スポーツにイミダゾールジペプチドはどう働く?
1回の摂取でもパワー低下を抑制、30日間の継続で筋肉にローディング——。イミダゾールジペプチドは、スプリントから持久走、サッカーまであらゆる競技で使用されています。各種実証データとともに、摂取タイミングの最適解を研究員が解説します。
【お話を聞いた人】
日本ハム株式会社 中央研究所 佐藤三佳子(さとう·みかこ)研究員/日本ハム株式会社中央研究所所属。同研究所は機能性素材や食物アレルギー、食肉の健康機能などを探究するニッポンハムグループの中核研究機関。1991年入社。2006年、イミダゾールジペプチドに関する研究で博士(学術)取得。同素材の新たな価値創出に取り組む。
もっとパワフルに、もっと長く、もっと速く回復したい——そんなスポーツパーソンの願いを、科学的に後押しする食品成分がイミダゾールジペプチド(以下、イミダ)です。ビタミン類やプロテインなどのスポーツサプリメントとは異なり、イミダは「筋疲労の軽減」をターゲットにした成分であり、多数の研究で効果が実証されています。日本ハム 中央研究所の佐藤研究員に、その科学的根拠と活用法を伺いました。
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筋疲労と筋肉痛——最新のメカニズムを知る
運動をすると筋肉が疲れて力が出なくなり、翌日以降に筋肉痛が起きる。その原因は「乳酸の蓄積」だという説を聞いたことがあるかもしれませんが、実はこの説は現在では唯一の正解ではないことが明らかになっています。運動時の筋疲労は「これ1つが原因」というより、運動の強さや長さに応じて複数の要因が重なって起こると考えられています。たとえば激しい運動では、急激なエネルギー消費の過程で水素イオン(H⁺)が増えて筋肉の中が酸性に傾き、また無機リン酸(Pi)が増加し筋収縮を弱めることがあります。長時間の運動では、筋肉の燃料であるグリコーゲンが枯渇します。さらに運動中に発生した活性酸素が増えすぎると細胞にダメージを与え、その働きを乱します。こうした変化が重なることで、繰り返し力を発揮する能力が低下します。
これらの要因が重なり合うことで、繰り返し力を発揮する能力が低下したり、運動後に生じる筋肉痛の原因となりえるのです。イミダはこれらの複数の要因に対して、2つのメカニズムで対抗します。
イミダが筋疲労を軽減する2つの作用
1つ目は「緩衝作用」です。高強度の運動では水素イオンが多量に生成され、筋肉が酸性に傾きます。イミダは、酸性化を防ぎ、筋肉の酸・アルカリのバランスを適切に保ちます。骨格筋中にイミダが多く蓄えられているほど、この緩衝能力が高まります。
2つ目は「抗酸化作用」です。運動時に発生する活性酸素は筋肉の働きを乱し筋収縮を妨げます。さらに、筋肉痛の原因となる微小な筋の損傷とそれに続く炎症反応に活性酸素がかかわっています。イミダは抗酸化作用により、活性酸素の働きを抑えこれらのダメージを軽減します。この2つの作用が相まって、イミダは筋疲労の軽減とパフォーマンスの向上を実現すると考えられています。
1回飲むだけでも筋疲労が起きにくく
イミダの即効性を示す日本ハムの研究があります。健常男性にイミダを1回だけ摂取してもらい、30分後に5秒間の全力ペダリングを10セット実施したところ、通常はセットを重ねるごとに低下していくパワーが、イミダ摂取群では高く維持されていました*。つまり、運動直前に1回飲むだけでも、筋疲労の軽減効果が得られたのです。
30日間の継続摂取で筋肉にローディング——持久力も向上
さらに大きな効果が期待できるのが、継続摂取によるローディング(筋肉内への蓄積)です。日本ハムが独自に行った研究でイミダを30日間にわたり摂取してもらったところ、骨格筋中のイミダ濃度が増加しました。この時、30秒間全力で自転車をこぐ、という短時間の高強度運動を実施したところ、イミダ濃度の増加率と運動パフォーマンス向上率には有意な正の相関が認められました*。イミダが筋肉に多く蓄えられるほど疲労が低減し、その結果、発揮できるパワーが向上したと考えられます。
