社長メッセージ
時代を画する文化を創造し、
社会に貢献するため、
持続的な事業基盤を構築する
ーManagement for NH VALUEー
代表取締役社長
社長執行役員
前田 文男
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攻めの経営とは、
唯一無二の強みを生かし切ること
2026 年 4 月、私は当社社長に就任しました。これまで加工事業、食肉事業、コーポレート部門、そして複数のグループ会社の経営に携わる中で感じたことは、当社グループには、他社が容易にまねのできない独自の強みが存在していることです。それは加工・食肉・スポーツ・エンターテイメントといった事業と調達、生産、加工、物流、販売といったバリューチェーン、そして優秀な人財の一つひとつが、価値創造につながるポテンシャルがあるということです。私は、この強みを組織の力で磨き上げ、仕組みとして強固なものにし、変化の激しい時代においても持続的な成長へ結び付けていくことこそ、社長として果たすべき役割であると考えています。
私は既に副社長時代からポートフォリオの質を高める事業基盤変革に向け、バリューチェーンの最適化に取り組んできました。単なる縮小均衡を図るための変革ではなく、バリューチェーンを俯瞰し、最適化することが、資産や機能をより高い領域に昇華し、企業の成長につながると考えたからです。
各事業や機能が個別最適で努力するのではなく、グループの資産・機能・人財を全体最適でつなぎ、ガバナンスを効かせながら、持続的に稼ぐ力へ転換していくことのできる経営を推し進めます。
社会や暮らしの変化に向き合いながら
事業領域を拡大
当社の企業理念は、「食べる喜び」を基本のテーマとして、その後に「時代を画する文化を創造し、社会に貢献する」という言葉を続けています。この理念のもと、私たちはブランドと事業基盤、そして体験価値を掛け合わせることで、事業領域を拡大してきました。
私は、この企業理念の実現に向けた当社グループの強みは、大きく三つあると考えます。
まず、加工事業はシャウエッセンを中心としたさまざまなブランドを輩出してきましたが、40年を超えてなおトップブランドとして支持され続ける商品は、一朝一夕に築けるものではなく、長い年月をかけて育まれてきた資産です。時代ごとの食の嗜好や生活様式の変化に向き合いながら、確かな品質と分かりやすい価値を積み重ねてきたことが、私たちの強固な基盤になっています。
次に、食肉事業は食の欧米化と合わせて構築したバリューチェーンです。調達、生産、加工、物流、販売までを一貫して担い、全国一律に、安定的に、高品質な商品を届ける仕組みを構築しました。強みは販売量の多さだけにあるのではなく、現場の知見と実行力を伴った総合力にあります。この継続的な取り組みが、国内販売シェア約20%につながっています。食のインフラを支える競争優位として、私たちはこれからも磨き続けます。
そして、スポーツ・エンターテイメント事業です。広告塔としての役割から、ボールパークを核に、収益を生み、ブランド価値を高める事業へと進化させてきました。地域との接点を広げ、企業としての魅力を多面的に発信できるこの事業は、当社グループの独自性を際立たせる重要な柱になっています。
この三つの強みを併せ持つ企業はほかにありません。唯一無二であるからこそ、当社グループには、さらに成長できる余地が大きいと考えています。私たちはこれからも、時代の変化を見据えながら、社会に貢献する価値を創造する使命を果たしてまいります。
2025年度の業績と
「中期経営計画2026」の進捗について
2025年度は、「中期経営計画2026」の2年目として、「構造改革」「成長戦略」「風土改革」を三位一体で推進しました。その結果、売上高は1兆4,574億円、事業利益は683億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は351億円となり、事業利益は過去最高を達成しました。ROEは6.6%、ROICは6.1%まで改善しており、収益力の向上に加え、資本効率の面でも着実に前進できた1年であったと受け止めています。
もちろん、良好な外部環境の後押しがあったことは事実です。しかし、今回の成果をそれだけで説明するのは正確ではありません。食肉事業の鶏肉を中心とした川上事業の強化や豪州事業における過去から継続して行ってきた収益構造の転換、そしてボールパーク事業の収益化など、これまで積み上げてきた内部努力が、ようやく実を結び始めたと見ています。
