国内畜産業の課題解決
たんぱく質の安定生産の重要性が増す中で、日本の畜産業界は気候変動、生産人口の減少、後継者不足、家畜疫病などの課題が複雑化・多様化しています。
日本の畜産業界を持続可能にすることは、食肉事業を中心とするニッポンハムグループの社会的責任であると考え、新たな技術開発、リスク対応および人財育成などを進めていきます。

畜産業界の抱える課題
担い手不足への取り組み
スマート養豚システム「PIG LABO®」
養豚はベテラン飼育員の技術と経験に頼る作業が多く、日本の人口減少とともに畜産業の人手不足が深刻化する中で、いかに技術を継承していくかが課題となっています。
ニッポンハムグループが2029年までの実現を目指す「PIG LABO®」システムは、母豚の繁殖から仔豚の育成、出荷までの全ステージにおいて、豚の飼育作業をトータルでサポートするものです。デジタル技術を活用して現代の養豚を取り巻く課題を解決するとともに、新しい養豚のカタチの実現を目指しています。

PIG LABO® Breeding Master

日本クリーンファーム(株)来満農場
第一弾の取り組みとして、NTTデータグループと「PIG LABO® Breeding Master」を共同開発しました。熟練の技術と経験を持った飼育員の発情判断ノウハウを基にAIを開発しており、豚舎に設置した専用カメラの画像からAIが自動で豚の行動を分析し、発情しているかどうか(種付け適期)を判断します。このため、人による豚の発情確認作業を約8割削減できるようになったほか、作業者の熟練度に関わらず、発情判断の技術レベルを安定的に高く維持することが可能となります。
日本クリーンファーム(株)来満農場に、ニッポンハムグループとして初めて正式導入しており、グループ外への展開も検討しています。

豚舎のカメラが母豚の行動を記録

映像から発情特有の行動パターンをAIが解析し、母豚の発情を判定

判定結果をPC・タブレット上に表示

結果をもとに種付け作業を実施
PIG LABO® Growth Master

PIG LABO®Growth Masterの製品イメージ
第二弾として、国立大学法人宮崎大学工学部の研究グループと共同開発した「PIG LABO®Growth Master」を2024年10月よりテスト販売を開始しました。
これは、豚舎内に自由に設定できるケーブル上を3Dカメラが巡回して豚を撮影し、画像から個別の豚の体重をAIが推計し、群れの体重分布(ばらつき)と平均体重を算出する仕組みです。豚を移動させる必要がないため、体重測定作業の合理化につながるだけでなく、動物福祉の視点からも豚にストレスを与えることなく成育状況を把握することが可能です。
次世代人財に向けた講義

ニッポンハムグループは、次世代人財の育成や畜産業の振興に向けて、国立大学法人帯広畜産大学と2017年12月に包括連携協定を締結し、2018年から同大学の獣医学専攻の学生や教員向けの実地研修と大学での講義を行っています。
動物の健康管理、防疫、食品衛生の現場を体験する研修を行うことで、畜産業の将来を担う人財に対し、講義だけでは得られない学びの場を提供しています。
学生に向けたより実践的な教育プログラムの提供や、研究成果を社会で活用するための情報共有など行うことによって、次世代の人財育成、畜産業の振興、国際的に活躍できる畜産技術者の養成に貢献しています。
2018年および2019年はニッポンハムグループ各社の農場、処理ラインなどを回り、一連の仕事の流れを見学する実習プログラムを実施していましたが、2020年以降は鶏インフルエンザや豚熱蔓延に伴う防疫対策および新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、リモートでの講義を行っています。
委託農家に向けた技術サポート
日本の畜産業の技術向上や生産人口減少に対応するには、地域の小規模農家の持続可能性を追求することが不可欠と考え、日本ホワイトファーム(株)宮崎事業所では、委託農家に向けて、衛生・飼料プログラムなどの飼育から温度管理などの幅広い管理指導を行っています。
また、鶏舎の清掃業務や鶏舎修繕、雛受け入れ準備といった実業務の支援(サポート業務)も行っています。
これにより、「息子が養鶏を継いでくれる」「鶏舎の清掃・水洗・消毒作業(有料)を頼めるので、肥育作業に集中出来る」「年齢を重ねても体への負担が少なく養鶏を続けられる」などの喜びの声をいただいています。

農場の鶏舎内

鶏舎洗浄の様子

委託農家との打ち合わせ
疾病への取り組み
口蹄疫抗原検出キットの開発・販売

NHイムノディテクト® 口蹄疫
食肉の安定供給を脅かす要因のひとつに、家畜疾病の発生とまん延があり、被害を最小限に食い止めるためには、有事の際に早期の防疫体制を確立することが重要です。
日本ハム(株)中央研究所は、牛の生産現場で簡便かつ迅速に検査可能な口蹄疫抗原検出キットの開発を目的に、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 と共同で研究を行い、2019年に国内初の口蹄疫抗原検出キット「NHイムノスティック® 口蹄疫」を発売しました。
2020年度には「民間部門農林水産研究開発功績者表彰」において口蹄疫の初動防疫への貢献を評価され、「農林水産大臣賞」を受賞しました。
2023年からは、さらに改良された「NHイムノディテクト® 口蹄疫」を全国で供給しています。
なお、当キットは農林水産省が実施する「戦略的監視・診断体制整備推進委託事業」により開発されました。