Project Story 04 自社の商品だけではなく、「日本の食」の安全を守りたい。 カビ毒検査キット開発プロジェクト

茨城県つくば市つくば駅から車で15分、世界有数の科学技術研究集積地に、食品業界から大きな信頼を寄せられる研究機関がある。
その名は「日本ハム中央研究所」。ニッポンハムグループの中核研究機関である。食物アレルゲンの検査分析技術の先駆者として、業界標準品として指定されている検査キットの開発・普及をリードするに留まらず、高精度な食中毒菌検査キットの開発、さらには国際的な認定を持つ検査体制や社外からの受託検査などの幅広い実績を持つ。
食品業界において、なくてはならない存在である当研究所に、研究員として原が入所して2年目。カビ毒検査キットの新規開発という、新たな挑戦を任されることになった。

危害物質を簡単に検査できるキット。

そもそも検査キットとはどんなもので、どのように使われるのか。「食物アレルゲンや食中毒菌など、食品中の危害物質を簡単に検査できるようにしたものです。例えば、食品会社が商品を出荷する際、その場ですぐに結果が知りたいときに使用されます」。

公的に国が認めたその性能。

中央研究所では、業界に先駆け1998年から食物アレルゲン検査キットの開発に取り組んできた。開発されたキットは、国が定めた基準を満たす食物アレルゲン検査キットとなっている。また食中毒菌検査キット開発が始まったのは2004年。その一つ、ベロ毒素検出キットは、国が定めた検査方法の1つとして採用されている。
公的にその性能が認められているこれら検査キットは、グループ企業はもちろん、他の食品会社、外食レストラン、公的な試験・研究機関などで広く使われている。

ところで、カビ毒とは何か。例えば、穀物などを湿った状態で放置するとカビが生えるが、このカビの代謝物がカビ毒と言われるものだ。「カビ毒の一種、アフラトキシンは、肝臓に悪影響を及ぼす食品中危害物質。一般的な知名度は低いですが、世界最強の発癌性物質とも言われています」。
アフラトキシンは熱帯や亜熱帯地域で産生されるため、輸入食品での汚染事例が多い。食料の多くを輸入に頼る日本では、これまで国内では、複数種類存在するアフラトキシンの中でもアフラトキシンB1の規制のみが行われてきた。「けれど、世界はB1、B2、G1、G2の総アフラトキシン規制に切り替わっています。日本もB1から総アフラトキシンへ規制を変えることは明らかでした」。

国内初のキット開発へ。

食のグローバル化が進む中、日本でも総アフラトキシンに対応したキットが必要となるだろう――中央研究所は国内初の総アフラトキシン検査キット開発を決める。
キット開発チームのメンバー十数名のうち、原を含む2名が、カビ毒キット開発の主担当となった。開発期間はおよそ1年半と定められた。「普通の研究者から見たら、相当短い開発期間でしょう。でも、この研究所には、たくさんのノウハウも蓄積しているし、専門の先生や他の研究機関とも太いパイプがある。だから、短期間で開発することが可能なんです」。

思っていた性能が出ない!

研究は比較的順調に進んだ。しかし、2010年10月の商品化が目前に迫った夏、問題が発生する。キットは、国の基準を満たすことを実証するための試験を経て初めて商品化される。「まさに、そのための試験でした。必要な食品検体や人員を手配して、本番前に、一応プレ試験をしてみたら――思っていた性能が出ないんです」。
大量の食品検体が必要だったため、これまで入手していた検体とは別の検体を手配していたのだ。「検体の種類によってはキットでの測定が難しい場合もあるんです。そのために、あらゆる検体に対応できるキットに仕上げていたはずなのに…」。しかし、スケジュールを延ばすわけにはいかない。「そこからおよそ2週間、死に物狂いで改良を行い、なんとか期限までに完成させました」。

デモもユーザーサポートも原の仕事。

結果として、本番の妥当性試験では、海外メーカーのキットと比較しても性能は一番というデータが出た。「日本の規制値(厚生労働省ガイドライン準拠)に沿った、国内初の国産キット。性能の高いキットを国内に安定供給し、輸入食品の安全性を確保するという点で、大きな社会貢献につながる開発になったと思います」。
しかし、原の仕事はこれで終わりではなかった。「これまで海外製品が主流だったから、メインターゲットである検査機関に、カビ毒キット=国産という認識はありません」。そのため、原は、使い方のデモや導入サポートを積極的に行った。そして、そこで出てきた要望を吸い上げ、キットを改良、性能をさらに向上させていった。

トップメーカーの研究所の使命。

このプロジェクトのように、中央研究所は、世間や社会から求められるものをテーマとし、成果が食や毎日の暮らしに貢献する研究開発を行う。やりがいは大きいが、プレッシャーも大きい。国の規制値に沿ったカビ毒検査キットが、間違いだったでは済まされない。「その重みは日々感じています」。
「また、キットをつくるだけでなく、勉強会、講演会などを通じて情報を提供する場も設けなければなりません」。「自社の商品の安全性」だけではなく、様々な活動を通じて「日本の食の安全性」を牽引していくこと。それが、トップメーカーの研究所に課せられた使命なのだ。

Profile : 日本ハム株式会社 中央研究所 研究員 2008年入社 原 里美
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