ニュースリリース 2023年

~肉類を多く摂取している高齢者は、最大歩行速度が速い~
肉類摂取が高齢期のフレイル予防の栄養ケアとして
有効である可能性が明らかに

2023年4月20日
日本ハム株式会社

日本ハム株式会社(本社:大阪市北区、社長:井川 伸久)と地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター(東京都板橋区)は、お達者健診に参加した512名の地域在住高齢者を対象に肉類の摂取量とさまざまなフレイル関連指標との関わりを横断的に検討した結果、肉類を多く摂取している高齢者は最大歩行速度が速いことを確認しました。
本研究成果は、サルコペニア・フレイル研究の専門誌である日本サルコペニア・フレイル学会誌に掲載予定であり、学会ホームページにて全文が先行公開されました。

研究成果の概要

今後さらなる高齢化が見込まれるわが国において、要介護の前段階であるフレイル対策が喫緊の課題となっています。フレイル対策の食事としては、たんぱく質を不足させないことが重要ですが、たんぱく質の主要な摂取源のひとつである肉類は、年齢階級が上がるとともに摂取量が減少しやすい食品です(※1)。肉類はアミノ酸スコアが高いことや、肉類に含まれるイミダゾールジペプチドは膝伸展力・片足開眼立ちの向上に関連することが報告され(※2)、十分な肉類摂取はフレイル予防に効果的であると考えられます。しかし、これまでに地域在住高齢者における肉類摂取とフレイル関連指標についての検討は十分ではなく、本研究では肉類摂取量とフレイル関連因子との関わりを明らかにすることを目的に調査を行いました。

対象と方法

東京都健康長寿医療センター研究所で実施するお達者健診に参加した高齢者512名を分析対象としました。健診では、聞き取りによる基本情報の調査、食事調査、血清アルブミン値の測定、歩行速度、握力、身体組成の測定を行いました。肉類の摂取量(エネルギーベース)により3グループに分け、フレイルに関連する指標との検討を行いました。

結果

性別、要介護認定の割合、最大歩行速度、エネルギー摂取量、たんぱく質摂取量についてグループごとで有意な差がありました。フレイルに関わる最大歩行速度に有意差が認められたことから、他に影響する要因を取り除いて詳細な分析を行ったところ、肉類摂取量が多いほど、最大歩行速度が速いことが認められました。

発表者より

地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所
自立促進と精神保健研究チーム 研究員 本川 佳子 先生

今回の研究では、高齢期のフレイル予防の栄養ケアとして肉類が有効である可能性を示すことができました。年を重ねると肉類摂取量が減少しやすくなりますが、そうならないよう食支援を行っていくことが、重要であると考えます。今後は肉類の種類別の比較や、肉類摂取に影響する要因(口腔機能等)を含め、縦断研究や介入研究を行っていきたいと考えています。

用語解説

最大歩行速度 できるだけ速く歩いた時の速度。65歳以上の高齢者では、加齢により低下する。東京都健康長寿医療センター研究所の研究で、前期高齢者において、最大歩行速度の低下は、日常生活動作の低下を予測することが報告されている。
フレイル 健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体機能や認知機能の低下がみられる状態。適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性がある。
地域在住高齢者 自宅等の住まいに在住する65歳以上の高齢者。
横断調査 集団の一時点での状態を把握するための調査。
アミノ酸スコア ヒトの各アミノ酸必要量(アミノ酸評点パターン)に対して、食品中の各必須アミノ酸含有量の割合を計算し、最小値を示したもの。
縦断研究 集団を継続的に追跡し、変化等を把握するための調査研究。

論文情報

日本サルコペニア・フレイル学会誌(ウェブサイトにて会員向け公開済み)
論文題名:地域在住高齢者の肉類摂取量とフレイル関連因子に関する横断的検討
著者名:本川佳子1), 三上友里江1), 早川美知1), 白部麻樹1),柄澤紀2), 長谷川隆則2), 河合恒1),大渕修一1), 平野浩彦1)
所属機関:1)東京都健康長寿医療センター研究所 2)日本ハム株式会社中央研究所

引用文献

※1 厚生労働省, 令和元年国民健康・栄養調査.
令和元年国民健康・栄養調査報告はこちら

※2 佐藤三佳子, 前村公彦, 髙畑能久, 森松文毅, 佐藤雄二. 鶏肉抽出物の摂取が中高齢者の筋力に及ぼす影響. 日本食品化学工学会誌, 59, 4, 182-185, 2012.

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