たんぱく質と〇〇

たんぱく質といえば、“筋肉もりもり”のアスリートに必要な栄養素…というのは、大きな誤解!筋肉はスポーツだけでなく、立ったり歩いたり、日常動作の基盤にもなっているため、たんぱく質は性別、年齢を問わず、誰にとっても必要な栄養素なんです。また、たんぱく質は脳に良い影響をもたらしてくれる栄養素でもあるので、実は肉体派だけでなく、頭脳派にも必要不可欠です。では、たんぱく質が運動や脳とどんな関係性があるんでしょうか?

たんぱく質 × フレイル予防

加齢とともに衰える筋肉。どうすればいいの?

わたしたち人間の筋肉量は20歳代でピークを迎え、その後、年齢とともに減少していきます。加齢により筋肉が衰えていくことで、免疫力が低下し、肺炎や感染症、糖尿病などさまざまな病気のリスクが高まるだけでなく、QOL(Quality Of Life:生活の質)にも悪影響を及ぼします。

全身には大小さまざまな筋肉が数多く張り巡らされており、そのうち立ったり歩いたり、姿勢を維持するなど、日常動作に影響の深い筋肉ほど、こうした加齢の影響で衰えやすい筋肉なのです。筋肉は急には増やせません。若い世代から高齢期まで、筋肉量を増やし、守るしっかりと鍛えることは、今問題となっている「フレイル」の予防ともつながっているのです。
では、筋肉の維持・増加にはどうしたらいいのでしょうか?その答えが、「適度な運動」と「たんぱく質の摂取」です。

※フレイル:加齢により心身が老い衰え、さまざまな生理的能力が低下することにより、健康障害が生じやすい状態のこと

※参考:CiNii 論文(https://ci.nii.ac.jp/naid/130004485669
日本人筋肉量の加齢による特徴:部位別の特徴として、下肢は20歳代ごろより加齢に伴い著明な減少を、上肢は高齢期より緩やかな減少を、体幹部は中年期頃まで緩やかに上昇した後減少を示した。

運動だけでは逆効果に!

筋肉を増やすためには、『少しキツイ…』と感じるぐらいの運動がおすすめです。とはいえ無理は禁物。日頃、座りがちだったりあまり体を動かさない方は、少し長めに歩いたり家事や階段の昇り降りなど、生活の中で積極的に体を動かすことからはじめてみましょう。

そして、運動と同時に忘れてはいけないのが適切な食事です。エネルギー量とたんぱく質が不足すると、筋肉量は維持することも増やすこともできません。ダイエット目的で無理な食事制限をするなど、偏った食生活の中で運動だけを行なうと筋肉がむしろ低下してしまい、逆効果に…。

「適度な運動」と「たんぱく質の摂取」、この2つを組み合わせることで筋肉の増加が期待できます。どちらが欠けても筋肉は維持できません。
運動と食事のバランスがとれているかは、体重と体脂肪をはかることでおおまかに確認することができます。習慣的に体脂肪計に乗りながら、「運動」と「食事」で筋肉を守り、育てましょう。

国民健康栄養調査(令和元年度)によれば、日本人の運動習慣のある人の割合は男性で33.4%、女性で25.1%。男性では40歳代、女性では30歳代で最も低く、それぞれ18.5%、9.4%となっていますので、運動不足解消も心がけたいですね。

※出典:国民健康栄養調査(令和元年度)(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf

たんぱく質 × 脳

たんぱく質はさまざまな脳の病気予防に期待!

「令和2年(2020)人口動態統計」によると、現代日本人の死因4位(7.5%)は脳血管疾患とされています。つまり、脳の健康を保つことは、血管の健康を維持することに他なりません。

血管の健康には、たんぱく質に含まれるアミノ酸が関連しています。たとえば「リジン」というアミノ酸は、血管を丈夫にする働きをします。さらには、たんぱく質の成分はうつ病に効果が期待できるといった研究発表もあるなど、たんぱく質は脳に良い影響をもたらす栄養素として注目されているのです。

たんぱく質がとれる食材はいろいろとありますが、ここでは特に脳の活性化に良いとされる「ブレイン・フーズ」をご紹介します。

脳がよろこぶ「ブレイン・フーズ」

みなさんは「ブレイン・フーズ」という言葉を聞いたことはありますか?「ブレイン・フーズ」とは、脳の働きを活性化させる食べ物のこと。なかでもおすすめは大豆食品で具体的には、大豆の煮豆、豆腐、納豆、おからなどが挙げられます。どれも日々の食生活に加えやすいメニューばかりです。特に豆腐や納豆は手軽に食べられるので、一人暮らしの方や食が細い高齢者にもぴったりでしょう。

大豆製品に多く含まれている「レシチン」は、細胞膜を形成する主な成分で、脳神経や神経組織を構成します。このレシチンが不足すると、細胞膜の正常な働きを保つことができなくなったり、血管にコレステロールがたまるなど、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病につながる症状を引き起こすと言われています。
また、同じく大豆製品に含まれる「チロシン」は、俗に“集中力を高める”と言われており、睡眠不足後の覚醒改善、ストレス下での記憶、認知機能にも有効性が示唆されています。

脳を活性化させるためにも、大豆食品などの「ブレイン・フーズ」に注目です!