ニュースリリース 2002年

輸入牛肉偽装問題に関する社内調査結果及び再発防止策等についてのご報告

2002年8月20日
日本ハム株式会社

 

関係各位

今回の日本ハムグループの不祥事につきましては、社会、消費者の皆様に食品、食肉に関する多大なご不信を招き、また取引先、関係各位に多大なご迷惑をおかけ致しましたこと、また、全容掌握について手間取りましたことを心より深くお詫び申し上げます。

 

今後は二度とこの様な同じ過ちを繰り返さないよう、グループ内に遵法意識の徹底と再発防止のシステムを構築するとともに、失われた信頼を取り戻すべくグループ従業員一同全力を尽くす所存でございますので、再建のチャンスを与えて下さいますよう宜しくお願い申し上げます。

 

前回にお約束した 1.社内調査報告、2.再発防止策、3.現在の状況及び4.責任者の処分内容についての4項目をご報告させて頂きます。

1.社内調査報告

8月9日の会見では、8月20日にフード会社の調査結果、その後日本ハム本体の調査結果を8月中にご報告させて頂くと申し上げましたが、調査のスピードをあげて、フード会社及び日本ハム本体の調査は昨日全て終了しましたので、その全容を御報告させて頂きます。

1) 調査経緯
7月30日に農水省より3ロット、1.3トンの焼却のお叱りを受けた時は管轄事業部の担当者に任せておりました。その時点では管轄事業部からは品質保持期限切れの商品の混入であり、それは実証できるとの報告を受けていました。
8月5日に食肉事業本部・庄司専務より農水省への説明が不調であることを聞き(その時点でも品質保持期限切れ商品と説明を受けていました。)、事業部に任せず、その日より本社を中心とした社内調査チームを発足させました。それ以降8月19日までの15日間で調査を致しました。
その間に当初問題となりました3ロット、1.3トンの結果については8月9日に記者会見させて頂きました。
  内容としましては、
(1) 姫路営業部において、田中営業部長が営業部職員に命じて輸入牛肉520キロを箱に詰替えをして、品名を「牛正肉」として、日本ハム(株)を通じて隔離対象物として処理しました。
(2) 徳島営業部において、森井営業部長が営業部職員とともに、輸入牛肉260キロを箱に詰替えをして、品名を「牛正肉」として、日本ハムを通じて隔離対象物として処理しました。
(3) 愛媛営業部において、伊賀上営業部長が営業部職員と共に、輸入牛肉508キロを箱に詰替えをして、品名を「ホルスチマキ」として、日本ハムを通じて隔離対象物として処理しました。
2) 調査体制
 

本社を管轄する福井専務が責任者となり、社内各部署から経験・知識 を有する4名(統轄室、経理部、情報システム室)を中心に、フード会社を担当する調査員55名、日本ハム本体を担当する調査員44名の合計103名に弁護士と会計士に助言を頂きながら行いました。

3) 調査内容
 

平成13年11月に日本ハム株式会社が牛肉在庫緊急保管事業に買上げ申請した牛肉に、輸入牛肉等対象外のものの混入の有無を調査しました。

4) 調査方法
(1) フード会社の調査について
a 伝票調査
 

129事業所のうち買上げ申請事業所71事業所の申請商品を品名別、ロット別に仕入から申請までの履歴の確認を伝票調査で行いました。

b 申請事業所による自主検査
 

仕入先からの仕入履歴確認等を各事業所で行い、品名を明確に確認できる証明書(納品書、入庫証明書等)の提出を求めました。

c 現地調査
 

営業部に調査員を派遣して、品名を明確に確認することの証明書(納品書、入庫証明書等)原票および伝票等を現地で確認すると同時に、営業部幹部へ直接事実確認を行いました。

(2) 本体(日本ハム株式会社)の調査について
a 伝票調査
 

売上伝票、受払台帳、仕入伝票、外部冷蔵庫の証明書の突合せ等の調査を行い、申請までの履歴の確認をしました。仕入伝票をもとに仕入先の証憑の確認をしました。

5) 調査結果
  買取申請総量938トンのうち内訳は
日本ハム(株)国内ビーフ部分(日本ハム本体) 789.8トン
フード会社分 148.0トン
 
(1) 本体分には対象外商品の混入及び重量ミスがないことを確認しました。
(2) フード会社分には合計3.7トンの対象外申請や重量ミスを新たに確認しました。また、混入の可能性が否定できないものが別に0.6トンありました。

(新たに確認したもの)

(フード営業部名)

(重量)

(内容)

