CHALLENGE

EPISODE. 02

挑戦エピソード02〈商品開発〉

3大ブランド『中華名菜』の
復活を果たすため、

シェフの作り方を再現した
リニューアルに挑戦

日本ハムの3大ブランドである『中華名菜』は、発売から30年以上愛され続ける人気シリーズだが、近年は売り上げが停滞。特に人気上位の『中華名菜 酢豚』は消費者から厳しい意見があり、品質改善は喫緊の課題であった。そこで2023年12月に、人気ブランドの復活を果たすため、工程改善プロジェクトが発足。商品開発のリーダーとしてM.A.は製造部などの関連部署と共に工程を全面的に見直し、“シェフの作り方の再現”をテーマに肉の美味しさを追求していった。

このエピソードの挑戦者

プロフィール画像

M.A.

加工事業本部 商品統轄事業部
諫早プラント 商品開発課

2021年に入社後、諫早プラント 商品開発課へ配属。2年目から商品開発として新商品や既存商品のリニューアルに取り組み、4年目からは『中華名菜』の工場開発リーダーとなり、レシピから商品規格の考案、量産化まで一貫して携わる。

PROJECT IMAGE

PJ.01

工程改善
プロジェクトスタート

2023年12月、売上げが停滞している『中華名菜 酢豚』の復活を目指してプロジェクトが発足。“中華シェフのつくり方を極限まで再現する”をテーマに豚唐揚げの美味しさを実現するために試作と試食を繰り返す。

PJ.02

製造現場での
テスト実施

役員会の試食会で承認を得たのち、2024年3月から工場で量産テストを実施。製造工程を大幅に削減する大胆な見直しにより品質はクリアしたものの、その影響で機械トラブルが発生し、その対策に追われる。

PJ.03

リニューアル商品の
発売開始

2024年9月から品質を改良した『中華名菜 酢豚』の販売を開始。翌年3月には、『中華名菜』シリーズの大幅リニューアルを展開。お客様から「美味しくなった」という声が寄せられ、売上げも好調に伸ばしている。

[ EPISODE.01 ]

売上げが停滞する
『中華名菜』は、
酢豚の肉の品質が
長年の課題に

『中華名菜』は、『シャウエッセン』『チルドピザ』に並ぶ日本ハムの3大ブランド。野菜と卵を加えるだけで、美味しい“家中華”を手軽に楽しめるチルド商品は、1994年の発売以来、人気シリーズとして親しまれてきた。しかし、近年では売上げが停滞。特にシリーズの中でも人気上位を誇る『中華名菜酢豚』は、お客様から「お肉の食感がよくない」といった品質に関する厳しい意見が度々寄せられていた。その現状に危機感を感じ、毎年、商品担当者が改良を続けてきたが決定打は見つからず、誰もが納得できる結果には至っていなかったのである。

そこで日本ハムでは、2023年12月には国内唯一の本体工場である諫早プラントにおいて『中華名菜 酢豚』の「工程改善プロジェクト」が発足され、酢豚の品質改善が認められたことで、2025年3月の大幅リニューアルにつながった。

同シリーズの担当者であった入社3年目のM.A.が商品開発リーダーとなり、製造課や品質保証課、技術管理課などの関連部署のメンバーと共にプロジェクトを推進することになった。

「中華名菜の復活を果たすためには、何かを大きく変えなければいけない。本格的な中華を実現するために妥協せずにプロジェクトを成功させ、次世代に繋げていきたい」とM.A.は熱い想いを胸に、大きな挑戦に立ち向かう決意を新たにした。

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[ EPISODE.02 ]

製造工程を
大胆に減らすことで、
肉の味わいと
食感が格段に向上

このプロジェクトでこだわったのは、『中華名菜』のコンセプトである“シェフの味を家庭に”に立ち返り、中華シェフの作り方を極限まで再現することだ。特にお客様から厳しい意見が寄せられていた肉の品質向上を目指し、酢豚のメイン具材である豚唐揚げの改良を中心に行った。
「豚唐揚げは原料肉を包丁でカットし、特製たれに漬け込み、衣をつけてフライにします。小ロットの試作では、それぞれの工程と条件をイチから見直し、一番美味しくて食感の良い豚唐揚げを作る方法を模索しました。」
特に重視したのは、肉本来の繊維感を残すこと。その食感や噛み応えが食べたときの満足感を高めるからだ。工程数を減らし、食材へのダメージを与えなければ、確実に美味しくなることは、理論の上ではわかっていた。しかし、実現するには機械の適性、製造計画、他の製品との兼ね合いなど様々な制約が出てくる。上司、工場次長、工場長から工程面でのアドバイスをもらい、M.A.は研修で学んだIE手法(※)などを活用しながら、机上で工数削減や工程の組み替えを考えた。工場の試食会の中で話し合い、大胆な工程削減案で改善を進めることで決定した。
実現可能か心配したが、「まずは、いろんなことに挑戦しよう」と賛同を得て、2024年3月から製造現場で量産テストを開始した。製造課や品質保証課、技術管理課などの関連部署のメンバーを巻き込み、試作と試食を繰り返した結果、格段に豚唐揚げの品質は向上。5月には役員向け試食会を実施し、出荷の了承を得ることができた。
「まだまだ課題はたくさんありましたが、理想の商品がカタチになり、目指すゴールが見えたことで全員のスイッチが入りました。」
工場には安堵と達成感が漂い、チームのメンバーたちはモチベーションを高めながら着実にステップを踏んでいった。

