾールジペプチドでした*3。この報告をきっかけにイミダゾールジペプチドに注目が集まり、疲労軽減のみならず、筋力維持、認知機能維持、スポーツパフォーマンス向上などの研究が加速したのです。
サビない、疲れない、コゲない。3つの効果
イミダがなぜ多彩な健康効果を発揮するのか。日本ハム 中央研究所で長年に渡りイミダの研究を続けてきた佐藤研究員は大きく3つの作用を挙げます。
「1つ目は『抗酸化作用』です。私たちの体はエネルギーを作り出す過程で、どうしても活性酸素を発生させてしまいます。活性酸素は細胞を酸化(いわゆる『サビつき』)させ、機能低下を引き起こします。イミダはこの活性酸素の働きを抑え、細胞を守ります。
2つ目は『緩衝作用』です。激しい運動をすると、乳酸由来の水素イオンが増えて筋肉が酸性に傾き、筋疲労が起こりやすくなります。イミダは酸性に傾いたpHを元に戻す働き(緩衝作用)を発揮し、筋疲労を遅延させます。
3つ目は『抗糖化作用』です。体内のたんぱく質が糖と結びついて劣化する反応(いわゆる『コゲつき』)を抑える作用があり、細胞の機能維持に寄与します。糖化は肌の老化や血管の劣化にも関わるとされており、美容や生活習慣病予防の観点からも注目されている作用です」。
さらに近年の研究では、イミダが脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生を促進する*4ことも明らかになっており、脳の健康維持にも関わることが示唆されています。このように、イミダは筋肉と脳という人間にとって最も重要な2つの組織を多角的に守る、ユニークな食品成分なのです。
日本ハム 中央研究所では、鶏肉から抽出したイミダを使い、これまでに国立スポーツ科学センター(JISS)や筑波大学、埼玉県立大学、東京大学、九州大学、国立精神・神経医療研究センター、国立長寿医療研究センターなど、多くの国の研究機関や大学と連携して研究を行ってきました。イミダの作用メカニズムの解明から、アスリートの運動能力測定、中高齢者の疲労・運動能力測定、さらには認知機能との関連まで、幅広い研究が積み重ねられています。
仕事や勉強、老化防止、スポーツ。イミダが効く3つのフィールド
これらの多彩な作用によって、イミダはさまざまな立場の人に恩恵をもたらす可能性があります。本シリーズでは、この後の2本の記事で、それぞれの立場に合わせてイミダの効果を詳しく紹介していきます。
第2回では、日々の仕事や勉強で疲労感を感じている一般の方に向けて、抗疲労効果のエビデンスと活用法を解説します。日常作業の疲労から、運動時の疲労まで、幅広い研究成果をお伝えします。第3回では、アマチュアからプロまですべてのスポーツパーソンに向けて、筋疲労軽減とパフォーマンス向上の研究成果を、具体的な摂取タイミングのアドバイスとともにお届けします。
鶏胸肉スープや魚でイミダを摂取する
なおイミダを日常的に摂取するには、まず鶏むね肉を積極的に食べることがおすすめです。鶏むね肉は高たんぱく・低脂肪で、健康的な食材として優れているうえに、イミダを豊富に含んでいます。イミダは煮込むとスープに溶け出すため、チキンスープは非常に理にかなった食べ方と言えるでしょう。
鶏むね肉や豚ロース肉に多いイミダゾールジペプチド
日本ハム中央研究所調べ
また、豚肉にもイミダは含まれていますので、飽きないようにさまざまな食材を組み合わせて食べるのが理想的です。実際に、東南アジアや中国ではチキンスープが滋養強壮食品として古くから愛用されており、アメリカでは風邪を引いたときにチキンスープを飲む習慣がありますが、これらはイミダの活用として非常に理にかなっていると言えます。食事だけでは十分なイミダを摂取しにくい場合は、サプリメントで補うことも一つの方法です。基本的に健康な人であればイミダを摂り過ぎて問題になることはありません。
次回からは、あなたに合ったイミダの活用法を、エビデンスとともに詳しくご紹介していきます。
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