持久的な運動でも効果は確認されています。30日間の摂取後に自転車エルゴメーターで負荷を段階的に上げていく試験を行ったところ、疲労困憊に至るまでの時間が延長しました。また、持久的運動能力の意表とされる最大酸素摂取量(VO2 Peak)が向上しました*。プラセボ群ではこのような効果は認められませんでした。
プロサッカー選手でも実証されたパフォーマンス向上
イミダの効果は一般人だけでなく、トップアスリートでも確認されています。日本ハムがパートナーカンパニーを務めるJリーグ・セレッソ大阪に所属するプロサッカー選手13名を対象に、イミダを14日間摂取してもらった研究では、全力ペダリングテストにおけるパワーが増加し、運動パフォーマンスの向上が認められました*。プラセボ群では変化がなかったことから、イミダの摂取による効果であることが確認されています。また、大学のバスケットボール選手を対象とした研究でも、疲労感や運動能力の改善が報告されています。
現場のアスリートからの声も届いています。マラソンランナーからは「イミダを摂取すると後半35kmで足の運びが違ってくる」という体験談が寄せられ、登山愛好家からも好評を得ています。これは持久力向上の効果に加え、抗酸化作用による筋肉痛予防も効いていると考えられます。トップアスリートの間ではすでにサプリメントの愛用者もいるとのことです。
筋肉痛が軽くなる
運動後の筋肉痛に悩まされた経験は、スポーツをする人なら誰でもあるでしょう。スクワット運動の前後にイミダを含むドリンクを摂取(運動30分前、直後、翌日より4日間)した研究では、プラセボを飲んだときと比べて筋肉痛が有意に軽くなったことが報告されています*。これはイミダの抗酸化作用が運動時に発生する活性酸素を抑え、筋の炎症を軽減したことによると考えられます。
翌日以降の練習や試合に向けて速やかにリカバリーしたいスポーツパーソンにとって、筋肉痛の軽減は大きなメリットです。特に、試合が連続するシーズン中や、合宿などでトレーニング量が増える時期には、回復を早めるイミダの摂取が効果的ではないでしょうか。
どんなスポーツにも活用可能
イミダは特定のスポーツに限らず、あらゆるスポーツパーソンにおすすめです。研究員によると、骨格筋中のイミダ濃度はトレーニングや加齢によって変化し、比較的個人差が大きいとのこと。短時間の高強度運動をする人(スプリンター、ボート漕ぎなど)の筋肉中イミダ濃度は、持久的運動をする人や運動をしていない人よりも高いという研究報告もあります*。
緩衝作用による筋肉のpH維持は、筋の酸性化が起こりやすい無酸素性運動で特に効果を発揮します。一方、マラソンのような持久性運動でもラストスパートは無酸素的になるため、イミダの恩恵を受けられます。サッカーやテニスのように運動と停止を繰り返す間欠的スポーツにも効果的です。つまり、プロアスリートはもちろん、週末にジョギングやフットサルを楽しむ方、ジムで筋トレをする方、登山やハイキングが趣味の方まで、すべてのスポーツパーソンにとってイミダは頼もしい味方になり得ます。
スポーツ選手のためのイミダの摂り方
最も効果的な方法は、日常的に筋肉内にイミダを蓄積(ローディング)しておくことです。日頃の食事でイミダを多く含む食材を摂取するほか、運動30分前にサプリメントやドリンクなどで追加摂取すると、即効的な効果も期待できます。研究で示されているように、1回の摂取でも効果はありますが、30日間の継続摂取でより大きな効果が得られるため、日頃からの摂取習慣が重要です。
また、運動後の筋肉痛軽減のためにも、運動前後のイミダ摂取が有効です。タイミングに合わせてサプリメントやドリンクを活用するのも賢い方法です。
佐藤研究員からのメッセージ
「イミダの研究は『食肉中の健康成分を見つけたい』という想いから始まりました。多くのエビデンスが蓄積され、トップアスリートにもサプリメントの愛用者がいます。しかし一番の理想は、一般の方が疲れを気にせずスポーツを楽しめるということです。これからもその理想を追求して研究に取り組んでいきます」
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