一方で、課題も明確です。国内加工事業は製造ラインや低収益商品の削減など改革は進みつつありますが、インフレに伴い資本コストが上昇する局面において、国内加工事業の持続性をどう判断するかが戦略的岐路にたっています。海外加工事業は成長戦略と位置付けた北米・アセアン事業の成長ストーリーが遅れています。今期は、国内加工においては、市場変化に即応できる営業体制と顧客起点の商品開発を通じて、トップラインの回復を具現化していきます。海外加工事業については、次期中計での飛躍に向け構造改革フェーズに転換し、収益貢献を実現する事業に立て直します。今後、加工事業に関しては持続的な成長を実現する組織に変革させていきます。
2026年度は、中東情勢など先行きの不確実性も織り込み、事業利益610億円を計画しています。前期比では減益見通しとなりますが、中計最終年度に向けて、これまで進めてきた改革の成果を確かな収益力へ転換し、持続的な企業価値向上へ結び付けていきます。重要なのは、利益の質と資本効率をさらに引き上げ、変化に強い企業体へ進化することです。私は、「食べる喜び」という当社グループの企業理念の先にある持続的な価値創造を実現していきます。
三位一体の改革を、
持続的成長へつなげるフェーズへ
私が最も強い危機感を抱いているのは、「成長が止まること」です。例えば、食肉事業で全国シェア約20%というポジションに安住した瞬間、企業の進化は止まります。残る80%にどう挑むのか。市場やお客様の変化をどう読み解き、自社の強みとどう結び付けていくのか。その問いを持ち続けなければ、企業は次第に鈍くなっていきます。
私は、これまで進めてきた「構造改革」「成長戦略」「風土改革」を、次の成長を取りにいくための“攻め”へと進化させていきます。構造改革は成長余地を生み出すため、現状に甘んじることなく、改革をより強固なものに、成長戦略は構想を利益成長へ結び付ける実装段階に、風土改革は挑戦が成果につながる組織文化づくりへと、一段引き上げていきます。持続的な成長を実現するにはJA全農との事業連携やCharoen Pokphand Foods(CP)社との包括的業務提携も重要な要素です。JA全農との事業連携においては、共同配送のスタートなど、徐々にではありますが、効果も表れ始めました。今後は調達基盤の強化など、川上事業においても共創効果を実現させていきます。CP社とは合弁会社であるCPF NH Foods Co., Ltdで「CP Nippon」の新たなブランドを立ち上げ、生産を開始しました。今後は加工肉製品の生産拠点として、タイ国内・日本・香港・シンガポール等、主要なアジアの国・地域に向けて高品質な商品を届けます。
また、AIやDXの活用も加速させていきます。需給予測、生産計画、業務効率化などを高度化し、変化の速い市場環境に柔軟かつ機動的に対応できる体制を整えていきます。現場の力を仕組みで底上げし、再現性のある強さへ変えていくことが重要です。DXやAIは、コスト構造の改革と競争力向上を支える現実的な手段として位置付けています。
私は、「非連続な成長」という言葉は既存の事業伸長の着実な積み重ねの上に成り立つものだと考えています。一歩一歩の背伸びを重ねることが、やがて大きな飛躍につながる。これこそが、当社グループにとって最も確かな成長の形だと考えています。
その考え方は、新領域への挑戦にも通じます。R&D戦略「Proteinnovation(プロテイノベーション)」は、まったくのゼロから夢を描く取り組みではなく、当社がすでに有する設備、素材、技術、バリューチェーンを起点としながら、新しい価値を生み出していくものです。不可食部位を活用した新素材の研究、医療・化粧品分野への展開、外部パートナーとの共創による実装など、足元の強みを未来の収益へ変えていく。この発想にこそ、当社らしい成長の道筋があると考えています。
風土改革は、言葉だけで進むものではありません。現場の挑戦や働きがい向上の取り組みをきちんと評価し、称えることも重要です。その一つが『NHG Award』であり、従業員の挑戦を組織の成果へとつなげる風土づくりを後押ししています。
「全員で挑戦しよう」を形にした
『NHG Award 2025』
『NHG Award』は、働きがいの向上と「挑戦する組織風土」づくりを通じて、業績と企業価値向上に貢献した事業所をたたえる制度です。2025年度は28事業所が表彰され、最優秀賞には豪州の『オーキービーフエキスポート』が選ばれました。「やろうと思えば、できないことはない」という前田社長のメッセージのもと、従業員の挑戦を現場の力に変え、その結果を称え、グループの成長へつなげていきます。
財務規律の徹底とポートフォリオ改革で資本効率を高める
攻めの経営を本物にするうえで、財務の規律は欠かせない土台です。全社の価値最大化、事業ポートフォリオの判断をするうえではROEやROICが重要な指標なのは当然ですが、その一方で、現場が日々の仕事の延長線上で理解し、実感を持って追うことのできる指標も必要です。そうした観点から、事業部や関係会社においては、効率性の改善を図るため、収益性・資産効率性を重視した当社グループとしての新たな指標管理を進めます。