(1)愛媛営業部

3,554キロ

オーストラリア産ポイント(牛肉部位名)の詰替え

(2)岡山営業部

30キロ

国産牛肉骨付きチマキの混入(骨部分12キロ)

(3)福井営業部

73キロ

重量ミス

4)石川営業部

52キロ

重量ミス

合計

3,709キロ

 

(可能性が否定できないもの)

(フード営業部名)

(重量)

(内容)

(5)香川営業部

10キロ

輸入牛肉の混入の可能性

(6)富士営業部

15キロ

輸入牛肉の混入の可能性

(7)姫路営業部

599キロ

国産牛肉の品質保持期限切れ申請の可能性

合計

624キロ

 

 
  以上に既にご報告しています徳島営業部を加えますと、129事業所中8事業所で不適切な申請がありました。
6) 新たに判明した事実
(1) 愛媛営業部伊賀上部長は、当時同営業部に存在した輸入牛肉の不良在庫合計3,553.6キログラムを、今回の制度により処理しようと考え、平成13年10 月29日夕刻、段ボールに詰替え、「F1」もしくは「和牛ブリスケ」と表示して、日本ハム(株)を通じて隔離対象物として処理しました。 この事実は8月15日に本人の申告を受けて、16日の現地調査、17日の事情聴取により確認されました。
(2) 岡山営業部は、制度の理解が不充分で、申請時には対象商品だと認識して、国産牛肉の骨付きチマキ(30キロ)を申請してしまいました。
(3) 福井営業部は申請者の単純な重量の計算ミス(73キロ)で、11月8日に気付きましたが修正できなかったので放置していました。
(4) 石川営業部は申請者の単純な重量の記入ミス(52キロ)で、再調査まで気付きませんでした。
(5) 香川営業部は箱に入れずに返品された輸入牛肉(10キロ)が誤って混入した可能性を否定できないことが判りました。
(6) 富士営業部は申請した商品の中で、ホルスクラシタの仕入伝票が見つからず、輸入牛肉(15キロ)を誤って出庫した可能性があることが判りました。
(7) 姫路営業部田中俊二部長は、当時 同営業部に存在した国産牛肉の返品や売れ残り品などの不良在庫合計598.6キログラムについても、今回の制度を利用して処分しようと考え、平成13年11月1日夕刻、段ボール箱に詰替え、その頃、長い付き合いのある得意先より新たに仕入れたこととして、納品伝票、請求書を作成させて、体裁を整え、日本ハム㈱を通じて隔離対象物として処理いたしました。この商品の品質保持期限の確認はできません。 この事実は、8月16日の現地調査、17日の事情聴取により判明しました。

以上が現物チェックを出来ない中で、今回の社内調査で知り得た全容であります。

なお、日本ハム・ソーセージ工業協同組合理事長大社義規は、当社代表取締役会長でありますが、本件事実関係につきましては、8月6日までは当社からも報告しておらず、また高齢と体調不良により、日本ハム・ソーセージ工業協同組合内部においても、報告、連絡は受けておりませんことをご報告させて頂きます。

2.再発防止策について
企業理念(「食べる喜び」を基本のテーマとして社会に貢献する)を土台にした遵法精神に基づいた経営による、お客様の信頼回復
各事業部の業務監査体制、経営トップに迅速に報告がいく体制の構築による、透明性のある経営の実現

これらを具体的に行っていくために、次の施策を実施します。

1) 即刻実行した施策
(1) 「日本ハムグループ行動規範」のグループ全従業員への社長指示による徹底を図りました。
職場朝礼での徹底(8月16日、17日)
ワッペンキャンペーンの実施(8月20日)
「日本ハムグループ行動規範」の周知・徹底状況の確認 (8月19日実施、フード会社へは19日、20日に確認メンバーを派遣)
(2) 日本フードの伝票を日々確認チェックする体制をとりました。(8月12日)
(3) 日本ハムグループ全従業員からの意見提出窓口を設置しました。(8月19日人事部内に設置)
2) 今後速やかに策定・実行していく施策
(1) 改革推進本部を設置
日本ハムグループの企業風土や経営体制の刷新を目的として改革推進本部を設置します。改革推進本部には担当役員を置くほか、社外の有識者などで構成される「企業倫理委員会」の助言を尊重して、運営していきます。改革推進本部には以下の組織を設けます。
監査部の設置(8月)
現状の監査室(8名体制)を監査部(16名体制)と増員して、日本ハムグループの事業や業務の監査を強化するほか、日本ハムグループの行動規範や法令遵守の周知・徹底を図ります。
 