※IE(Industrial
Engineering)手法:作業や工程を科学的に分析し、業務効率を図る手法

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[ EPISODE.03 ]

機械トラブルが発生!
最後まで時間と闘いながら
課題を乗り越える

品質の課題はほぼクリアできたものの、その後も数々の課題に直面した。
「仮説を立てて、テスト検証を繰り返す中で、望んでいる結果にならないことが何度もありました。食感が良くなっても工程が大幅に変わり、現場のテストの中では、1つ課題をクリアしても新たな課題が1つ増える、まさに“いたちごっこ”の状態。ゴールにたどり着くまでには、数えきれないほど試食と試作を繰り返しました。」
そんなときに大きなトラブルが発生した。工程を減らした結果、機械に負荷がかかってしまい、生産を停止する事態に陥ったのだ。発売日が刻々と迫るなか、M.A.の頭に中には、「間に合わないかもしれない」という不安がよぎった。しかし、製造メンバーが次のテストまでに機械を修理し、上司や周りの仲間からも的確なアドバイスを受け、最後の難関を見事にクリア。その後は歩留まり改善のためにギリギリまで検討を重ね、8月末の初回生産・出荷に間に合わせることができた。M.A.はその場に立ち会い、リニューアルされた新パッケージの製品が工場から全国のお客様先へと輸送される様子を笑顔で見守った。
「みなさんの支えはもちろんのこと、品質と利益のすべての面において妥協せず、自分自身にやりきる覚悟があったからこそ、乗り越えることができました。」

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[ EPISODE.04 ]

多くのお客様から
「美味しい」と
認められる品質を達成できた

2024年9月に豚唐揚げの食感を改善させた『中華名菜 酢豚』が発売。そして翌年3月には『中華名菜』シリーズの大幅リニューアルを実施した。美味しさはもちろんのこと、内容量をボリュームアップさせ、テレビCMをはじめとするメディアにも大々的に広告宣伝を展開した。M.A.は時間を見つけてはスーパーなどに足を運び、店頭に並ぶ商品やお客様が手にする姿を見るたびに喜びを噛みしめた。リニューアル後は品質に関する厳しい意見はなく、お客様サービス室には「酢豚の肉が美味しい。また買いたいです」といった声が届いた。売り上げも順調に推移している。また、今回のプロジェクトでは品質の改善を目的としていたが、工程数を大幅に減らすことでコスト削減と生産性向上を実現し、会社にも大きく貢献する結果となった。しかし、M.A.の挑戦は終わりではない。
「定番商品は発売後も日々改善を進めます。食感や風味を改良する余地はあり、歩留まりの改善や食ロスの問題など、取り組みたい課題はまだたくさんあります。さらに『中華名菜』だけでなく、シェフの作り方の再現にこだわることで、他の商品でも誰もが認める品質を提供していきたいと思います。」
入社当初、諫早プラントへの配属を聞いたとき、M.A.は工場勤務にあまり良いイメージを持っていなかった。しかし、商品開発としてレシピを考えて試作をつくり、工場での量産体制の確立まで一貫して手がけられることに、今は大きなやりがいを感じている。そんな想いを胸に工場開発のリーダーとして、私たちに“食べる喜び”を提供し続けてくれるだろう。

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REFLECTING ON
CHALLENGES

挑戦をふりかえって

挑戦をふりかえって

若いうちに、このような裁量を与えられるとは思ってもみませんでした。多くの苦労はありましたが、日本ハムの代表ブランドを任せてもらえたことはとても嬉しく、大胆な改善を主導で取り組めたことは私の誇りでもあります。今回、『中華名菜』の歴代担当者の苦労と努力を目の当たりにし、改めて次世代へと繋げていく使命感と責任を感じました。これからも品質に妥協せず、常にお客様の立場で考えながら「美味しい」を提供し続けていきたいと思います。