当社は、中計を通じて企業価値創出に焦点を当て、稼ぐ力の強化と資本効率の向上を進めてきました。ROEは改善し、今後は早期に10%以上の水準に引き上げていくことを目指しています。そのためには、営業キャッシュフローを安定的に積み上げるだけでなく、重点領域に対してメリハリのある投資を行い、資本コストを意識した判断を徹底する必要があります。投資は規模で語るものではありません。事業ポートフォリオについても企業価値が上がるかどうか、その一点で見極めるべきだと考えています。日本の食を支えるたんぱく質供給という使命も企業価値の重要な要素です。当社グループの全社戦略における重要性も踏まえながら、期待した収益を生み出せていない資産や事業があるのであれば、資産の入れ替えや活用、必要に応じて非中核事業のカーブアウトも視野に入れ、ポートフォリオマネジメントをさらに具体化していきます。
アロケーションの判断も重要です。ありたい姿に向けて、成長投資に振り向けることを意識しつつ、価値創出に資することがなければ、株主還元にも責任を持って向き合っていきます。その両立は容易ではありませんが、難しいからこそ経営の真価が問われます。DOE3%の実現見込みや継続的な自己株式取得も含め、資本市場との対話を深めながら、信頼に足る道筋を示していきます。
ガバナンスを起点に、風土改革と
サステナビリティを進める
会社を変えるうえで、井川前社長のトップダウンの改革は必要不可欠でした。まず方向を定め、規律を整え、やるべきことを明確にしたからこそ、いま私たちは、その改革を全社に根付かせ、次の成長へと結び付けるフェーズに入ることができています。
改革や成長の鍵を握るのは組織の力です。これまで私は七つの事業・会社の経営に携わってきました。その中で実感したのは、現場ごとに事情が異なり、それぞれに固有の論理があるということです。だからこそ、全体最適の視点でつなぎ直すことが必要です。組織を通じて成果を生み出し、ガバナンスを効かせながら改革を実装していく。それが、私の目指す経営です。
組織で勝つ経営、その実装テーマとして人的資本とサステナビリティがあります。私は幹部に対し、常に「後継をどう育てているか」を問いかけています。特定の個人に依存する組織は、強いようでいて脆い。複数の候補者を育成し、異なる事業の知見を横断的に理解しながら、全体最適で判断できる人財を増やしていく必要があります。ある事業における成功や失敗を、別の事業の改善へとつなげられる人財こそが、次の成長を支えるからです。
また、風土改革は、標語を掲げるだけでは前に進みません。上司が部下の話に耳を傾け、目線を合わせ、一緒に会社を良くしていこうとする姿勢を示せるかどうか。そこで初めて、働きやすさを超えた働きがいが生まれます。夢を持ち、挑戦し、成長できる組織でなければ、人は本気になれません。私がグループ全体に伝えている「全員で挑戦しよう」という言葉には、そうした思いを込めています。
さらに、持続的成長を本気で目指すにあたり、アニマルウェルフェアも重要なテーマです。動物の命を預かる企業として、その福祉に真剣に向き合うこともまた不可欠です。加えて、GHG排出削減については、スコープ1・2にとどまらず、スコープ3も含めた対応が今後ますます重要になります。当社グループの垂直統合型バリューチェーンでは実現のハードルは高いですが、難しいからこそ先送りせず、経営課題として正面から向き合う必要があります。
私は、サステナビリティを単なるコスト要因ではなく、事業リスクの低減と競争力の源泉、さらには新たな価値創出の起点としてとらえています。例えば、家畜排せつ物や副産物を負の資産として処理するのではなく、収益を生む資産へ転換していく。環境配慮やアニマルウェルフェアへの取り組みを、お客様に選ばれる理由へ変えていく。そうした実例を一つひとつ積み重ねることが、社会的価値と事業価値の両立、ひいては将来の競争力強化につながると考えています。
社長一人の力だけで、会社を変えることはできません。創業者の「やろうと思えばできないことはない」という言葉は、個人のみならず、組織の総意で行動することの重要性を示しています。目標が高くても、皆で知恵を出し、役割を果たし、やり切る覚悟を持てば、必ず道は開ける。これを仕組み化してさらに強くし、事業として着実に実らせ、未来へつないでいます。
ステークホルダーの皆様には、引き続きご支援のほどお願い申し上げます。
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