研究・開発その他

噛み応えのある食肉加工品摂取が
高齢期の口腔機能改善に有効である可能性が明らかに

2025年12月24日
国立大学法人北海道大学
国立大学法人北海道大学病院
日本ハム株式会社

国立大学法人北海道大学 大学院歯学研究院(所在:札幌市北区、学部長:網塚 憲生/以下、北海道大学)と日本ハム株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:井川 伸久/以下、日本ハム)は、口腔機能の低下を認める高齢者35名を対象に、噛み応えのある食肉加工品(シャウエッセン、日本ハム製)を3か月間摂取する介入試験(パイロット研究)を行った結果、口腔機能の低下が改善する可能性が示唆されました。
本研究成果は、第11回アジアフレイルサルコペニア学会(The 11th Asian Conference for Frailty and Sarcopenia 高雄(台湾))にて発表されました。

【研究成果の概要】

口腔機能低下症※1は、加齢だけでなく、疾患や障害などさまざまな要因によって、口腔の機能が複合的に低下している疾患です。放置していると咀嚼障害や摂食嚥下障害など口腔の機能障害に陥ることで、食べられる食物の種類や量が減少し、たんぱく質やエネルギーなどの栄養摂取バランスを阻害することが報告されています※2、3。その結果、低栄養やフレイル、サルコペニアを進展させるなど全身の健康に影響することがわかっています。
このような不可逆的な状態に陥らないためには、継続的な口腔機能の維持・管理が重要とされています。これまで、咀嚼回数を増やす工夫をした「食事」による高齢者の口腔機能改善報告※4はあるものの、簡便な「市販食品」を用いた継続的な介入研究はありませんでした。本研究では、簡便かつ継続的に摂取可能な市販食品として、適度な咀嚼を促す噛み応えを持ち、たんぱく源でもあるソーセージを、一定期間摂取することによる口腔機能への影響を調査しました。

【対象と方法】

地域在住高齢者および北海道大学病院歯科外来患者35名に対し、1日1~2本のソーセージ(シャウエッセン:日本ハム製)を3ヶ月間摂取する介入試験(単群試験)を実施しました。介入前後で1)口腔機能低下症の診断に用いる7項目の検査(①口腔衛生状態、②口腔乾燥、③咬合力、④舌口唇運動機能、⑤舌圧、⑥咀嚼能力、⑦嚥下機能)の測定値および、2)7項目のうち機能低下に該当していた数(以下、機能低下該当数)を比較しました。

【結果】

介入を完了した31名において、1)の検査項目のうち、①口腔衛生状態、④舌口唇運動機能、⑥咀嚼機能の測定値および、2)機能低下該当数に有意な改善が認められました。本試験は比較対照のない単群の介入試験であり、今後厳密な検証が必要となりますが、噛み応えのあるソーセージを継続的に摂取することで口腔機能の改善につながる可能性が示唆されました。

【発表者より】

国立大学法人北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室 三浦 和仁先生
今回の研究は、介入を行わない方を設定していないパイロット研究のため、結果の解釈には注意が必要ですが、噛み応えのあるソーセージを継続的に摂取することで口腔機能の改善につながる可能性を示すことができました。健康長寿のためにも高齢者が口腔機能を維持改善することは重要です。今後は対照群を設定したランダム化比較試験の実施等でより信頼性の高い結果を出していきたいと考えています。

【用語解説】

・口腔機能低下 :加齢や疾患、障害などが原因で、噛む、飲み込む、話す、唾液を出すといった口腔の機能が低下した状態。

・フレイル   :健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体機能や認知機能の低下がみられる状態。適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずに済む可能性がある。

・サルコペニア :主に加齢や活動不足によって、筋量や筋機能が低下した状態。進行すると歩行困難や転倒・骨折のリスクが高まり、要介護状態につながる可能性がある。

・地域在住高齢者:自宅等で自立した生活をされている65歳以上の高齢者。

【学会発表】

第11回アジアフレイルサルコペニア学会(11th Asian Conference for Frailty and Sarcopenia)

演題  :The effects of foods that require frequent chewing on oral function: A pilot study

発表者 :Kazuhito Miura1, Kaoru Inamoto1, Kimiya Ozaki1, Takuma Okumura1, Yasushi Tamada1,
Ayaka Hori1, Miyako Abe1, Masanori Iwasaki2, Fuka Aoki3, Nori Karasawa3, Yutaka Watanabe1

所属機関:1 Gerodontology, Department of Oral Health Science, Faculty of Dental Medicine, Hokkaido University, Japan
2 Department of Preventive Dentistry, Faculty of Dental Medicine and Graduate School of Dental Medicine, Hokkaido University, Japan
3 Research & Development Center, NH Foods Ltd., Japan

【引用文献】

※1: 日本歯科医学会, 口腔機能低下症に関する基本的な考え方
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240329.pdf

※2:Inomata C, et al. Significance of occlusal force for dietary fibre and vitamin intakes in independently living 70-year-old Japanese: from SONIC Study. J Dent. 2014;42(5):556-64

※3:Motokawa K, et al. Relationship between Chewing Ability and Nutritional Status in Japanese Older Adults: A Cross-Sectional Study. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(3):1216

※4: Matsuo K, et al. Improvement of oral hypofunction by a comprehensive oral and physical exercise programme including textured lunch gatherings. J Oral Rehabil. 2021; 48: 411–421.