経営改革室の設置(8月)
透明性のあるグループ経営体制を目指し、組織体制や制度の改革を推進する組織を設置します。
 
品質保証部の設置(8月)
品質保証部を設置して、全グループにわたる品質監査、チェック機能を強化します。
 
(2) 日本フードの体制刷新と再発防止策の設定
現在の1社8カンパニー体制を、4社19事業部体制に改め、それぞれの会社を管理の行き届く会社にします。 各社に管理室を設置して、監査、管理を強化します。
日本フード(株)各事業部への特別監査は8月20日より開始します。
コンピューターによる伝票処理の過程で、不規則な処理ができないように、新たなプログラムを9月5日までに導入します。
今回不祥事をおこした姫路、愛媛、徳島の3営業部につきましては閉鎖いたします。
3.現在の状況
1) 現状の販売、製造状況
  商品撤去については、加工品は500トン、加工食品は545トン、食肉500トンにのぼりました。
現在お取引を頂いているチェーンは約半分になっており、販売状況は現時点でハムソーセージで前年比60%減、加工食品で50%減、食肉で50%減です。
食肉はフード会社の牛肉の販売自粛の影響が大きい状況です。
2) 今後の見通し
  8月後半はさらに厳しくなる状況です。特に食肉はお盆前で商品の代替手当がつかないので購入を続けるという得意先様も多く、今後はさらに厳しいと予測しています。
9月以降は流動的であり予測はつきません。厳しいことが続くことは覚悟しています。
3) 再建策
(1) 現在、投資を止められるものは全て凍結しています。(例:茨城工場増設計画の中止など)
(2) また不採算事業の撤退なども今後検討していきます。
(3) 人については、総力を結集して再建する決意でございますので、着手したくありません。しかし影響が長引けば手を付けざるをえませんが、雇用は大切に扱いたいと思います。
(4) 資金繰りについては、現在、主取引金融機関との間で設定しておりますコミットメント・ライン500億円、当座貸越枠400億円について各金融機関からご了解を頂いております。
4.責任者の処分
日本ハム株式会社
1) 役員

役職名

氏名

処分

(新)

(旧)

名誉会長

代表取締役会長

大社 義規

(辞任)9月1日付を予定

最高顧問

代表取締役副会長

鈴木 茂雄

(同上)同上

取締役相談役

代表取締役副会長

大社 照史

(降格)同上

専務取締役

代表取締役社長

大社 啓二

(同上)8月末日までに実施

 

代表取締役副社長

東 平八郎

引責辞任8月20日付

 

専務取締役

庄司 元昭

日本フード株式会社
1) 役員(8月20日付)

引責辞任前の役職

氏名

処分

代表取締役社長

東 平八郎

引責辞任

代表取締役専務 関西カンパニー

大東 博

同上

代表取締役常務 中四国カンパニー

辻 芳文

同上

2) 社員(8月21日付)

役職

氏名

処分

関西カンパニー姫路営業部長

田中 俊二

懲戒解雇

中四国カンパニー徳島営業部長

森井 清二

同上

中四国カンパニー愛媛営業部長

伊賀上 善信

同上

  その他上記2カンパニーの関連職員10名は降格、けん責等の処分をします。
5.最後に

牛肉在庫緊急保管対策事業に当社が申請しました938トンの焼却につきましては、農水省の要請を厳粛に受け止め、全箱検査が終了次第、当社負担にて処分、焼却させて頂きます。

 

最後になりますが、今回の件の原因は、一部の現場責任者が業績悪化を回避する為に起こし、報告を受けた幹部が、発覚した場合のその影響の大きさを恐れ、対応を誤ったことですが、その根本には、グループ内に売上や収益の追求が強すぎたことによる遵法意識の希薄化と事業部制の分権化による他部門や社外への閉鎖体質にあったと深く反省しております。この企業風土を抜本的に改革すべく経営監視体制や監査体制などを徹底的に見直し、第二の創業の気持ちで出直したいと思っております。

 

現在、非常に厳しい環境におかれておりますが、今回の件で頂きました社会からの御不信やご批判の声や農林水産省からの御要請を真摯に受け止め、一つ一つを経営の再生に生かしていきたいと思います。日本ハムグループは食を通して社会に貢献するしかお詫びの方法は見当たりません。日本ハムグループ2万7千名全員が気持ちを新たに取り組みます。是非とも、再建のチャンスを頂き、日常の企業活動で信頼回復を図らせて頂きますことを切にお願い申し上げます。

以上

※ニュースリリース掲載時点の情報となります。今後、変更となる場合もありますのでご了承ください。